松山城南vs内子
「ビッグサプライズ」の朝ぼらけ
投手で最速138キロ・足も速い松山城南の4番三塁手・渡邉光(3年)
試合前、試合中、試合後。この一戦には驚きが数多くあった。
まずは試合前。松山城南ベンチを見るとユニフォームを着ているのは現役時代は高松商の正捕手として1969年センバツ優勝を経験し、過去に幾多の野球部に指導者としてかかわり昨年から同校コーチを務める松田 正和氏だった。理由を聞けば「前任監督が職を解かれた後、今年1月から3月まで暫定監督をしています」とのこと。1942年6月5日生まれの現在78歳にもかかわらず「生徒をほっとけない」とあえて汚れ役を買って出た漢気は、私たちに様々な示唆を与えてくれるものである。
試合中は両校、突出した強みを持つ選手が驚きをもたらす。松山城南からは聖カタリナ学園から転校し、今大会が1年間の公式戦除外期間を経て晴れて出場解禁となった渡邉 光(3年・184センチ76キロ・右投右打・松山坊っちゃんボーイズ出身)だ。「4番・三塁手」として先発したこの試合では3回表に一塁駆け抜け4.38秒をマークして三塁内野安打を勝ち取ると、6回裏からはマウンドに上がり最速138キロを出して4回2安打1四球3奪三振無失点。まだ粗削りな部分はあるが、能力的には四国内でもトッププロスペクトであることは間違いない。
内子からは2人。1番の小西 雅紋(3年・中堅手・166センチ65キロ・右投右打・内子町立五十崎中出身)は守備の一歩目・判断力には鍛える余地があるが、一塁駆け抜けは松山城南・渡邉とほぼ同等の4.3秒台。先発の池田 泰征(3年・174センチ78キロ・右投右打・内子町立内子中出身)も7回3分の2を投げ5安打1失点。しかも最速は127キロながらネット裏の偵察部隊が示していたスピードガンは、ストレートも変化球もすべてが初速と終速の差が「3キロ以内」を示していた。高卒プロは現状では難しいが、2人ともぜひもう一段階上で自分の強みを磨いてほしい選手である。
そして試合後、4月から就任する松山城南の次期監督が複数関係者からの話で明らかになる。その人とは……。なんと、1996年から2001年と2010年から昨年末まで修徳(東東京)で指揮を執った阿保 暢彦(あぼ・のぶひこ)氏・45歳。「百獣の王」武井 壮と同級生だった修徳での現役時代は遊撃手。駒澤大を経て指導者の道に進み、2013年夏には甲子園出場も果たしているメンタリティは、愛媛野球界に大きなムーブメントを起こすことは間違いない。
となれば夏の愛媛大会では2勝以上が望める内子を終盤突き放し松山城南にとって、春の県大会はいわば「ビッグサプライズの朝ぼらけ」。松田監督の下、高いポテンシャルを持つ選手たちがいかに進化の胎動を示すかを楽しみにしたい。
(レポート=寺下 友徳)