大手前高松vs高知追手前
高知追手前、「手を尽くした」プレー内。「賞賛すべき」プレー外
13回3分の2・238球を投げ切った高知追手前・岡林 倖生(2年)
果てしない死闘は3時間16分に及んだ。秋季四国大会での「延長14回」は2007年・第60回大会1回戦の富岡西vs香川西(現:四国学院大香川西)以来10年ぶり。しかも10年前のスコア「富岡西11対10香川西」に対し、今回は「大手前高松3×vs2高知追手前」。特に終盤、延長戦は緊迫感あふれる展開が続いた。
その主人公は両校の背番号「1」である。大手前高松の中村 公俊(2年・右投右打・174センチ74キロ・高松市立木太中出身)は6回裏から3番手登板し、最速136キロのストレートとチェンジアップ・フォーク・スライダーの縦変化を自在に使い分け、9イニングで125球を投げ3安打7奪三振3四死球で無失点。攻撃面では「中盤で同点にしてから、あと一本が出なかった」と評した山下 裕監督もこと中村にかんしては「よく投げてくれた」と賞賛した。
一方、敵将をして「中盤以降変化球が増えて、奥行きができた」と褒めた高知追手前左腕・岡林 倖生(2年・左投左打・170センチ63キロ・高知市立潮江中出身)は、ストレートは通常より5キロ遅い130キロ前半ながら、「ストレートを最初に意識させて7回からチェンジアップを混ぜた」女房役・中山 歩武(2年主将・捕手・右投右打・165センチ63キロ・日高村佐川町学校組合立加茂中出身)とのコンビも冴えた。最後は失策で力尽きたものの。実に238球を投じて自責点1に封じた粘りは見事というしなかい。
そして高知追手前・常廣 直樹監督の「確率を重視する」ベンチワークも力を尽くしていた。この試合では1番・山本 大輔(2年主将・右翼手・右投左打・176センチ75キロ・綾川町立綾南中出身)と4番・大西 立真(2年・投手兼三塁手・167センチ75キロ・高松市率太田中出身)を最大級に警戒し、極力ニアベースで打ち取る手法を選択。結果、9回裏から3イニングはすべて満塁とされ、岡林の四死球も11を数えたものの、14回までバック含めよく守り切った。
そしてこれだけは触れなくてはいけない。この試合でも高知追手前のプレー外の振る舞いは絶賛に値する。岡林は満塁のピンチを防いでもボールを優しくプレート際においてベンチへ全力疾走。14回裏二死二塁から失策で敗れた直後も、呆然とすることなく速やかに挨拶に並び、この日午後の授業を打ち切って大挙詰め掛けた2年生たちと共に整然と大手前高松の校歌を聴いた。プレー内で気持ちを込め、プレー外で心を配る。忘れられようとしている高校野球の原点を示し続ける彼らの一挙手一投足は、もっと多くの皆さんにみせる価値があるものだ。
初出場で1勝をあげた大手前高松。
「全国で戦えるレベルまで上げないといけない」と冬の課題を監督、主将共にあげた高知追手前。両校は死闘を通じて高みを見据えることの大事さを学び、次のステップへ進んでいく。
(レポート=寺下 友徳)
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