済美vs松山商
済美「最終奥義発動」で松山商をうっちゃる!
8回裏済美二死二塁から4番・池内 優一(2年・右翼手)が決勝中前打
まるで「最後の夏」を思わせるような壮絶な戦いだった。
先制パンチを浴びせたのは松山商。シートノックから明らかに気持ちを込め、足を動かしていた勢いのまま1回表に入った彼らは、中前打で出塁した1番・桧垣 翔(2年主将・二塁手・162センチ57キロ・右投左打・愛媛松山ボーイズ出身)を一塁に置き、3番・佐藤 勇斗(1年・一塁手・180センチ80キロ・右投左打・えひめ西リトルシニア出身)がライト線に落とす適時二塁打で先制。その佐藤は続く4番・山内 敬太(2年・捕手・177センチ75キロ・右投右打・松山市立南第二中出身)が振り逃げ、捕手がボールを見失う間に一気にホームまで帰って2点目のホームを踏んだ。
その裏、済美は一死一塁から3番・中井 雄也(2年・二塁手・171センチ65キロ・右投右打・五條市立五条東中<奈良>出身)が左中間を完全に破る二塁打で1点を返すが、その後は「状態がいいので先発で起用した」(重澤 和史監督)松山商右腕・入川 翔(2年・175センチ73キロ・右投右打・今治中央ボーイズ出身)がツーシーム気味のボールを有効に配して済美打線に的を絞らせず。3回表に佐藤、山内の連続二塁打で1点を追加した松山商は、中盤まで完全に試合の流れを掌握していた。
しかし、終盤になると夏の甲子園2勝の済美が一気に牙をむく。7回裏に一死三塁とするとここで2番手マウンドに立った松山商2番手・奥野 慎也(2年・173センチ72キロ・右投右打・松山市立三津浜中出身)に対し、3回以降は無失点を続けていた7番・山口 直哉(2年・投手・169センチ65キロ・右投左打・南あわじ市立三原中<兵庫>出身)が遊撃ゴロを打ってまず1点。
1点差とした8回裏も済美は二死から粘る。2番・矢野 功一朗(2年・遊撃手・171センチ65キロ・右投左打・西条少年野球団<現:西条ボーイズ>出身)と3番・中井の連打で一、三塁。そして4番・池内 優一(2年主将・右翼手・180センチ81キロ・右投右打・今治中央ボーイズ出身)がノーボール1ストライクとなった時、済美・中矢 太監督は甲子園ベンチ入りの3名の理解度を観越した「最終奥義」を発動する。
「一塁ランナーに『挟まれろ』というサインを出しました」
予定通り挟まれる中井。投球はストライクとなり、すぐに捕手からのボールを受けた奥野は中井を追い込み、挟殺プレーに移行。しかし、済美はその瞬間を狙っていた。背中を向けた瞬間、矢野は猛然とホームへ。タイミングは間一髪。が、最後は矢野の脚が勝った(記録はダブルスチール成功)。
そして、池内は6球目を中前適時打。相手のスキを突く愛媛野球の真骨頂、現代風に言えば「機動破壊」で済美がこの試合はじめてリードを奪う。
ただ、松山商もこのままでは終わらなかった。「しょげるな!」と檄を飛ばした指揮官にすぐさま反応し、6番・入川、代打・谷 怜哉(1年・左翼手・172センチ63キロ・右投左打・愛媛ラディアンツ<ヤングリーグ>出身)の連打などで無死二、三塁とチャンスメイク。最後は攻め手を欠き済美に勝ちを許したが、終始衰えなかった気迫は高い評価を与えられる。
すすり泣きながら球場を後にした松山商の選手たち。対してわずかなかがらの安堵感を漂わせながらも、県大会へ引き締まった表情を見せた済美の選手たち。この試合における切磋琢磨は必ず両校の糧になるはずだし、そうしなければいけない。
(レポート=寺下 友徳)
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