成章vs蒲郡東
前半は辛抱の仕合い、6回に成章打線が爆発して蒲郡東を下す
6回に決勝の三塁打を放った成章・伊藤 耀翼君
前日は大雨で、予定していた試合がすべて中止となってしまった愛知県の地区予選大会だった。それでも、この日はうって変わって好天に恵まれた。ただ、上空では風が強く舞っており、選手たちにとってはややプレーし難いかなという感じではあった。それでも青空の下で、高校球児たちの思いがはじけた。
愛知県の東三河地区ブロック大会としては2日目。リーグ戦として行われる一次予選だが、ここでブロック1位となると県大会進出は決定。2位になると次の二次予選トーナメントで県大会出場を争うことになる。そういう意味では厳しいが、夏を見据えた場合には、こうした形で公式戦がより多く組まれることは、選手たちにとっては経験値ということでは間違いなく大きな意味があると言えよう。その東三河地区Bブロックである。
昨秋は県大会では公立校で唯一ベスト8に進出している成章。20日の初戦では時習館に快勝しての2戦目。これに対して、蒲郡東はこの日が公式戦としては初戦となった。
蒲郡東は初回、鮮やかに攻めた。先頭の鈴木 憧生君が左前打で出るとすかさず二塁盗塁。続く西田君が巧みに右前へはじき返し、鈴木憧君は好走よく先制のホームを踏んだ。成章の先発山田君は気温の低さもあってか、立ち上がり、もう一つ球のキレもなく、そこを捉えられた。さらに失策も絡んでなおも一死一二塁。しかし、ここは山田君が何とか踏ん張って1点のみで抑えた。
その裏の成章は立ち上がり、やはり寒さもあってか、やや制球に苦しむ蒲郡東の左腕鈴木雄大君に対して、連続四球とバントなどで二死二三塁としたところで5番白井君の打球は左翼頭上、風にも乗った感じではあっだが三塁打となってたちまち逆転した。
しかし、蒲郡東もしぶとく追いかける。3回に失策と四球などで二死一二塁としたところで、5番飯尾君の一打は風に押された形で中前に落ちる。これがタイムリー打となって同点。
蒲郡東の山本 洋介監督は3回でスパッと先発の鈴木雄大君を下げて、4回から、松本君をマウンドに送り込んだ。その代わり端に成章は土井君が二塁打すると、バントで進め、内野ゴロは挟殺プレーに蒲郡東のミスが出て幸運な1点を貰った。食い下がる蒲郡東はすぐに5回、西岡君と廣田君の連続左越二塁打で再度同点とする。
こうして、試合は細かい点の取り合いのまま後半戦に入っていった。
ところが、グラウンド整備後の6回、展開はがらりと変わった。表の攻撃をあっさりと3人で打ち取った成章はその裏、一気に攻め立てた。先頭の8番深溝君が内野安打で出ると、続く伊藤君は勝負強さを発揮して、右中間を破る三塁打で帰す。さらに奥村君が代わった増田君から右前打を放ち伊藤君も生還。一死後、連続四球で満塁となり、山田君の中前打と代打杉原君の左前打で3点を加えてこの回5点のビッグイニングとなった。
そして、このリードで山田君も余裕ができたという感じだった。9回には河合 邦宗監督は経験を積ませるために宮地君を送り出した。その宮地君もきっちりと投げていった。成章はエースとして昨秋のベスト8の原動力となった仁枝 瑞貴君がいるが、彼を温存出来たのも大きかったと言えよう。
前半はやや苦しんだ展開に河合監督は、「中軸が打てていないものですから、なかなか点が入っていかん。下位打線に何とか助けられとるという感じです」と苦笑していた。それでも、これで2連勝。「(昨年のベスト8でもあるし)一次ブロック予選は、何とか1位で通過していかないといけません」と目標を定めている。
強豪に食い下がっていった蒲郡東の山本洋介監督は、併殺を決めたら「伸び伸びして来たねセカンド」、ピンチになると、「内野、しっかり止めていけばいいよ」などとベンチからしきりに声をかけていた。そうした声かけで、選手たちも伸び伸びとやっていたという印象はあった。また、1番の鈴木 憧生君は三塁手としても動きがよく、センスの良さが光った。
(文=手束 仁)