広陵vs大阪桐蔭
喜びは 瀬戸内を越え 広陵へ
胴上げされる中井監督(広陵)
2017年10月9日(日)16時48分。「第72回国民体育大会(愛顔つなぐえひめ国体)高等学校野球(硬式)競技会」ラスト11試合目となる決勝戦が終わりを告げると、3日間連続で9,000人以上が詰めかけた[stadium]松山中央公園野球場 (坊っちゃんスタジアム)[/stadium]の観衆からは期せずして万雷の拍手が鳴り響く。結果は7対4・広島広陵の初優勝で終わったものの、敗れた大阪桐蔭も等しく現時点での全力を出し合った素晴らしい決勝戦であった。
試合は中盤までは出入りの激しい展開だった。1回表・広島広陵が一死一・三塁から4番・加川 大樹(3年・左翼手)の右越2点三塁打で先制すると、大阪桐蔭は4回裏に今大会好調の7番・坂之下 晴人(3年・二塁手)が二死放った満塁走者一掃二塁打などで4対2と逆転。しかし広島広陵もすぐに4回表一死一・二塁から7番・高田 誠也(3年・右翼手)の左中間2点二塁打で逆転。5対4とした。
ここからは瀬戸内を渡り、大挙して[stadium]松山中央公園野球場 (坊っちゃんスタジアム)[/stadium]一塁側を埋めた広島広陵ファンの前で「KORYO」のユニフォームが躍動する。5回表は二死二・三塁から5番・佐藤 勇治の左前適時打、6回表は二死二塁から1番・大橋 昇輝(3年・一塁手)の右越適時三塁打で大阪桐蔭の絶対エース・侍ジャパンU-18代表の徳山 壮磨(3年)攻略に成功。7回表にも準決勝に続き登板した根尾 昂(2年)から失策などで一死三塁とすると、佐藤が抜け目なくセンターへ犠牲フライで7点目。相手失策3個と4盗塁をすべて得点につなげた攻撃は大阪桐蔭のお株を完全に奪っていた。
そしてなんといっても殊勲功は4回以降の6イニングを3安打無失点に抑えた広島広陵バッテリーである。チェンジアップとスライダーを低めに集め続けた左腕・山本 雅也(3年)もさることながら、「WBSC U-18ワールドカップでアメリカの捕手から打たれたボールを次にどう使うかを学んだ」中村 奨成(3年)の配球は秀逸の域。
「完敗です。いい投手なのはわかっていたが、打席に入ったら打ちにくかった」と中村当人も話した打撃が徳山からの二打席連続三振含む5打数1安打に終わっても、守備面で高品質を維持した辺りは、プロで活躍する必須条件となる「安定したリード」へのたたき台に必ずなるはずだ。
これで1991・2003年に制したセンバツ以来、14年の時を越え全国大会2つめのタイトルを手にした広島広陵。そして中井 哲之監督はTVインタビューで選手たちへの言葉を問われ、空に向かってこう叫んだ。「やればできる!」
その声は瀬戸内を越え、広島の地へ渡り、さらなる歴史へ。たとえ栄光の印が表彰状1枚であっても、彼らの心に刻まれた喜びは、深紅の優勝旗と同じくらい尊く、重い。
(文=寺下 友徳)
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