日大三vs都立日野
日大三6年ぶりの決勝進出!櫻井、7回を奪三振10
4番・比留間(日大三)
桜美林大学の佐々木 千隼(都立日野出身)が都立校出身としては初めてのドラフト1位で千葉ロッテに指名され、改めて注目される都立日野であるが、佐々木の時も夏の西東京大会の準々決勝で日大三に敗れ、3年前に西東京大会の決勝戦に進出した時も日大三に敗れた。都立日野が全国の舞台に立とうとする時、いつもその前に立ちふさがったのが、日大三であった。今の選手たちは子供の時に、佐々木投手の活躍や、西東京大会の準優勝をみて、都立日野に入った生徒たちで、この大会では準々決勝でこの夏の西東京大会優勝校である八王子をコールドで破るなど、レベルも高い。しかし、その彼らにとっても、日大三の壁を崩すのは容易ではなかった。
前の試合で早稲田実業の清宮 幸太郎が登場し、その熱気が残るスタンドは、いつもと違う雰囲気があった。しかもどうしても甲子園を意識してしまう準決勝。都立日野の嶋田 雅之監督は、試合前のノックの時から選手たちに、いつもと違う緊張を感じていた。
日大三の先発は、スライダーの切れ味鋭い、東京のドクターKである櫻井 周斗。櫻井は早速1回表に、奪三振2を記録する。
一方都立日野は158センチの小柄ながら健闘し、この大会を盛り上げた存在でもある小林 龍太が先発した。初回は無失点で抑えたものの、2回裏にこの回先頭の5番日置 航の中前安打に続き、この日スタメン復帰の身長193センチの巨漢・金成 麗生のライト線への二塁打で、日大三がまず1点を先制する。
さらに4回裏は、四球の金成が二塁に進み、9番津原 瑠斗の三ゴロを一塁手が捕球ミスするという、都立日野らしからぬタイムリーエラーで1点を献上する。
5回裏には2番長谷川 央都の二塁打、3番櫻井の四球などにより一死一三塁の場面で、6番日置の遊ゴロは、本塁で刺した。しかし続く金成は大ファールを打ち、長打のにおいがしてきた。都立日野のエース・小林は、「これ以上点を与えたくなかったと」思って投げた5球目を叩き、金成はライトへの特大の3ランを放った。「内に入った球が甘くなった。あの一発が痛かった」と都立日野の嶋田監督が語るように、勝負を決する、一発だった。日大三・小倉 全由監督期待の大型選手が、ようやく本領を発揮し始めた。
小林(都立日野)
6回裏には、3四球で満塁となり、櫻井の内野ゴロと、4番比留間 海斗の中前安打で日大三は2点を加え、7点差とした。
投げては日大三の櫻井のスライダーがキレまくり、都立日野の選手がベンチで「すごい、すごい」と言っているような状況だった。これでは攻略は難しく、櫻井は7回を投げて被安打2、奪三振10の快投であった。結局7対0の7回コールドで日大三が勝利し、秋季都大会では6年ぶりに決勝進出を決めた。
それにしても都立日野にとって日大三は天敵のように、立ちふさがる。この大会、「小林は十分頑張った」というように、小林の好投は、大会全体を盛り上げた。けれども、「このままでは上位校に歯が立たない」と嶋田監督は実感する。相手の櫻井投手に対しても、「あれくらいの投手を打てるようにならないと」と嶋田監督。全国の舞台に立つには、避けて通ることができない相手だけに、嶋田監督の表情も厳しい。好投してきた小林も、「精神力と球威、制球力を磨きたい。打倒三高です」と言う。秋のこの段階で、強豪と対戦できたことは、高い目的意識を持つうえでは貴重であった。
一方日大三は秋季都大会としては6年ぶりの決勝進出。宿命のライバルともいうべき、早稲田実業と対戦する。この試合、怪物清宮と、スライダーがキレる櫻井との対戦など楽しみな対決もある。ともかく東京を代表する伝統校同士の試合である。秋季都大会としてだけでなく、この1年の東京の公式戦のフィナーレを飾る好ゲームを期待したい。
(文・写真=大島裕史)
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