丸亀城西vs英明
丸亀城西、終盤まくり上げ、大本命・英明にサヨナラ勝ち!
「やはり大本命・第2シード英明の春夏連続甲子園出場か」
7回表が終わった時点で、[stadium]レクザムスタジアム[/stadium]に詰めかけた半数以上の人はそう思ったに違いない。それほど、中盤戦までの英明は「盤石」だった。
攻撃は2回表無死から3連続四球後、7番・黒河 竜司(2年・180センチ80キロ・右投右打・高松市立屋島中出身)の左前2点適時打、8番・前田 大(1年・遊撃手・173センチ56キロ・右投右打・丸亀市立西中出身)のプッシュバントで投手グラブ下、二遊間を破る中前適時打、二死後1番・加藤 稜(3年・中堅手・175センチ73キロ・左投左打・ヤング阿南シティーホープ<徳島>出身)の左前適時打で大量4点を先制。
投げては最速143キロ右腕・黒河が6回まで61球の省エネ投球で3安打無失点。そして試合の行方を左右する「次の1点」も7回表一死二塁から4番・千原 凌平(3年主将・捕手・171センチ85キロ・右投右打・京都木津川リトルシニア<京都>出身)のバットによってもたらされた。ただ、灼熱の太陽光線は英明・黒河のスタミナを徐々に減じさせることに。そして丸亀城西の衰えぬ闘志も、英明に見えないプレッシャーとなってのしかかっていった。
7回裏には二死走者なしから連打と3回途中からリリーフに上がった8番・大前 輝明(3年・179センチ91キロ・右投右打・丸亀市立西中出身)の右中間二塁打でまず2点。相手失策後、これまでの3試合では長打がなかった1番・水野 達稀(3年・169センチ69キロ・右投左打・丸亀市立南中出身)が、高校通算27本塁打の一端を示す右中間フェンス直撃の適時二塁打で計3点。8回裏には無死一・二塁からの犠打失策と7番・福田 直人(3年主将・捕手・171センチ69キロ・右投右打・宇多津町立宇多津中出身)の中犠飛で同点。一方、最速140キロ右腕の大前も136キロの球速以上に重さを感じるストレートで9回までを5安打1失点でしのいだ。
そのムードに乗ったのは丸亀城西・水野。一死から黒河の3球目を叩いた打球は彼特有の低いライナーで右中間真ん中へ飛ぶ三塁打。個の時、1時間前までスタジアムを包んでいた英明圧勝ムードは丸亀城西のサヨナラ勝ちを期待する空気へと完全に入れ替わっていた。
ここで満塁策を採り、背水の陣で延長戦への持ち込みを狙う英明。しかし、丸亀城西4番・塩田 小次郎(3年・一塁手・177センチ81キロ・右投左打・丸亀市立東中出身)の打球は前進守備をかわすように左前に飛び遊撃手のグラブをかすめて落ちた。かくして、昨年は決勝戦で涙を呑んだ丸亀城西の想いは、5点差を3イニングで覆す大逆転勝ちになって結実した。
決勝戦の相手は勢いに乗る古豪・高松。彼らは丸亀商時代から現在に至るまで県内屈指の名門としてけん引してきたプライドをかけ、13年ぶり5度目の夏へすべてをかける。
最後にあと半歩及ばず敗れた英明について。特にセンバツ後、様々な困難が彼らを襲う中でチームを結束する集団に押し上げた主将・千原の働きは敗れてもなお称賛に値するものだ。今後は最後まで課題として残った守備力と、千原が率先垂範した人間力を補いつつ、2年生としては全国トップクラスの安定度を誇る黒河も一段階上のスタミナと球速を目指してほしい。そうすれば、2年連続のセンバツ出場とこの日果たせなかった春夏連続甲子園は自ずから手に入ることだろう。
(レポート=寺下 友徳)