鶴丸vs明桜館
「半端な野球はできない!」・鶴丸
2年生エース・堀峻太朗
5回までに3点をリードした鶴丸は6回表、2番・前田秀太朗(3年)のセンターオーバー三塁打で4点目を挙げた。
7回は果敢に足を絡めて二死二三塁とし、8番・榮川大豊(2年)がライトオーバーの2点タイムリー二塁打を放つ。打線に火が付き、8回には4番・米山広大(3年)のライトオーバー二塁打を皮切りに3連続タイムリーに犠牲フライで計4点をダメ押した。
明桜館は7回、先頭の4番・緒方駿主将(3年)がセンターオーバー二塁打を放ち、三塁まで進んだが、ピッチャーゴロの挟殺でタッチアウト。本塁が遠かった。
「3年生の想いが強く出た試合だったね」
鶴丸・福田健吾監督は感慨深げに振り返った。公式戦を戦うのは昨年10月3日の秋の県大会3回戦の枕崎戦以来、9カ月以上ぶり。良かったところも、思い通りにいかなかったことも、両面で「3年生の想い」が随所に出た試合だった。
2年生エース堀峻太朗の好投もあり、守備面では無失策で乗り切り、危ない場面はなかった。ただ攻撃面では盗塁失敗、サイン違いなど走塁面でのミスが相次ぎ、思うように得点が取れなかった。
それでも前半の「重い流れ」を断ち切ったのは2番・前田の思い切った走塁だった。
5回表、先頭打者の前田はボテボテのサードゴロだったが内野安打で出塁する。送りバントで二塁まで進むと「自分の持ち味の足を生かそうと思った」と果敢に三盗を決めた。
一死三塁、4番・米山広大(3年)の当たりはファーストゴロ。前進守備を敷いており「生還できる当たりではない」と判断して前田は一度ストップしたが、右投げのファーストが、バックホームはないとみて一塁アウトをとろうと身体を反転させかけたのを見て、再びスタートを切った。
鶴丸・3点目のシーン
「思い切ったチャレンジならアウトになってもいい!」
一か八かの判断だったが覚悟は決まっていた。間一髪のタイミングだったが、ファーストが身体をもう一度送球のため反転させた分、送球より早く生還できた。
6回には自らのバットでタイムリー三塁打を放つ。「硬さ」がとれた鶴丸打線は7、8回と集中打を浴びせ、コールド勝ちした。
「応援してくれる同級生や学校の先生方のためにも半端な野球はできない!」
前田はそんな想いで今大会に臨んでいる。甲子園はなくなり、コロナの影響で県大会が開催されるのかどうか、大きな不安や迷いを抱えながらも、多くの人が自分たちのために「集大成の場」を用意してくれたことに「感謝しないといけない」と思った。
親友のバレーボール部員は不完全燃焼のまま部活動を引退。「もっと思い切りやりたかった」と悔しがっていた親友も、真剣勝負の舞台がある自分たちを心から応援してくれている。だからこそ「自分たちが思い切って、楽しんで、野球をやり切ること」が今大会に挑む自分たちの使命だと考えている。
(文=政 純一郎)