試合レポート

明石商vs大分

2019.03.30

主役・脇役の活躍が光った明石商 投手の人材豊富に注目

 この試合の明石商は主役・脇役の面々が活躍した試合となった。まず1対1の同点のまま迎えた2回表、明石商は5番に登った守備の人・岡田 光が勝ち越し本塁打。この本塁打で勢いに乗った明石商は2年生スラッガーの1番来田 涼斗がライトへ適時三塁打を放ち、2点を追加。さらに3番重宮 涼の適時打で5対1と点差を広げた。

 さらに4回表には2回途中からマウンドに登った中森俊介の本塁打や重宮の適時打で7対1と点差を広げる。

 重宮はようやく甲子園で持ち味を発揮。181センチ82キロの大型三塁手だが、広角に強い打球を打てるのが強み。初戦は無安打に終わったが、的確にボールをコンタクトして、強い打球を打ち返すことができる。ポイントゲッターとなる重宮にあたりが出始めたのは大きいだろう。
 

 ライト方向へ強い打球を打てたのは狭間監督の指導が大きい。狭間監督から腰の開きが早くなり、さらに右肩が上がり、乱れた打撃フォームを指摘された重宮は軸足でしっかりと体重をためて、ぎりぎりまで腰を開かず、ボールをぶつけるスイングに改良。その結果、ライト方向へ強い打球を打てるようになった。

 ライトへ強い打球を打つ快感は高校に入って目覚めた。大久保中時代は引っ張り傾向にあったが、きめ細かい「メイショウ野球」に触れていくうちに右打ちに目覚める。ライト方向へ本塁打を放つまでに成長した。

 また4番・安藤 碧に当たりが出たことも大きい。181センチ77キロと恵まれた体格を持ち、ヘッドスピードが速い鋭いスイングを見せる安藤だが、コンタクトした時の打球は非常に速い。7回表に三塁打が飛び出し、自慢の快速を披露。安藤はさらにライトからの返球も強く、肩の強さには自信を持っている。

 湊クラブ(ヤングリーグ)時代は投手として活躍したが、狭間監督に打力の高さを評価され、外野手へ転向した。本人は「ミートを心がけすぎたところがあり、当てに行くスイングとなっていた。だからあの打席では思い切りスイングすることを心がけた結果、強い打球を打てたと思います」と振り返る。なかなかいないアスリート型外野手なだけに、打撃面の確実性を高めることを期待したい。

 中森は1回戦に続き素晴らしいピッチングだった。ワインドアップから始動し、流れるような体重移動から繰り出すストレートは常時138キロ~143キロを計測し、内外角へ強いボールが投げられるのが強みで、ストレートも変化球も決め球になる精度の高さがある。120キロ台のスライダー、130キロ台のスプリット、カットといずれも低めに集めることができており、強打の大分打線をリズムよく打ち取っていった。

 中森は「大分打線はローボールヒッターが多かったので、高めの真っすぐ を軸に低めに変化球を投げることを心がけた」と相手打者の傾向をつかんだピッチングも光り、5.2回を投げて7奪三振、無失点の快投。2試合を投げて、14.2回を投げてわずか1失点。抜群の安定感を示している。
 ただ中森自身、今日の出来が最高ではなく、上半身、下半身の動きが連動すれば、さらに速いストレートを投げられると期待を決めているようだ。


 その後、明石商は13安打13得点の猛攻。明石商は中森と中指の違和感で思うような投球ができず、途中降板した宮口大輝以外にも面白い投手がいた。

 8回途中から登板した左サイドの杉戸理斗は125キロ前後のストレートとスライダーを投げ分ける左腕。入学当初は左のオーバースローだったが、腰の横回転気味だったことを指摘され、2年秋に左サイドに転向。「ここまでうまくいっている」と手ごたえをつかんでいる

 9回二死から181センチの本格派右腕・南瑛斗が登板。しかし2四死球を出し、最後の打者を遊飛に打ち取り、ベスト8進出を決めた。最速135キロを出し、120キロ前後のチェンジアップを投げ込み、素質の高さを示した南だが、実は中学3年生で、最速140キロを計測している。

 高い期待をされた明石商の門をたたいたが、ただ入学直後、腰の疲労骨折で2か月間プレーできず、投げ方を忘れ、一時は120キロ台まで落ちた。しかしじっくりとフォームを固めていきながら、この春の練習試合で139キロを計測するまでとなった。この甲子園の経験をプラスに変えることができるか。

 大差になったことで実現した投手リレーだが、改めて明石商の人材の豊富さを実感する試合となった。

(文=河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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