啓明学園vs八王子実践
背番号20の河上と心中した啓明学園。接戦の末、八王子実践を下し都大会進出
完投勝利を挙げた河上莉央(啓明学園)
「ナイスゲーム」
啓明学園は接戦をモノにし、選手たちがベンチ裏へ引き上げると芦沢真矢監督は笑顔で戦いぶりを労った。
明大中野八王子高校グラウンドで行われた秋季東京都大会一次予選の第3試合。
啓明学園と八王子実践の代表決定戦は、前半の投手戦から後半の激しい接戦へと戦局が移る見応えのある試合となった。
啓明学園は背番号20の河上莉央、八王子実践は背番号9の柳岡希一の先発で試合は始まった。
2回に啓明学園は9番・河上自らのタイムリーで先制点を挙げるが、八王子実践の柳岡は落ち着いた投球で立ち直り、以降は得点を許さない。サイドハンドからスピンの利いたボールを投げ込み、啓明学園打線を上手くかわしていく。
対する河上も、粘り強い投球で前半は無失点投球を見せる。
力強い腕の振りから、直球にカーブ、スライダーなどのコンビネーションで八王子実践打線に的を絞らせない。試合は1対0で前半戦を終える。
だが後半に入ると、前半の投手戦が嘘のように目まぐるしくゲームが動く。
6回裏に八王子実践は、一死二塁から3番・矢口丈一郎のタイムリーで同点に追いつくと、さらに二死三塁から相手のパスボールで逆転。この試合で初めてリードを奪う。
それでも直後の7回裏、啓明学園は3番・毛利一穂のタイムリーツーベースで同点に追いつくと、8回表には一死一、三塁から8番・高見将海の内野ゴロで1点をもぎ取り、さらに相手のミスもあり2点のリードを奪うことに成功する。
粘る八王子実践も、8回に1点を返して1点まで追い上げるが、最後は河上の意地が勝った。
試合はそのまま4対3で啓明学園が勝利し、都大会への進出を決めた。
勝った啓明学園の芦沢監督は「試合前は継投を考えていましたが、あの内容では代えることはできません。6回辺りから河上と心中するつもりでした」と話し、河上の投球を手放しで賞賛した。
河上本人も「関東するつもりでペース配分しながら投げました」と話し、芦沢監督の期待に応えたことを素直に喜んだ。
これで都大会進出を決めたが、気持ちはあくまで一戦必勝だ。
芦沢監督が「まず目の前のプレーに集中します」と話せば、河上も「次はノーヒットノーランしたいです」と強気に意気込みを見せる。都大会での戦いも注目だ。
一方、敗れた八王子実践は、柳岡が粘り強い投球を続けていたが、なかなかチャンスを作ることができなかった。
河本ロバート監督は「相手は四球やエラーがなく、チャンスを作ることが出来ませんでした。後半に一度は逆転しましたが、その直後にバントのミスもあり、これでは厳しいかなと感じました」と語り唇を噛んだ。
それでも一度は逆転に成功する粘り強さは、春以降の初躍進にも期待が持てるものであった。ここから一冬越えて、どんな成長を見せるのか注目だ。
(記事=栗崎祐太朗)