試合レポート

彦根東vs慶應義塾

2018.03.28

最後まで直球勝負を貫いた増居翔太(彦根東)

彦根東vs慶應義塾 | 高校野球ドットコム
増居翔太(彦根東)※写真提供 共同通信

 両校の左腕エースは序盤だけ見ればストレートの速さが最速でも137キロ程度で、よさはむしろ変化球のほうに見えるという部分で似た者同士だった。慶応の生井惇己(3年)は縦割れカーブ、彦根東増居翔太(3年)は縦・横2種類のスライダーにキレがあり、ともに左腕でありながら左打者の内角をストレートで突くコントロールと勝負度胸もあった。

 この両左腕が中盤になって違いを見せ始める。生井がストレートのスピードを下げていくのに対し増居は徐々にスピードを上げていき、5回には140キロを計測した。6回裏の2死三塁の場面では昨年秋の公式戦で大会出場校中4位の4本塁打を放っている4番下山悠介(3年)に対し、4球続けてストレートを投じ、5球目にスライダーを投げて三塁フライに打ち取る心憎い配球でピンチを脱した。7回の無死満塁の場面では8番善波力(3年)に5球続けてストレートを投げ、センター前に逆転2点タイムリーを喫しているので変化球を交えたピッチングに変わりそうなものだが、増居はそれ以降もストレート主体のスタイルにこだわった。4対3で迎えた9回には7番石田新之介から9番の代打、廣瀬隆太まで14球すべてストレートで通して三者凡退。スピードは126~138キロだから疲れがきていることは間違いない。それでも増居はストレート勝負に徹し、関東の強豪、慶応を5安打、3失点に抑えて完投勝ちした。

 打のヒーローはキャッチャーの髙内希(2年)だ。まずディフェンス面から紹介すると、イニング間の二塁送球は1回から1.92秒を計測した。2回に盗塁されているが、このときも2.06秒という速さで、低めに伸びてきた送球を遊撃手が取り損なわなければアウトになっていたタイミングだ。バッティングはゆったりした始動とステップでタイミングを取るヒット量産型。5回には133キロのストレートをレフト前、7回には127キロのストレートをレフト前に運び、逆転の3ランを放った8回は低めのストレートをすくうように捉え、そのままレフトポール際の最前列に放り込んだ。スポーツ健康科学科が開設されていると言っても有力中学球児を獲得するには制限がある公立高校で、こういう選手たちが出てくるのである。

 慶応は投手の生井、野手の下山、関展里(2年)など素質豊かな選手が実力を発揮できなかったが素質の片鱗は見せてくれた。下山はバッティングだけでなく、ぼてぼてのゴロをランニングキャッチで捕り、その流れで送球するプレーなど、〝都会の球児″を思わせるプレーが続いて楽しませてくれた。

(文=小関 順二

関連記事
● 慶應義塾・宮尾の判断!1点をめぐる攻防にあったあるプレー

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.26

【春季四国大会逸材紹介・高知編】2人の高校日本代表候補に注目!明徳義塾の山畑は名将・馬淵監督が認めたパンチ力が魅力!高知のエース右腕・平は地元愛媛で プロ入りへアピールなるか!

2024.04.26

【奈良】智辯学園が13点コールド!奈良北は接戦制して3回戦進出!<春季大会>

2024.04.26

今週末に慶應vs.横浜など好カード目白押し!春季神奈川大会準々決勝 「絶対見逃せない注目選手たち」!

2024.04.26

【春季奈良県大会】期待の1年生も登板!智辯学園が5回コールド勝ち!

2024.04.26

古豪・仙台商が41年ぶりの聖地目指す! 「仙台育英撃破」を見て入部した”黄金世代”が最上級生に【野球部訪問】

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.23

【春季埼玉県大会】地区大会屈指の好カードは川口市立が浦和実を8回逆転で下し県大会へ!

2024.04.22

【和歌山】智辯和歌山、田辺、和歌山東がベスト8入り<春季大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!