國學院栃木vs延岡学園
国学院栃木のリリーフ・宮の変則ピッチングで延岡学園を翻弄!
第90回選抜高等学校野球大会の5日目。第2試合は18年ぶり4度目の出場で、1回戦では英明(香川)を3対2の接戦で下した国学院栃木(栃木)と、12年ぶり3度目の出場でセンバツ初勝利を目指す延岡学園(宮崎)が対戦した。
初戦は水澤 龍太朗(3年)渡邉 匠(3年)宮 海土(3年)の3投手のリレーで18年ぶりに甲子園で勝利を挙げた国学院栃木と、エースの上野 元基(3年)をはじめ、中学時代に全国優勝を経験しているメンバーが多く在籍し、打線も強力な延岡学園の一戦。
1回表、国学院栃木は先頭の近藤 翔真(3年)が死球で出塁すると延岡学園の先発・上野の牽制球が悪送球になり一気に三塁へ。
一死後、青木 寿修(3年)の三ゴロで三塁走者が飛び出してしまうが、焦った三塁手がホームへ悪送球。労せずして、先制点を挙げる。
しかし、1回裏の延岡学園は四球で出た上野が二塁へ進むと、4番・小幡 竜平(3年)がセンターへ弾き返して同点。さらに5番・工藤 魁人(3年)がレフトスタンドへ大会第5号の2ランホームランを叩き込み、あっさり逆転に成功した。
国学院栃木の先発・水澤は変化球が真ん中に集まったところを痛打されてしまった。延岡学園は4回裏にも一死一二塁から二塁走者の松本 幹生(3年)が隙を突いて三盗。国学院栃木の二番手・渡邉を揺さぶると9番・柳川 昇嬉(3年)がレフトへフェンス直撃の2点適時二塁打を放ち、点差を4点に広げた。
国学院栃木も黙っていない。5回表には島田 侑希(3年)のツーベースと四球で一死一二塁とすると、近藤がライトへタイムリー。さらに死球で満塁とすると青木の内野と外野の間に上がった飛球を遊撃手が落球(二塁封殺で記録は遊ゴロ)。大栗 拓也はセンターへ2点適時打を放って同点に追いついた。
[page_break:]さらに6回表は島田が初球の真っ直ぐをライトへ勝ち越しのソロホームラン。これで上野をKOすると、代わった吉田 貴勢(3年)からも近藤がレフト前にタイムリーを放って7対5とした。8回表にはまたも近藤が、延岡学園の三番手・萱野 心希(3年)の高めの真っ直ぐをレフトポール際へ2ラン。このリードを6回からマウンドに上がった宮が守り抜き、国学院栃木が9対5で延岡学園を下した。
国学院栃木は6回の島田の勝ち越しホームランが大きかった。それまでは拙攻が続き、1回表は一死二塁から浅いライトフライで二塁走者がタッチアップで三塁を狙ってタッチアウト。2回表はセカンドライナーに一塁走者が戻れずゲッツー。4回表も一死二塁でセンターライナーに二塁走者が飛び出し併殺と、積極的に前の塁を狙う走塁が判断ミスもあって裏目に出ていた。
しかし、ホームランで勝ち越した直後の6回表には二塁走者の代走に起用された高橋 賢佑(2年)が近藤の左前打に対し素晴らしいスタートを切り、悠々ホームイン。流れを引き寄せる好走塁を見せた。
その良い流れを完全にモノにしたのが投のヒーロー・宮。左のサイドハンドに近いスリークォーターから、右打者の内角、左打者の外角に横の角度を付けたボールを投げ込み、4イニングを1安打無失点。序盤、猛打を見せた延岡学園の勢いを完全に止めた。ストレートの球速は120km/h台と決して速くはない宮だが、相手打者に自分のバッティングをさせない変則的な投球フォームとストライクゾーンを丹念につく制球力、そして死球も恐れない精神力で甲子園でも活躍できる術を手に入れている。
(文=大平 明)
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