試合レポート

二松学舎大附vs都立小山台

2018.07.29

二松学舎大附、2年連続3回目の優勝!都立小山台、さわやかに散る

 

 試合開始前に、やや強い雨が降り15分遅れで決勝戦は始まった。

 日曜日の[stadium]神宮球場[/stadium]は、都立小山台の応援席である三塁側から埋まりはじめ、やがて球場全体が埋まり、2万6000人の大観衆が詰めかけた。

 2年連続の優勝を目指す二松学舎大附か、都立校としては雪谷以来15年ぶりの甲子園出場を目指す小山台か。15年前雪谷に敗れたのは、二松学舎大附であったが、夏の甲子園大会出場に焦りすら感じられた当時の二松学舎大附と既に2回の夏の夢舞台を経験している今の二松学舎大附は違う。その分、小山台には厳しい戦いになる。

 決勝戦は、二松学舎大附は準決勝で好投した大庭颯仁が、小山台の中1日での事実上の連投になる絶対的なエース・戸谷直大が先発した。

 1回表小山台の1番・松永和也はライトに痛烈な打球。これを二松学舎大附の右翼手・畠山大豪がダイブして好捕した。緊迫の決勝戦は、畠山のファインプレーから始まった。

 先制したのは小山台だった。2回表4番・會川和希が中前安打で出塁すると、5番・宮崎雄大のエンドランが右前安打となり、一死一、三塁。6番・南大樹の中犠飛で會川が生還した。

 しかしその裏二松学舎大附は、6番・野村昇太郎、7番・有馬卓瑠が連続バント安打。8番・山田将義の遊ゴロは併殺になったが、野村は三塁に進み、大庭の中前安打で同点に追いついた。

 4回表小山台は、一死後5番・宮崎の右前安打、6番・南の四球、7番・西脇宗孝の投前バントは、一塁ががら空きになり満塁。ここで8番・吉田大晟が右前安打を放ち2人が生還する。

 その裏二松学舎大附はこの回先頭の6番・野村のライト線ギリギリに入る二塁打に続き、7番・有馬のバント安打、8番・山田の中犠飛で1点差に迫る。それでも小山台は、1番・右田稜真の三遊間飛ぶ強いライナーを、遊撃手の南がダイブして好捕。小山台が踏ん張る。南は再三にわたる好捕で、エース・戸谷を助けた。

 二松学舎大附に流れを持ち込んだのは、5回表から登板した岸川海であった。岸川は145キロ前後の速球を軸に小山台打線を奪三振2の三者凡退に抑える。


 するとその裏二松学舎大附は、安打2本と四球で二死満塁とする。小山台の捕手・吉田は、スプリットを投げるためどうしてもワンバウンドが多くなる戸谷の球を、身を挺して止めていたが、7番・有馬が三振した4球目は、大きく弾いてしまった。二死なので振り逃げは可能になるが、戸谷の本塁ベースカバーが遅い。そのため三塁走者が生還して二松学舎大附が同点に追いつく。さらに8番・山田の遊撃手への内野安打で二松学舎大附が逆転する。

 さらに7回裏には一死二塁から6番・野村の二塁打で1点を追加。野村は三盗し、7番・有馬の一塁への内野安打で野村も生還。小山台にとっては重い追加点を挙げる。

 一方5回表から登板した岸川は安定した投球を続け、8回表は、先頭の2人に連打されピンチを招くものの、しっかり後続を抑え、危なげのない投球を繰り広げる。

 このまま試合が終われば、小山台の戸谷にとっては高校生活最後のマウンドとなる8回裏は、1番から始まる二松学舎大附の打線を三者凡退に抑え、9回の攻撃に望みをつなぐ。

 けれども9回表の小山台の攻撃も二死一塁。3番・飯田光塁はライトへの低い打球。これを二松学舎大附の右翼手・畠山がダイブして好捕。畠山の好捕に始まった試合は、畠山の好捕に終わり、二松学舎大附が2年連続3回目の優勝を決めた。

 敗れたとはいえ、私立の強豪と堂々と渡り合った小山台の戦いは見事であり、実にさわやかであった。特にエースの戸谷は、関東一早稲田実日大三と、強豪と対戦するたびに自分の投球ができず自滅していたが、この夏は、精神的に大きく成長した姿をみせた。そして遊撃手の南を中心とする守備陣も、安定した落ち着いた動きをみせた。小山台の戦いは、都立もやればできるという可能性を示したが、あと一歩を埋めるのが、本当に厳しい戦いなのかもしれない。

 二松学舎大附は、平間陸斗をはじめ、昨年の経験者が多い攻撃は、都内でもトップクラスであった。ただし、投手を中心としたディフェンスは不安視されていた。けれども、決勝戦で好投した岸川、準決勝で活躍した大庭など、エース・海老原凪をしのぐ、新たな投手が台頭。1年生捕手である山田の活躍で、春から戦力は格段にアップした。

 二松学舎大附にしても、小山台にしても、春からの成長が顕著に見えるチームが決勝戦に残り、より一層の底上げを果たした二松学舎大附が優勝した。大会前、今年の東東京大会のレベルで、甲子園で戦えるようなチームが現れるか、正直不安であったが、このチームには十分期待したい。

文=大島裕史

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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