郡山vs大阪商業大高
郡山が打撃戦を制する!大商大高の上田は復調を印象づける快投!
ホームランを放った郡山の井上竜輝
天理をコールドゲームで下し、奈良準優勝の奈良郡山と初の春季大阪大会優勝の大商大高の一戦。大商大高の先発は148キロ右腕の上田大河ではなく、背番号10の辰巳昂次郎(3年)となった。
そんな奈良郡山打線は、辰巳を攻略。1回表、一死三塁から3番土井翔太(2年)が中前適時打を放ち、1点を先制。さらに2回表、二死二、三塁から第1打席に安打を放っている2番青木 啓冴が右中間を破る適時三塁打で2点を追加する。
青木は、レベルスイングからボールを捉える左の好打者。2番打者としてはレベルが高い選手だ。
さらに3番土井は、変化球を引き付けて左中間を破る適時二塁打、4番安野 航が痛烈な中前適時打で5点目を入れる。安野も打球が鋭く、捕手としてもイニング間の送球が1.91秒のスローイングを見せる好捕手だ。
大商大高は2回裏、5番上田 真照(2年)がインコースを振り抜き、二塁打を放ち、6番油川 克弥(3年)、7番松田 直生(3年)、8番佐久間 大翔(3年)の三者連続の適時打で3点を返す。
さらに4回裏、1番山本 晴登の犠牲フライで1点差に迫ったが、5回表、奈良郡山は6番梅田 雅士の適時打、7番井上竜輝(2年)がライトへ3ラン本塁打を放つ。井上は、182センチ77キロの大型外野手で、腕っぷしが強く、外回りなスイング軌道で硬さを感じるが、それでもパワーは素晴らしい打者だ。また、腕が長いので、普通の打者ならば空振りしてしまうコースでもついていけるのが魅力だ。高校通算6本塁打目。さらに量産に期待がかかる。
さらに6回表には、3番土井が4安打目となるソロ本塁打。これで高校通算13本塁打目。
土井はスクエアスタンスであらかじめ、左足を引いた独特の構えから、タイミングを測っていく。間合いの取り方がうまく、変化球、インコースにも対応ができる。本人によると、投手の始動に合わせて、シンクロさせている。あらかじめ左足を引いているのは、タイミングをしっかり取るためだ。
これまで捕手だった土井は今春からショートへコンバート。ショートの守備を見ると、基本忠実に 守るタイプ。深い位置から、まずまず強い送球ができている。「懸命にショートの練習をしました」と語る土井。その努力の跡は、この試合の守備からも伺える。楽しみな野手だ。
大商大高は6回途中から、外野手の新町 友樹(2年)が登板。新町は、シートノックでは、ライトから高校生としてはAクラスのスローイングを見せていた選手だった。最速136キロのストレートと120キロ中盤の縦横のスライダーのキレもよく、楽しみな野手だった。
そして7回途中から上田が登板。上田は大阪大会決勝戦に右手に打球が直撃し、打撲。その間、ランニングとアイシングに努め、キャッチボールを始めたのが3日前。金曜日、土曜日は計60球の投げ込みを行って調整を行った。
投げることに不安があった上田だが、そう感じさせない投球。先頭打者を133キロのカット系のスライダーで空振り三振に打ち取ると、その後も、常時140キロから143キロのストレート、カウントを取るための130キロ前半のカット系のスライダー、空振りを奪うための120キロ後半のスライダー、130キロ前後のチェンジアップ、100キロ台のカーブを投げ分ける。キレのあるスライダーが注目される上田だが、チェンジアップもストレートに見えて減速する。
左肩を高く上げて、一気に振り下ろす独特の投球フォームで、180センチ81キロとがっしり体型。力投型に見えるが、なかなか器用な投手なのだ。
大商大高は、7回裏、松田の適時二塁打で2点を返し、9回裏、4番 宮部 七星(3年・右投げ左打ち・175センチ75キロ)がライトへ本塁打を放つ。宮部は楽しみなパワーヒッター。スクエアスクエアで歩幅を広くとって、救い上げるスイングは豪快。ライトからの強肩は、大学生クラス。強肩強打の外野手としてぜひ注目してほしい。
しかし反撃はここまで。奈良郡山が準決勝へ進出した。奈良郡山は、天理をコールドゲームで下した攻撃力を存分に発揮した。大商大高は敗れはしたものの、上田だけではなく、逸材野手揃い。それはシートノックから動きの良さ、肩の強さを実感させてくれた。
10対7という打撃戦になったが、どちらもタレント揃いの好ゲームだった。
(文・=河嶋宗一)