試合レポート

大阪桐蔭vs伊万里

2018.03.27

大阪桐蔭、春の布陣を分析!柿木・根尾・藤原を数字で語る

 大阪桐蔭の先発・柿木蓮(3年)が一分のスキも見せない盤石のコントロールで伊万里打線を沈黙させた。

 ストレートは1回から140キロを超え、最速は144キロ。数字だけならもっと速い投手がいるが、柿木のストレートは数字以上に速く見える。左肩の早い開きがないためボールの出所が見えず、ボールがあっという間にキャッチャーミットに届いているような錯覚に陥るのだ。
 とくに右打者の外角低めを突くストレートは攻略が難しい。横の角度がもの凄く、バットが届くような感じがしない。このコースを執拗に攻めて、打者の打ち気を見て内角をストレート、スライダーで突いて踏み込みを許さないという技術もある。変化球はスライダーが主体で、横変化がカウント球、斜め変化が勝負球用。2回表には右打者・山口瑞希に対しこのスライダーで内角をえぐり二塁ゴロに打ち取っている。

 四死球ゼロでわかるようにコントロールは本当に安定している。四死球ゼロどころか18人の打者に対して3ボールのカウントになったのが1回で、78球のうちボールとジャッジされたのが21球。投げ方も含めて昨年のエース、徳山と酷似しているが、ストレートの速さは柿木のほうが上回っている。まだ先の話だが、ドラフト上位候補と言っていいだろう。

 攻撃陣に目を移すと、大阪桐蔭打線が1回から圧倒的な迫力で伊万里を押した。1回裏は打者9人を送り三塁打、二塁打を各1本、単打を4本つらね、5点をもぎ取った。伊万里の先発、山口修司はストレートは数球に抑え、90~100キロ台の変化球でかわそうとするが、大阪桐蔭各打者はこれをミートしようとせず、じっくり呼び込んでから強打した。

 ちなみに、第3試合の花巻東東邦戦では、花巻東の左腕技巧派、田中大樹のスライダー、チェンジアップを東邦打線はミートしようと小さい振り幅で対応したが、当てたい思いとは裏腹にバットは空を切り、8三振、3失点に抑えられた。

 20安打、14失点されながら完投した田中が大阪桐蔭打線に与えた四死球はゼロ。これを逃げずに勝負にいった田中の敢闘精神を称えるのか、積極的に打って出た大阪桐蔭打線を称えるのか難しいところだが、私は田中の敢闘精神に拍手をしたい。

 柿木以外の個人技では、5番・根尾 昂(3年)がすっかりショートらしくなった。昨年は〝投打二刀流″や勉強熱心で中学時代はスキー競技の全国大会で優勝したことなど、どちらかというと高校野球とは関係の薄い部分でマスコミの注目を浴び、プレーに集中しづらい環境が出来上がっていた。
 しかし、この試合の根尾からはそういう雑念が感じられなかった。とくに目を引いたのは遊撃手としてのフィールディングだ。ゴロを捕球する際、大きいステップで打球に向い、至近距離では細かいステップでバウンドを合わせるステップワークは昨年までは見られなかった。

 唯一の不満はチーム全体の走力で、私が俊足の基準にする打者走者の「一塁到達4.3秒未満、二塁到達8.3秒未満、三塁到達12秒未満」をクリアしたのは藤原恭大(3年)の1回だけだった。次戦では根尾のタイムクリアを期待したい。

(文=小関順二

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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