大阪桐蔭vs米子松蔭
2年生主体の大阪桐蔭、初戦から強さを発揮!
前評判通り、大阪桐蔭が強さを遺憾(いかん)なく発揮した試合だった。まず度肝を抜いたのが1回裏に放った福井 章吾(3年)のライトへのホームラン。このとき風は強くライトからレフト方向に吹いていた。その逆風を突いて高々とした放物線を描いてライトスタンドに飛び込んだ。この一打だけで、この試合の行方が見えた感じがした。
2回には5番大阪桐蔭山田健太(2年)の内野安打に続いて6番根尾 昂(2年)が左中間に二塁打を放って2点目。4回には9番徳山 壮磨(3年)のタイムリー、5回には4番山本ダンテ武蔵(3年)のタイムリーと相手投手の暴投で2点、6回には四球と二盗を絡めた攻撃を展開ノーヒットで1点、7回には山本、根尾の二塁打などで2点を加えた。
私は初戦がすべて終了してから、大阪桐蔭からはここまでに名前が出た福井、山本、山田、根尾、無安打だったが俊足とシートノックでの強肩が印象的だった藤原 恭大(2年)を加えた野手5人、そして投手では徳山とリリーフした柿木 蓮(2年)を紹介するつもりだ。
前日、木更津総合、花咲徳栄のシートノックを超高校級と激賞したが、この10年くらいのスパンで言えば大阪桐蔭のシートノックはナンバーワンである。そして米子松蔭戦前のシートノックを見て、やはり大阪桐蔭が一枚上だと思った。投げるボールの強さが少し上だと感じたのだ。それは練習量の豊富さと、練度の高さを物語っている。7回に外野手のエラーで1点を失ったが、内野手の緻密な動き、外野手の肩の強さ、捕手・福井の肩の強さや投手の特徴を生かしたリードなど、他校では見られない総合力の高さに圧倒された。
投手陣では徳山が見事だった。ストレートの最速は144キロだからたとえば、外野が専門の万波 中正(横浜2年)の146キロより遅いが、総合力で比較すれば問題にならないくらい徳山のほうが高い。コントロールだけ見ても、この日のゲームで3ボールになったことは一度もなく、2ボールでさえ2回しかない。
ストレートは徹底して低めに集め、横変化のスライダーは打者近くで大きく変化するという超高校級の球筋で、ここに小さく落ちるフォークボールらしく球が加わり、打者を圧倒する。球持ちの長さや体の開きがないフォームというと私は杉内 俊哉(巨人)を思い出す。139キロの球が左打者の外角低めに決まり、打者が見送る姿を見て、これは杉内のストレートと同じ球だと確信した。最後まで体の開きを我慢してボールの出所を見せず、長くボールを持てば打者がピクリとも身動きできないストレートを投げられるということがわかる。
2番手の柿木 蓮(2年)は徳山にくらべると荒々しく、未完成さは否めないが、その荒々しさが欠点に感じられず長所に見える。ストレートの最速は147キロを計測。速さだけでなく、体全体で押さえ込むように投じられる球は徳山よりボリューム感がある。この柿木を含めて左腕の横川凱、野手は藤原、中川卓也、山田、根尾の4人が2年生。これほどの強さと練度を誇りながら実は今年の大阪桐蔭は2年生主体のチーム。来年のことを考えると恐ろしい。
(文=小関 順二)
注目記事
・第99回全国高等学校野球選手権大会 特設ページ