奈良大附vs羽黒
奈良大附が理想的に得点を重ねて羽黒に快勝!
第100回全国高校野球選手権大会の6日目。第3試合は15年ぶり2回目の出場となる羽黒(山形)と、夏の甲子園は初出場となる奈良大付(奈良)が対戦した。
山形大会では準決勝、決勝を2試合連続サヨナラホームランと劇的な勝利で甲子園まで勝ち進んできた羽黒と、奈良大会では1試合平均10.8得点を挙げ、今大会出場校のなかでトップとなる打率.458を記録した奈良大付の一戦。
1回表、奈良大付は1番・宮川 寛志(3年)がストレートを鋭く弾き返して右中間へ二塁打。続く植垣 裕(3年)が初球を三塁前へバントをするとサードが一塁へ悪送球(記録は安打と失策)。ボールがファウルグラウンドを転々とする間に宮川がホームインし、わずか8球で先制に成功した。
この甲子園から背番号1を付ける羽黒の先発・篠田 怜汰(2年)からするとあっさりと得点を奪われ、なおも無死二塁と動揺が広がってもおかしくないシチュエーションだったが、表情を変えることなく冷静なピッチング。キレのあるストレートと100キロ前後のカーブで緩急をつけて後続を打ち取り、追加点は許さなかった。
奈良大付の先発・木村 光(3年)は140キロ前半のストレートに大小2種類のスライダーを織り交ぜた投球。2回裏はエラーと盗塁で無死二塁の場面を迎えたが、7番・秋保 優大(3年)をインハイの真っすぐで思惑通りの内野フライに仕留めると、篠田はスライダーで見逃し三振。渡部 大地(3年)は141キロのストレートでキャッチャーへのファウルフライに打ち取り、ピンチを切り抜けた。
試合が再び、動き始めたのは5回。奈良大付は9番・竹内 直人(3年)が高めのストレートを詰まりながらもセンター前へ運ぶと、宮川は変化球を上手く捉えてライトスタンドへ2ランホームラン。突き放しにかかるが羽黒も負けじと、その裏。篠田がショート内野安打で出塁し、二盗に成功。ここで1番・鈴木 倫(2年)がセンター前へタイムリーを放ち、前半戦は奈良大付が3対1の2点リードで終えた。
終盤、先にチャンスを迎えたのは羽黒。7回裏、2アウトから篠田、渡部の連打で一二塁とすると、バッターボックスにはタイムリーを打った鈴木。前の打席ではストレートを打たれていた奈良大付の木村は初球にスライダーを使って空振りを奪うと、その後も丹念に低めを突く投球。最後はインローの真っすぐでライトフライに抑え、事なきを得た。
ピンチを切り抜けた奈良大付は直後の8回表、それまで押され気味だった篠田のストレートを捉えはじめ、植垣、東郷 佑太(3年)の連打で無死一三塁。4番の上野 拓真(3年)もやはりストレートをセンターへ打ち返すと、これが犠牲フライになってダメ押し。結局、試合はそのまま4対1で奈良大付が勝ち、春夏通じて甲子園初勝利を飾った。
奈良大付の勝因はなんと言っても、エース・木村。6回から球速が140キロを超えなくなっていたが、徹底的に低めと両コーナーを突く粘りのピッチングを披露。羽黒の強打者・竹内 大貴(3年)に対しては緩い大きなスライダーにタイミングが合っていないと見るや、第3、第4打席はボールになるスライダーを決め球に使って2打席連続の空振り三振を奪うなど頭脳的な投球が光った。8安打は打たれたものの、四死球は2つで、安定した制球力が勝利を引き寄せたと言えよう。
羽黒は常に先手を奪われる苦しい展開を強いられてしまった。そのなかでバントを使わず、機動力を駆使した積極的な攻撃でチャンスを創出していたがチャンスであと1本が出なかった。特に2回裏の無死二塁の場面では下位打線だったこともあり、三塁へ走者を進めるための進塁打の意識がほしかったところだ。守備では中堅手の中島 翔(2年)が8回に後方への飛球を好捕。9回には好返球でホームを狙った走者を刺すなど素晴らしいプレーを見せる一方、4回には平凡なセンター前ヒットに対し、緩慢な動きで打者走者に二塁へ進まれてしまうシーンも見られた。先制点もタイムリーエラーだったが、こうした集中力の欠如は大きな反省点だろう。
打っては12安打、投げてはエースが1失点完投と素晴らしい内容で勝ち上がった奈良大付。2回戦は大会11日目の第3試合で日大三(西東京)と対戦することが決まっている。
(記事=大平 明)