試合レポート

関東一vs東海大菅生

2016.10.24

主将・高橋4安打完封!関東一、東海大菅生を破り8強進出

関東一vs東海大菅生 | 高校野球ドットコム

高橋(関東一)

 秋季都大会で昨年優勝した関東一一昨年優勝東海大菅生という、東京の高校球界を代表する強豪が3回戦で早くも激突。神宮第2球場はほぼ満員の観客で埋まった。

 関東一は主将でエースの高橋 晴が先発したのに対し、東海大菅生は、背番号8の戸田 懐生が先発した。「もともとエース格なのですが、まず度胸。試合を作れることですね」と、東海大菅生の若林 弘泰監督は、戸田の先発の理由を明かす。しかし戸田の立ち上がりは、「あんなに悪いのは、初めてです」と、若林監督が驚くような出来だった。

 1回表関東一は1番斎藤 未来也、2番早坂 秀太が連続四球。3番溝渕 龍之介の犠打を挟み、4番立崎 由祐が四球で満塁になる。そこで5番石橋 康太が中飛。俊足の斎藤が還り、関東一が1点を先制する。それでも、初回は1点止まりだったのは、東海大菅生としては上出来と言っていい。

 2回表も関東一は二死満塁のチャンスを迎えるが、この回は無得点。4回表には高橋の二塁打などで二死一、三塁のチャンスを作るものの得点ができない。さらに関東一は、3回表と5回表に二盗を試みたが、東海大菅生の捕手・鹿倉 凛多朗に刺される。俊足揃いの関東一が1試合で2度刺されるのは珍しい。「鹿倉は送球がいい。捕ってからが速いですね」と、東海大菅生の若林監督。 

 ピンチを乗り切っているうちに、東海大菅生の戸田にも、本来のボールのキレが出て来た。

 このように、再三得点機を得ながら1点止まりという重苦しい展開は、普通のチームであれば、プレッシャーがかかってくるものだ。しかし関東一の米澤 貴光監督は、「秋はお互い様というところもありますからね。今日は我慢ができました」と語り、動じていない。

 チームが冷静さを保てるのも、主将でエースの高橋の投球が安定しているからだ。1回裏は東海大菅生の3番松井 惇の二塁打と4番成田 優斗の四球で二死一、二塁のピンチを招いたが、5番奥村 治は右飛に抑える。高橋は奪三振4と多くはないが、目立つのはフライアウトの多さだ。

 「9回投げることを考え、6、7割の力で投げて、ここぞという時はMAXで投げるようにしています」と言う高橋は、「仲間を信じて、チームが勝てる投球を心掛けました」とも語る。主将らしく、独り相撲にならず、バックを信頼して打たせて取る投球だ。


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戸田(東海大菅生)

 追加点が取れなかった関東一であるが、7回表に2点を追加する。この回一死後、1番斎藤は中前安打を放つと、一気に二塁に進んだ。中堅手がボール処理に手間取ったことはあったが、なかなか二塁まで進まないタイミングであったが、斎藤の足の速さが光った一打だった。さらに2番早坂の左前安打で、斎藤は一気に生還する。これも、レフトへの浅いゴロであったが、俊足の斎藤ならではホームインであった。

 さらに関東一は盗塁に2度失敗しているにもかかわらず、早坂は果敢に二盗し、成功する。その後3番溝渕の二ゴロで三塁に進み、5番石橋は二塁手の手前でバウンドが変わる打球を放ち(記録は内野安打)、早坂が生還し、貴重な3点目を挙げた。

 後は高橋が危なげのない投球で関東一を抑える。力をセーブした投球が功を奏し、終わってみれば球数は108。被安打4の完封であった。

 力でねじ伏せられたわけではないので、東海大菅生の若林監督は、「勝てない相手ではなかったと思います」と語る。それでもなかなか勝てないのが、関東一の強さである。次はいよいよ早稲田実業との対戦である。公式戦で対戦するのは、昨年の春季大会の準々決勝以来となる。しかし今年の4月に練習試合を行い、高橋は清宮 幸太郎に本塁打を2本打たれたという。「意識する部分はあります。でも清宮君だけに集中するわけにはいきません」と語る高橋は、早稲田実業戦でも、チームが勝つための投球を心掛ける。米澤監督は清宮について、「あれほどのバッターはいませんから。選手の気持ちを考えたら、勝負したいし、何とか試合に勝ちたい」と語り、闘志をのぞかせる。29日の準々決勝は、優勝の行方を左右する、大一番になりそうだ。

 一方敗れた東海大菅生であるが、先発し、途中から立ち直った戸田をはじめ、途中登板の山内 大輔小玉 佳吾、2回戦で投げた松本 健吾など、投手陣の充実ぶりは、東京ではトップクラスだ。若林監督も「手応えは感じています」と語る。後は打線を中心としたチーム全体の底上げがどこまで図れるかである。3回戦で敗れたとはいえ、都内屈指の強豪であることは間違いない。

(文=大島裕史

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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