愛知産大三河vs渥美農
暑さの中で好投手戦、愛産大三河が完封勝ち
チーム一の勝負強さを持つ鈴木球雅君(愛産大三河)
4月半ば過ぎだというのに、まるで夏の大会のような暑さになった1日だった。その中で、いいテンポの好投手戦が展開された。
安定感は抜群だと言われている愛産大三河の松原 絃介君は、球威で打者を驚かせるというタイプではないが、上手にコーナーを突いて投げ分けていき、巧みに打たせていくというスタイル。渥美農の西川 卓弥君は、右スリークォーターよりややサイドに近い腕の出方で、ヨコの変化と球の出し入れの巧みさが持ち味だ。初回に、西川君は二死から連打で二三塁のピンチを招いたが、何とか抑えた。その後は、お互いに0が並んでいくという展開となった。
こうなると、どちらが先制点を挙げるのかということが大きなポイントになってきたのだが、愛産大三河は5回、一死から2番鈴木 球雅君が右中間へ三塁打を放つと、続く長谷 拓海君が左前打して待望の先制点が入った。さらに、二死となったあと4番上田君のポテン安打で一三塁にすると、続く櫻井 仁生君の一打が失策を誘ってこの回に2点が入った。
これで流れを呼び込んだ愛産大三河は6回も失策の走者をバントで進め、二死二塁となったところで鈴木 球雅君がしぶとく右前へ転がして3点目を叩き出した。鈴木 球雅君は、身体はむしろ小柄な方だが、勝負強さはチーム一番だという。櫻井春生監督も、「何か持っているのかなぁ、周囲が打っている時にはあまり打たないんだけれども、みんなが打てないときには、ここというところで打つし、チームにとっては欠かせないキーマンになっている」と言う。去年の秋も至学館と享栄との試合で、それぞれサヨナラ安打を放っているというから、勝負強さは折り紙付きだ。
そして、この3点で楽になった松原君がリードを守り切るのだが、自分のリズムで投げ切って3安打1四球で終わってみたら三塁も踏ませないという内容だった。巧みに打たせていきながら、4回と5回は先頭を出しながらも併殺で切り抜けた。このあたりは、松原君の真骨頂と言ってもいいのだろうが、得意の沈む球で三振も5つ奪っていた。シンカーともスライダーとも言えるようなボールなのだが、「独特の握りで投げている“絃ちゃんボール”じゃないですか」と、櫻井監督は言うが、独自の工夫から誕生した秘球のようだ。
その“絃ちゃんボール”に惑わされて、ついぞ打ちきれなかった渥美農。この4月に鶴城丘から異動して前任の鈴木至紀監督を引き継いで就任した岩本拓朗監督は、「もう一つ指示を徹底しきれませんでした。狙い球を絞り切っても目がついて行っていなかったです。大事なところでの守りのミスも痛かった」と、振り返って夏への課題としていた。
(取材・写真= 手束 仁)