都立荒川商vs上野学園
劇的サヨナラで都立荒川商が都大会出場を決める!!
サヨナラで喜びを爆発させる荒商ナイン
都大会出場を懸けた一戦は、息詰まる投手戦を呈した。
上野学園のマウンドに上がったのは、背番号10を背負った酒井陽裕である。お互いに昨日も試合を行っており連戦となっていたため、エース番号の赤坂諒は先発しなかった。
実は、このエース赤坂は昨日の都立豊多摩戦で9回を完投完封し17奪三振を奪っている好投手。しかし、先発を務めた酒井もそれに負けない投球を初回から披露する。左手を小さく体に巻き付け、テイクバックを取った右腕を真上から振り下ろす投球フォーム。回転のきれいなストレートを軸に、チェンジアップなどを織り交ぜた配球で初回から3人で抑え込んでいく。
一方、都立荒川商のマウンドに上がったのは、エース番号を背負った木村瀬都也。
木村は昨日の桜丘相手に9回完投完封被安打2で二塁を踏ませない投球をしたばかり。その疲れを感じさせない投球を初回から展開していく。グラブをホームに向けてターゲットを決めると、そのグラブを叩くように右手を出して投球する。球速はそれほど出てはいないが、コントロールは絶妙な出し引きで相手を手玉に取っていき、両者危なげない立ち上がりをみせる。
最初にチャンスを迎えたのは、5回裏の都立荒川商であった。一死後、5番・木村が右中間を破るツーベースでチャンスを作る。続く、6番・五木田空はレフト前にヒットを放ち、この試合初の連打を浴びせる。しかし、後続が凡退しチャンスを生かしきれない。
ピンチの後にチャンスあり。
6回表の上野学園もチャンスを作り出す。2番・仁坂駿太、3番・小泉旅人の連打で無死、一、二塁とチャンスメイク。ここで、一つギアを上げたのは上野学園打線ではなく、都立荒川商エースの木村であった。後続を3人で抑え無死一、二塁のピンチを難なく凌いだ。
最高の笑顔を見せる木村瀬都也
ここからは、両チーム沈黙が続く。投手戦やロースコアの試合は、終盤につれてミスが命取りとなるパターンがよくあるのが野球である。
そのミスが、上野学園に出てしまう。8回表に無死のランナーを出し盛り上がるベンチ。だが、マウンドの木村は至って冷静であった。3番・小泉がバントを仕掛けると、マウンドから猛ダッシュで下り間髪入れずに二塁に送球しアウト。そして一塁にも、ボールが転送されアウトとなり二死ランナー無しとする。このプレーが、都立荒川商を勢い付けてしまう。
イニングは進み9回裏の都立荒川商の攻撃。二死を簡単に取られてしまい、球場に居る誰もが延長戦を覚悟した。しかし、「野球は二死から」を体現させてくれたのが木村であった。
4番・飯嶋聖哉が四球で出塁を果たすと、5番・木村の打席の初球で盗塁を見事成功させる。
二死、二塁となり外野が前進守備をひく。上野学園の酒井のストレートが高めに浮いたところを、木村が迷わず振りぬいた打球はライトの頭を越すサヨナラヒットとなり、投手戦に終止符を打った。
この日、サヨナラ打を含む3安打を放ち2試合連続完投完封の木村しかヒーローが浮かばないくらいの活躍であった。試合後に話を伺うと、「前日の疲れは全くなかったです。本当にバックがよく守ってくれて気持ちよく投げることが出来ました」と喜びを隠し切れない様子で語ってくれた。
古溝匠監督は、「抽選が決まった段階で連戦は覚悟していました。そこは、上手く木村が調整してくれました。」と試合を振り返る。2時間に満たない練習時間のなか、『1day1menu』で集中して練習に取り組んでいることが、試合終盤まで集中切らさず戦い抜けたと勝利の要因として答えてくれた。
敗れた、上野学園は酒井に打線の援護がなかったのが悔やまれる。ヒットはそれなりに出るのだが、1本を出すことが出来なかった。夏までにこの打線のムラを無くすことで効率よく得点に結び付けたいところだ。
都立荒川商は廃校が決まっており、校名も変わる。今いるメンバーで荒商の名を轟かせたいと意気込むナイン。今後の活躍にも期待だ。
(取材=編集部)