大阪桐蔭vs近大附
大阪桐蔭、機動力を絡め、好投手・大石を攻略!
先発・横川凱(大阪桐蔭)
大阪決戦。第4試合となっても多くの人が詰めかけたこの対決。接戦が期待されたが、大阪桐蔭が経験値の高さを発揮した試合となった。近大付の先発は非常に気合が入った大石 晨慈。大石はこの試合へ向けて、非常に気合が入ったピッチングを見せていた。左オーバーから繰り出すストレートは常時130キロ~135キロ。コンスタントに135キロを計測していたが、こんなに135キロを計測する大石は初めて。「ストレートの走り自体は良かったと思います」というように、絶対に大阪桐蔭を破りたい気持ちが、平均球速の高さからも感じられた。スライダーの切れ、チェンジアップの精度も非常に高い。だが、その出鼻をくじいたのが、1番藤原恭大だった。
いきなり大石からストレートをとらえて右翼線へ安打。普通の打者ならば、シングルヒットになりそうな当たりだが、藤原は「二塁へいけるとおもった」と迷わる二塁を目指し、ヘッドスライディングで二塁に到達。その時のタイム、7秒62という驚異的な俊足を見せた藤原によってチャンスを作った大阪桐蔭は、その後、一死満塁から大阪桐蔭 山田健太が高めに入ったストレートを逃さず、右中間へ二塁打を放ち、2点を先制する。山田はだいぶ対応力が高まり、走塁意識、セカンドの守備もだいぶ磨かれている。山田ほどのスケールがある二塁手はいないので、ドラフト候補として注目していい打者である。
その後も大阪桐蔭は、足を絡める。3回裏、四球で出塁した宮﨑 仁斗が一死二塁。4番根尾昂が四球を選んだところで、盗塁。さらに悪送球も絡んで3点目。その後、一、三塁から6番井坂太一の犠飛で4点目を入れ、その後、盗塁を絡め、5回裏には藤原がセカンド内野安打。普通の打者ならばアウトだが、藤原だからこそセーフになった当たり。さらに2番宮﨑が高めに入った直球を見逃すことなく、レフトフェンス直撃の三塁打。一塁の藤原は抜けた瞬間、本塁打を狙い、一気に生還。さらに、その後、中川卓也の犠飛、井坂太一の適時打、暴投で8対1と点差を広げた。
6回裏には、一死二、三塁から中川が左前安打。これも二塁走者・藤原が一気に生還。またも俊足を見せ観衆を驚かせたが、「ああいう当たりでも本塁へ生還できるよう日頃の練習からやってきました」と練習で積み重ねたことを試合でも発揮した藤原。この試合、3安打と、近畿大会では6安打を打っているが、「だんだん調子は取り戻してきているし、しっかりとフルスイングができている」という藤原。その受け答えはハキハキとしていて、表情もしっかりとしている。なかなか打てないと思い詰めた表情をしていた頃と比べるとまるで別人である。打精神的な要素が好調のきっかけになっているのかもしれない。
大石の内容は決して10点も取られる内容ではない。近畿大会ベスト8で、大阪桐蔭以外の6チームと対戦したら、そんなに失点しないと思わせるほどのボールを投げていた。日頃から対戦経験があり、球筋が見慣れているということもあるが、足を絡めての攻撃が素晴らしく、大石も、「打者に専念するのか、走者に専念するのか、中途半端になってしまった」というように大石の心理をついた攻撃が点差が大きく開く結果となった。
投げては横川凱が投入。西谷浩一監督によると、横川の方が近大付打線はタイミングが合わないとみて先発を決めた。横川は7回1失点の好投。だが試合後の表情を見ると、自分のピッチングには納得がいかない様子。初回に一死満塁のピンチを招いたり、自分の思うようなストレートを投げることができていないのが要因のようだ。西谷監督も、まだ潜在能力の半分も出せていないという。
「本当にストレートが全然ダメで、まだ上半身だけで投げてしまっています。下半身を意識して、それが連動できた形で投げれればいいのですが、まだそういう面で神経がいきわたっていないのかなと思います...」と悔しさをにじませた。
実際にストレートの最速は138キロ。常時130キロ~136キロと、1イニングに1球~2球は140キロを計時していた春の大会と比べると物足りなさを感じる。春の大会の後、横川はフォームのバランスを崩し、夏まで修正ができなかった。その後、コーチから指導を受け、制球力は取り戻したが、今度は打者に向かっていく気迫が足りないと指摘を受けている。気持ちの押し引き、コントロールを大事にしながらも、自分の思い通りのストレートを投げること。その両立は横川に限らず、誰でも難しい。横川は今、そこにもがきながら、日々の投球に向き合っている。だが、よかったのは、まだ公式戦の登板のチャンスがあること。そのことに横川はプラスにとらえていた。
これで選抜へ大きく前進した大阪桐蔭。その後の試合展開で、どんなプランニングで試合に臨むのか、注目をしていきたい。
(文=河嶋 宗一)
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