佐倉南vs千葉敬愛

1点を返す本塁打を放つ山口（佐倉南）

　佐南こと佐倉南。佐倉市の学校では最も実力がある公立校として長く活躍していた学校だが、その佐倉南も部員不足に悩んだ時期があった。その佐倉南を立て直したのが茅野和也監督だ。この名前を聞いてピンときた千葉県の高校野球ファンもいるだろう。2015年春、千葉沼南の監督として関東大会出場に導いた方である。2016年春から赴任した茅野監督によると、部員は5人しかいなかったという。
「その時は私も練習試合に出ていましたね」と苦笑いする茅野監督だったが、千葉沼南時代の実績を知って入学したのが今の2年生である。彼らは1年春から公式戦に出場しており、経験値は豊富。秋初戦の相手は強豪・千葉敬愛だったが、動じずに戦った。

　まず試合は3回終わって0対0の展開。千葉敬愛の先発・大山泰平は125キロ前後のストレートとスライダーを外角中心に投げ込みながら、打ち取っていき、また、佐倉南の先発は球速は110キロ台と決して速くないのだが、スローカーブでストライクが取れ、両サイドに投げ分ける制球力がある。また捕手の濱田純志（2年）は「とにかく遅い球を混ぜて打ち取る投球ができれば」と、緩急を使い分けたリードで千葉敬愛打線を打ち取ることができていた。

　しかし4回裏、佐倉南の先発・水田が制球を乱し、連続押し出しとタイムリーで千葉敬愛が3点を先制。このままずるずるいくかとおもわれたが、5回表、8番山口将生がスライダーに対してヘッドを利かせてレフトスタンドへとソロ本塁打で1点を返すここから勢いに乗った佐倉南打線は6回表には二死二塁から4番濱田の左中間を破る二塁打で2対3と1点差。ここで投手交代を決断し、千葉敬愛は2番手の水口太貴を投入するが、流れを止めることができず、6番山梨 海都（2年）の適時打で同点に追いつくと、二死満塁から8番山口がライトの頭を超える適時打を放ち、5対3と試合をひっくり返した。

勝利を決めた佐倉南ナイン

　「今年は打のチーム」と濱田が評するように下位打線まで長打を打てる打者がいる。その打線は日ごろの振り込みと食トレで作られた。1日1000本以上の振り込み、さらに専門の栄養士と契約して、体作りに励んだ。1番持田玖仁（2年）など多くの選手が入学から10キロ増となった。

　この試合後でも選手たちはすぐに栄養ゼリーを補給してリカバリーするなど、意識の高さがうかがえる。こういう姿勢が体を大きくさせ、私学に負けない強打を作り上げているのだろう。

　そしてリードした佐倉南は2番手の山梨が110キロ前半のストレート、カーブを散らせながら、千葉敬愛打線を打ち取っていく。9回裏、千葉敬愛は二死一、二塁で、4番栗原 瑞生。リードしていた捕手・濱田は「本当に緊張していました」というように佐倉南ナイン誰もが緊張していた。しかし、山梨は冷静だった。栗原を投ゴロに打ち取り、試合終了。佐倉南が千葉敬愛を破り、代表決定戦に進出した。

　勝利の瞬間、正捕手の濱田は「嬉して泣きそうになりました」と笑顔でその場面を振り返るように多くの選手が喜びを表していた。茅野監督は「夏の大会前の練習試合で大逆転負けを喫しまして、そこから後半に粘り強く、点が取れるチームになろうと話をしてきました。その気持ちが実を結んでいると思います」と選手の粘り強さを評価した。また、茅野監督は
「夏休み期間、ずっと投げてくれた3年生の梶原正貴、食トレなどサポートしてくれた保護者の皆様、そして千葉沼南時代の主力選手だった選手も練習の手伝いにきてくれました。周囲の支えがあったからこそ勝てたともいます」と周囲の感謝を述べた。

　こうして、試合を見ると、ただ猛練習をこなしただけではなく、食トレ、戦術など様々な面でチームを強化しているのが伺える。千葉敬愛の勝利を「勢い」にすることができるか。「佐南旋風」が幕開けするには次の代表決定戦が大事となる。

（記事・写真・河嶋宗一）