藤枝明誠vs加藤学園
まさかの結末で、藤枝明誠がサヨナラ勝ちで初優勝
三イニングをリリーフして何とか0に抑えた藤枝明誠・大石君
昨年の秋季静岡県大会でベスト4に進出した加藤学園。しかし、準決勝で清水桜が丘に敗れて、3位決定戦でも静岡に敗退して東海大会進出はならなかった。しかし、今春の県大会は決勝進出を果たして、初の春季東海大会出場もなった。シード校として迎えた夏はオイスカに3回戦で敗退して、その悔しさをバネとして今秋のチームはスタートした。そして準決勝で静岡商を下して決勝に進出して18年ぶりの東海大会進出も決めた。チームとしては、夏も1番を背負っていた肥沼君が残った。
藤枝明誠は3年前の秋季県大会で決勝進出を果たしているが、その時以来の決勝進出となった。夏は4回戦で島田商に敗れた。この秋は、中部地区予選4位で県大会進出を果たして桐陽、浜松開誠館、沼津東を下してここまで来ている。光岡孝監督は、「浜松開誠館との試合で勝てたことで、チームは一つステップアップ出来た」と感じていた。
この試合、立ち上がりはともに先頭打者を安打で出すが、加藤学園は後続が凡退。藤枝明誠はバントで送ると増田君の内野安打で一三塁。4番村松君の内野ゴロの間に三塁走者が帰り先制。さらに二死二塁で福島君も中前適時打でこの回2点。藤枝明誠が主導する形で試合は進んだ。
加藤学園は3回に二死走者なしから1番大村君以下、佐野君、杉山君の3連打で1点差に追い上げる。しかし。藤枝明誠は4回、福島君の二塁打と小林君の三塁打に暴投という形で2点を追加した。藤枝明誠は福島君に代表されるように身体ががっしりしているという印象だ。体幹が強く、クリーンアップなどはバットスイングも鋭い。
前半は、こうして藤枝明誠がリードしていく試合となった。しかし、グラウンド整備を挟んで6回、試合の流れが一気に変わった。
加藤学園は先頭の4番植田君が中前打で出ると、連続死四球で無死満塁となる。ここで、内野ゴロ、併殺崩れの間に1点。さらに杉本君、宮崎君と下位の連続安打で加藤学園は同点に追いついた。なおも一死二三塁で、加藤学園としては一気に逆転まで行きたいところだったが、ここは小林君も踏ん張って同点止まりとした。
こうなってくると、当然のことながら次の1点が大事になってくるのだが、どちらもそこが奪えない。藤枝明誠は7回から左腕の大石君にスイッチしたのだが、いきなり3連続安打。しかし、捕手からのけん制で走者を刺したり、投直併殺で乗り越えた。こうしたことが起こると、やはり試合の流れはツキのあった藤枝明誠へ傾いていく。
延長戦もありかなと思われた9回、加藤学園は1番からの好打順で期待されたが、二死から杉山君が安打と盗塁も決めたものの次の一本は出せなかった。そしてその裏、藤枝明誠は9番宇井君が左前打で出ると、中澤君がきっちりと送り、小牟田君も内野安打で一死一三塁。ここで、藤枝明誠としてはどう仕掛けていくかというところだったのだが、カウント1―1からスクイズを試みたが、それを加藤学園バッテリーは外した。ところが、三本間に挟んで刺そうとした送球が走者に当たり、ファウルグラウンドにそれる間に生還してサヨナラとなった。まさか…の思わぬ形の結末になってしまった。
藤枝明誠の光岡監督は、「本当は、スクイズを決めてサヨナラとしなくてはいけなかったところでした。だけど、それを外されてしまいましたから、読み合いというところでは負けていました」と苦笑していた。それでも、この代のメンバーは藤枝明誠が2017年夏に初めて甲子園出場を果たしたのを見て入学してきた選手たちでもある。だから、光岡監督が言うように、「ウチがどういう野球をやるのかということをある程度知っていて、それで、ここで甲子園を目指したいという意識がある」ということもありモチベーションは高い。それだけに、この代では何とか上のステージを目指したいというのは本音でもあろう。そういう意味では、県1位での東海大会進出というのは藤枝明誠としても、また新たに歴史を刻んだということにもなる。
加藤学園は東部地区予選の3位から、県大会は島田商、常葉大菊川、静岡、静岡商と県内の強豪校や伝統校を相次いで下してここまで上がってきた。しかし、頂点に立てなかったことに対して米山学監督は、「ここまで勢いに乗ってきたと思っていたのですが、初回の攻防でそれを出し切れなかった。(中盤に一度は追いつけたけれども)やはり、初回の2失点が大きかった。肥沼も、調子としてはもう一つで、気負いもあったのかもしれない。ここで勝ちたかった」と、悔しさをにじませていた。それでも、センバツのかかる東海地区大会に向けては、「まだ4週間ありますから、もう一度課題を見直していきたい」と気持ちを引き締めていた。
(文=手束 仁)