千葉明徳vs多古
千葉明徳 投打の軸が秋から成長を見せ、強豪・多古を破る!
力投を見せる宮崎宏哉(千葉明徳)
多古と千葉明徳と実力校同士の一戦は手に汗握る一戦となった。両チームとも選手の技量が非常に高く、県大会の1回戦ではもったいないと思わせるほどのゲームだった。
まず1回表、多古は二死二塁のチャンスから4番鏑木 皇輝(3年)が中前安打を放ち、1点を先制する。鏑木はパンチ力ある打撃も魅力な選手だが、何より光ったのが、最高1.87秒を計測したスローイング。コンスタントに1.9秒を計測しており、スローイング能力は県内屈指。これからも注目を浴びる存在となりそうだ。
多古の先発・池上颯太(3年)はの好左腕。コンパクトなテークバックから常時120キロ後半~133キロの速球、スライダーを軸に投球を組み立てるが、千葉明徳が冬場から鍛え上げた打力を発揮する。
1回裏二死二塁から、4番藤井 颯生(3年)が右越えの適時二塁打で1対1の同点に追いつくと、2回裏には一死二、三塁から9番田邉 慎太郎(2年)がスクイズを決める。このスクイズが相手野手の失策を誘い、二者が生還し勝ち越しに成功。4回表、多古の7番熱田 将崇(3年)の適時打で1点を返されたが、4回裏には敵失と2番清水 健斗(3年)がストレートをとらえ公式戦初本塁打となる2ラン本塁打で、6対2と突き放す。
しかし5回表、多古は二死二、三塁からここまで2安打を放っている5番大野 靖也(3年)が内角直球をとらえ、左中間を破る適時三塁打で追い上げ、さらに敵失やバッテリーミスの間に6対6の同点に追いつく。
追い上げムードの多古だったが、千葉明徳のエース・宮崎宏哉(3年)が粘り強い投球を見せる。178センチ70キロと細身の体型ながら、しっかりと腕が振れるオーバーハンドで、ストレートは常時133キロ~140キロを計測。自己最速は秋の時点で130キロ後半だったが、144キロまで伸びたそうだ。指にかかった時のストレートは回転数が高く、終盤になっても威力を衰えることはなかった。
宮崎は終盤でのピッチングを課題にしていたが、「ずっとテーマにしていたことで、この春先からだいぶ粘ることができるようになりました」と勝ち越し打を許さず、味方の一打を待った。
2本塁打を放った清水(千葉明徳)
そして7回裏、本塁打を打っている2番清水が打席に立つ。清水はこのとき、打てる感覚があったと言う。
「これは初めての感覚なんですけど、『ゾーン』に入ったといいますか。打てる気しかしませんでした。だから本塁打を狙っていました」
清水は甘く入ったチェンジアップをとらえ、ライトスタンドへ勝ち越し本塁打を放つ。2番が2本塁打と驚きの成果を上げたが、岡野賢太郎監督は「私は1,2番に一番良い打者を置く考えで、特に2番の清水は今年のキーマン。彼が打てなければ点数は取れない。それぐらい大事な役割を担っていますが、良く打ってくれました」と清水の2ホーマーを評価した。
清水は172センチ71キロと決して大きい体型ではないのだが、コンパクトなトップから腰と両腕を連動させたフルスイングで打球を飛ばす姿は関根 大気(東邦‐横浜DeNA)を彷彿とさせた。脚力も高く、センターからのスローイングも強い。走攻守三拍子そろった外野手として今後も注目すべき選手といえるだろう。
さらに6番平川 瑛斗(3年)の適時二塁打で8対6と大きな追加点を入れた。多古は8回表、3番浅野 晃生(3年)が痛烈な右前適時打を放ち、1点を返すが、反撃はここまで。千葉明徳が多古の猛追をしのぎ、2回戦進出を決めた。
岡野監督は「苦しい試合だとは予想していましたが…。今日は冬から強化してきた打線をしっかりと発揮することができましたし、また宮崎もよく投げてくれました。この完投勝利でさらに一皮むけてくれることを期待します」と選手たちの戦いぶりをたたえながらも、さらなる成長を期待していた。
次は秋優勝の拓大紅陵と対戦する。完投勝利の宮崎は「打倒・拓大紅陵を目指してやってきましたので、勝利を目指したい」と意気込んでいた。
2安打の活躍を見せた浅野(多古)
一方、敗れた多古だが、攻守の総合力は高く、夏はノーシードながら躍進が期待できるチームといえるだろう。特に遊撃・浅野 晃生、二塁・大野 靖也のコンビに注目だ。
浅野は今年の千葉県を代表するショートストップになりうる可能性を持った逸材だ。
浅野はシートノックから軽快な守備を披露。スナップスロー、ランニングスローなど難しい動作を軽々とこなす姿は高校生としてはハイレベルだ。この試合でも、三遊間の深い位置から追いつき、すぐに送球を行いワンバウンドスローでアウトにしたり、8回裏にはイレギュラーした打球でも巧みなグラブ捌きで処理し、そのまま踏ん張ってワンバウンドスローでアウト。普通の高校生ショートでは体勢が乱れてしまい、弱い送球になるところを浅野は強い送球ができるのだ。
また打っても2安打と、打撃でもその才能を発揮した。上体が高い構えで、タイミングが遅れてしまうと空振りになりやすいが、第3打席はスライダーに合わせて左前安打。第5打席もストレートに合わせて右前適時打と、速球と変化球に対応していた。
打球も速く、角度がつけば、本塁打量産も期待できそう。夏までにどんな進化を見せるのか注目してみたい。
大野は第1打席で右前安打、第2打席は俊足を生かして二塁内野安打。第3打席は内角直球をとらえ左中間を破る三塁打を放つなど、打撃内容は多古では一番だった。また大野はこの試合、5打席すべてで出塁。2盗塁を記録し、俊足もアピールした。二塁守備も切り返しが鋭く、守備力も標準以上の二塁手だ。
今年は全国的に二遊間で注目される選手が多いが、多古の二遊間コンビも今後、見逃せない存在といえるだろう。
(文・写真=河嶋宗一)