試合レポート

新田vs松山聖陵

2018.07.18

「目前の敵」と向き合った新田、向きえなかった松山聖陵

 

 第1シード&センバツ出場。加えてこれまでにNPB全球団のスカウトが最速147キロ右腕・土居 豪人(3年・191センチ80キロ・右投右打・宇和島市立城東中出身)視察に詰めかけた松山聖陵。一方、高校通算本塁打10本を超えた森 将大(3年・一塁手・178センチ81キロ・右投右打・愛媛松山ボーイズ出身)を4番に据え、エース主将の田井 惣士(3年・178センチ75キロ・右投右打・東温市立川内中出身)の右腕に命運を託す新田。今大会最注目のビックカードを前に、坊っちゃんスタジアムはグラウンドのみならずスタンドからも熱気がほとばしっていた。

 

 そして試合は序盤から大きな動きがである。その遠因には新田の打順変更があった。今大会では春までは中軸を打っていた吉川 晋平(2年・三塁手・169センチ71キロ・松山中央ボーイズ出身)を1番に変え、1・2番を打っていた俊足の大判 球太(2年・右翼手・176センチ72キロ・右投左打・新居浜リトルシニア出身)を1番9番に入れる新打順を採用。

 

 さらに2番には俊足巧打の石川 大成(3年・遊撃手・164センチ58キロ・右投左打・松山中央ボーイズ出身)、5番には長打力のある白石 陸人(3年・中堅手・178センチ72キロ・右投右打・えひめ西リトルシニア出身)を入れたことでバランスの良い打線が完成した新田は、1点を失った直後の2回裏、土居に襲い掛かる。

 

 まずは先頭打者の白石が中越二塁打。二死後、死球と四球で満塁とし打席に入った吉川は、土居のスプリットが高めにはいったところを見事に右中間に弾き返す三塁打。3対1と逆転に成功すると、4回裏も大判の中前安打などでつかんだ一死満塁から、今度は石川が甘いスプリットを中前に運ぶ2点打。投げては田井も14安打を浴びながら11奪三振完投。目の前の敵を倒す準備をグラウンド上で忠実に体現した新田松山聖陵を5対3で下し、3回戦へと駒を進めた。


 対して松山聖陵は「目の前の敵と闘う」以前に、自らの心技体が整わぬまま残念な敗戦を喫した感が強い。注目の土居は8回完投こそしたものの、142球で被安打11・四死球4・奪三振6で5失点(自責点5)。大会前の練習試合で手ごたえを得ていたチェンジアップ、スプリット、スライダーの多彩な縦変化に偏重し、本来の持ち味であるストレートのキレを失ってしまった。

 

 打線も2回表二死二塁から7番・松尾 理夢(3年・右翼手・176センチ70キロ・右投左打・今治市立西中出身)の左前打で先制も、なおも二死一・二塁から9番・土居の中前打は新田・白石の好返球に阻まれ追加点はならず。その後は2対5で迎えた8回表一死満塁から土居、1番・眞榮城 隆広(3年主将・遊撃手・172センチ68キロ・右投左打・那覇ボーイズ出身)が連続見逃し三振したシーンに代表されるように、リスクを恐れての消極的なプレーが目についた。

 

 そんな彼らに光明となったのは9回表、二死二塁から途中出場の5番・柳本 晉一郎(3年・169センチ69キロ・右投右打・寝屋川ベースボールフレンズヤング<大阪>出身)の左前適時打と代打・本田 裕大(3年・185センチ85キロ・右投右打・西条少年野球球団<現:西条ボーイズ>出身)の左前打を放ったシーン。控えの立場にありながらも「目の前の敵と闘う」準備を進め、結果を出した2人の姿は、今後、後輩たちが引き継がなくてはいけない。今大会は第1シード・川之江を破って甲子園初出場を決めた2年前の逆パターンとなってしまった松山聖陵であるが、これからも「えひめの高校野球」をけん引する立場であることは事実。この失敗を糧にして、個人としても、チームしても一段高いレベルに進んでもらいたい。

 

(レポート=寺下 友徳

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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