川越西vs川越東
川越東西対決はワンチャンスを生かした西が県大会進出果たす
最後まで自分のリズムを崩さなかった川越西・井上君
川越勢対決である。埼玉県の4地区では最も一次予選突破が厳しいとも言われている西部地区。公立私立校どちらも、しっかりと練習を積んできている学校が多いからだ。県内でも中堅以上の実力校でもある川越東は私学男子校の進学校。選手たちは、ある程度の高い意識を持って入学してきている。この夏も南埼玉大会ベスト4まで進出した。川越西は、地場の一般的な公立校。突出した進学校ではないが、真面目な生徒が多い。そんな両校の川越ダービーである。この夏は初戦敗退してしまっている。
川越東は1年生からメンバー入りしておりこの夏の経験もある宮﨑君。川越西は安定した制球の井上君の先発で、初回はお互いに四球は与えつつも無難な立ち上がりで序盤は進んでいった。
試合の流れは3回から4回の攻防だった。
川越東は3回、先頭の9番豊島君が左前打で出ると四球で無死一二塁。ここで川越東は野中祐之監督が「打てる選手なので、攻撃型で点を取っていくためにあえて2番に起用した」という桒山君がバントすることなく強攻で打って行った。結果としては、いい当たりの二塁直球で飛び出していた二塁走者も刺される併殺となった。川越東としてはアンラッキーというか、強攻が裏目に出てしまった。このワンプレーが試合の流れそのものも、大きく動かすこととなった。
ピンチを逃れた川越西の4回、先頭の4番森君が左前打。バントは失敗して一死となったが、続く青木君の一打も併殺打かと思われたが、送球が大きくそれて一死二三塁となる。投手としては併殺チェンジと思ったところがいきなりのピンチとなってしまった。そんな精神的なダメージもあったのだろうか、宮﨑君は7番齊藤啓介君に中前へはじき返されて川越西が先制。さらに井上君も左前打して2点目。その後は四球もあって二死満塁となって2番今井君は右越え二塁打して走者一掃。川越西として見れば、極めて効果的なロングヒットだった。
その裏、川越東は先頭の浪江君が中越二塁打で出ると、一死後宮﨑君も三遊間をしぶとく破って一死一三塁。早い回で1点でも詰めておきたい川越東としては願ってもないチャンスとなったのだが、7番山崎君の打球はいい当たりの投手返し。井上君のグラブをはじいたものの、いいところへ転がってすぐに拾って本塁へ送球。その球もそれたのだが、三塁側いい方向へそれてちょうど走者が入ってきたところでタッチアウトとなった。こうして、幸運もあって川越西は、そのままリードをキープしていった。8回、9回に犠飛と無死満塁で併殺の間に生還という形で1点ずつを失ったものの、井上君は最後まで自分のリズムで投げ切った。
川越西の中野忠司監督は、「この夏は、埼玉県で一番早く負けた学校ですから、新チームの時間はたっぷりありました」と苦笑しながら、「3回の無死一二塁のピンチを併殺で逃れられたのが大きい」と、試合の流れを振り返った。「その次の回に相手のミスが絡んでチャンスを作れて、そこで一本出せて…、まさにワンチャンスでしたが、上手く点を取れてよく守れました。力としては、当然相手の方が上でしょうからね」と、運も含めていい流れだったことを改めて感じていた。
この秋は県大会進出がならなかった川越東。野中監督は、「宮崎をこの秋にピークにもっていって、と思っていたんですけれども…。やっぱり、チームを作り上げていくのは冬を越して1年かかるのかなぁ」と肩を落としていた。
(記事:手束 仁)