試合レポート

東海大相模vs作新学院

2017.05.23

アグレッシブベースボールを思い出せ!東海大相模がサヨナラ勝ち!

東海大相模vs作新学院 | 高校野球ドットコム
終盤まで好投を見せた大関秀太郎(作新学院)

 決勝進出をかけた関東大会準決勝第2試合は投手戦でスタートした。

 東海大相模の先発は斎藤礼二。ひたちなかで142キロを計測した2年生右腕だ。2000年選抜優勝のエース・筑川力希也を思い出させる投手。どこか筑川に似ているのかというと、それほど上背がなくても、下半身主導の投球フォームから高スピンのストレートを投げ込むところと、スライダー、フォーク、カーブと3球種を揃え、押し、引きのピッチングができるところである。まだ球速は135キロ前後だが、フォームの土台が良いので、3年生になって常時140キロ台をたたき出す可能性を秘めている。

 作新学院の先発はエース・大関秀太郎が先発。かなり久々に登板した大関。今年の作新学院の選手の中では最も成長した選手ではないだろうか。秋は125キロ前後と目立つような投手ではなかった。だが、この試合でマウンドに立った大関は、関東地区屈指の技巧派左腕と推せるほどの素晴らしい投手へ成長していた。

 始動からフィニッシュまでの一連の動作に無駄がなく、左スリークォーター気味に腕を振る投手だが、球持ちが実に良い。ストレートは130キロ~136キロのストレートは球速表示以上を感じさせる素晴らしい球質。さらに開きが遅いので、差し込まれる当たりが多くなる。そして変化球の切れ味も絶品で、120キロ~125キロ前後のスライダー、110キロ前後のチェンジアップ、110キロ前後のカーブがコーナーぎりぎりに決まる。そのため投球の引き出しが多く、バリエーションが多い。的を絞らせにくいピッチングができていた。

 そしてテンポも良く、前半は東海大相模打線の積極性が影を潜め、受け身のバッティングになっていたといえば、どれだけ大関のピッチングが凄かったのかが理解できるだろう。

 作新学院は2回表、石戸智也の適時打、6回表には押し出し死球に加え、大関自ら二塁打を打ち、4対0と点差を広げ、作新学院が試合を優位に進めた。しかし東海大相模が一歩踏み留まることができたのは、3番手の安里海の投球が非常に大きかった。


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同点打を打った本間巧真(東海大相模)

 この日の安里は県大会とはまるで別人のピッチングだった。県大会の安里は常時130キロ中盤で最速136キロ程度。しかし今日は常時140キロ・最速142キロを連発し、140キロ以上は15球を計測していた。約1か月でアベレージのスピードが5キロもアップする投手はそうそういない。安里はアベレージで140キロを出したいと語っていたが、見事にそれが実現。新しい領域に踏み出すことができたのだ。さらに安里は左サイド。左サイドにしたのは、昨秋の大会後からだという。

 この関東大会にして、フォームが固まり、自分のリリースポイントを掴んだのだ。さらに125キロ前後のスライダーの切れ味も良く、作新学院打線をしっかりと抑える。

 今年のドラフト戦線で、左サイドで常時140キロ台を出せる高校生はいない。1年生の時から登板するなど期待が高かった大型左腕。ようやく頭角を現し、今後に期待が持てる内容を残してくれた。

 門馬監督は春季県大会決勝で、横浜に一時は11対2と9点差をつけながらも、14対13まで追い詰められたことを例に出し、「横浜が9点差から1点差にできるのだから、俺らも4点差を逆転できる」と発破をかけた。門馬監督の言葉に選手たちは奮起し、チームのウリであるアグレッシブベースボールを発揮する。8回裏、小松勇輝の適時打で1点を返すと、9回裏、一死から4番森下翔太が二塁打を打ち、5番門馬大の死球で一死一、二塁のチャンスを作ると、6番喜友名秋幸が右中間を破る適時三塁打で、1点差に迫ると二死三塁から代打の本間巧真(1年)が打席に立つ。本間は「アグレッシブベースボールですから初球からどんどん振っていこうと思いました」
初球からフルスイングで空振り。そして4球目を振り抜き、二塁内野安打。見事に同点に追いつく。試合は延長戦となり、タイブレークとなった。10回表を無失点に抑えると、先頭の4番森下が「技術どうこうではなく、この打席は気持ちで入りました。それがなければ打つことができない」と気合を込めて打席に立った。そして粘りに粘って8球目だった。チェンジアップを振り抜き、打球はレフトのグラブの横を抜ける適時二塁打に。サヨナラ勝ちで決勝進出を決めた。

 テンポの良い投手戦から一転して手に汗握る接戦を制した東海大相模。一戦ごとにたくましくなっている選手たちは土壇場で自分たちの持ち味を発揮できるようになった。決勝戦で浦和学院と対戦。初の春の関東大会優勝を目指す。

(取材・写真=河嶋宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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