試合レポート

東海大相模vs東海大菅生

2019.05.23

夏につながる「TOKAI決戦」。お互いが戦力を試す!

東海大相模vs東海大菅生 | 高校野球ドットコム
石田 隼都(東海大相模)

【熱戦の模様をギャラリーでチェック!】

 今年の関東大会決勝は東海大相模vs東海大菅生の「TOKAI決戦」となった。
注目の対決だが、まだ春の関東大会で夏に直結する大会ではない。だからこそいろいろな戦力、起用法が試せる。東海大相模は1年生左腕の石田 隼都東海大菅生は2年生左腕の新倉 寛之と、どちらも下級生投手が先発となった。試合を振り返ると、夏へ向けていろいろな選手を試す雰囲気が見られ、1つの試合でできるだけ多くの選手を見出す筆者にとってはとても面白い試合内容だった。

 1回表、東海大相模の1番・鵜沼魁斗(2年)が初球を打って、先頭打者本塁打を放つ。今大会打撃好調の鵜沼。重心を下げた構えから小さなステップから打ちに行く選手で、レベルスイングでボールを捉える。間合いの取り方がうまく、速球、変化球に柔軟に対応ができる。パワーがあり、さらに俊足で、守備範囲の広さが光るセンターの守備も魅力。来年の神奈川を代表する外野手となりそうだ。鵜沼の一発で勢いに乗った東海大相模は一死一、二塁のチャンスから5番遠藤成が変化球をうまく合わせて右前適時打を放ち、さらに6番茂谷光(2年)の中犠飛で初回に3点を先制する。

 新倉はこの回で降板して、2回表から背番号10の杉浦 敦基が登板。杉浦は身長181センチの左腕で、手足の長さを生かし、角度のある投球フォームから常時125キロ~133キロの直球、120キロ前後のスライダー、100キロ台のカーブを投げ分ける技巧派。順調にいけば、来年には140キロ超えも期待できるだろう。

 東海大菅生は2回裏、一死一、三塁から、一塁走者が挟まる間に三塁走者が生還し、1点を返す。

 2回、3回と無失点に抑えていた杉浦だが、4回表、7番松本 陵雅に本塁打を打たれ、1対4と点差を広げられる。

 松本は今大会からスタメン起用が多くなった二塁手だが、なかなかパンチ力がある。力強いスイングができていて、二塁守備も軽快。背番号14だが、実力としてはさすが東海大相模のレギュラー内野手と実感させるものがあった。

 また東海大相模の石田は3回を投げて1失点の力投。右腕のグラブを高く掲げて、真っ向から振り下ろす左のオーバーハンド。縦回転で動く意識が見られ、腕の振りも力強い。左腕から繰り出す直球は常時130キロ~138キロを計測。勢いのある直球は見事で、120キロ前後のスライダーの精度も高い。

 高校1年生の左腕でコンスタントに135キロ前後をたたき出すスピード能力は別格。がっしり体型で左スリークォーター気味だった小笠原慎之助とは系統が違うが、いずれはストレートで勝負できる速球派左腕へ化けそうな可能性が感じられた。


東海大相模vs東海大菅生 | 高校野球ドットコム
藤井翔(東海大菅生)

 5回表から東海大菅生は147キロ右腕・藤井翔(2年)が登板。藤井は自慢の直球で勝負するが、東海大相模打線は藤井を攻略。一死二塁から4番山村 崇嘉が141キロのストレートを捉え、左中間を破る適時二塁打で1点を追加。さらに6回表にも、一死一塁から1番鵜沼がストレートを捉え左中間を破る適時三塁打、2番金城飛龍は縦スライダーを捉え、7点目を入れた。

 藤井はストレート自体は素晴らしく、手元のスピードガンでも140キロ以上は2イニングで、22球(143キロ 7球、142キロ 5球、140キロ 10球)を計測していた。いつでも145キロは出ていてもおかしくない迫力があり、125キロ前後の縦スライダーの切れも素晴らしく、2三振を奪っている。ボールの勢いは確かなものがあるが、東海大相模のような対応力が高い相手に対して、どう抑えるべきか。ボールの勢い自体は篠木健太郎木更津総合)より上だが、駆け引きという点で劣っている。この3失点の反省を生かして、実戦力を高めることを期待したい。

 東海大菅生は7回表から3番手・広瀬楽人(2年)が登板する。広瀬も期待の大型左腕。コンパクトなテークバックから振り下ろす速球は常時120キロ後半~133キロは出ていて、角度のある直球が魅力。120キロ前後のスライダーを交え、勝負するが、制球力に不安があり、ボール先行になることが多い。それでも粘り強く投げて無失点に抑える。完成度という点ではまだまだ。ただ公式戦で東海大相模を1回無失点に抑えた経験を今後の練習に生かすことができるか。近年の東海大相模の左腕では最もスケールが大きい左腕なので、化けることを期待したい。

 8回表、東海大菅生は4番手に新村 凪が登板。これでエース・中村晃太朗以外の投手が登板したことになる。新村もなかなかの好投手で右スリークォーターから常時120キロ後半~133キロの直球に加え、120キロ~125キロ前後のカットボール系のスライダーの切れ味もよい。東海大相模打線を危なげなく2回無失点に抑えた。見ていて中村以外では最も安心感があったので、このまま好投を続けていければ、夏には重要なポジションを任されそう。ぜひそれに向けて努力をしてほしい。


 東海大相模は6回裏、二死満塁から登板したエース・紫藤大輝(3年)が好投を見せた。

 登板直後、打席に立ったのは3番・成瀬脩人。もし打たれれば、試合の流れが東海大菅生に傾きかねない展開。紫藤は気合を入れて、最速138キロのストレートを連発して、空振り三振に打ち取る。県大会の時よりもストレートは走っており、130キロ後半の速球を常に投げられる馬力が身に付いたら、もっと評価が上がる投手となるだろう。

 その後、130キロ中盤の速球、120キロ前後のスライダーをコンビネーションに3.1回を投げて4奪三振、無失点の快投。

 東海大相模が7対3で東海大菅生を下し、春季関東大会で初めて優勝を飾った。

 2本塁打7得点と東海大相模らしい強打が見えた一戦。今大会は6人の投手を起用し、1人の投手に負担をかけすぎることなく、大会を制した。茂谷、松本など新戦力が活躍したことも大きかった。県大会ではベンチ入りしていたものの、関東大会でベンチに外れた選手もいるが、ベンチに外れた選手も能力が高い選手が揃っており、夏のベンチ入りをかけてギリギリの戦いが繰り広げられることになるのではないだろうか。

 
また東海大菅生も夏へ向けて、エース・中村晃以外の投手を4人起用した。春季都大会ではあまり出ていなかった選手を起用するなど、新たな収穫が見えた。

 ただ決勝戦の試合内容は選手の能力値の高さからすれば、まだ物足りなさは感じる。改めて自分たちの現在地を見直す意味でもよい試合だったのではないだろうか。スローガンである「臥薪嘗胆」を噛み締めてこれからの練習に取り組んでいただきたい。

 令和元年に実現した「TOKAI決戦」。
今後のチームの成長にとって欠かせないものだった。

(文・=河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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