新田vs松山北
新田「育てながら勝つ」で松山北との激戦制す!
新田先発の藤 友暉(2年主将)
「プレッシャーがかかった中で感じたことを大事にしてほしいですね」。中予地区新人戦で3対4と敗れた松山北相手にリベンジを果たし、県大会出場を決めた試合後。新田・岡田 茂雄監督は静かに語り出す。
主将にも就任したエース・藤 友暉(2年・右投右打・178センチ68キロ・松山市立余土中出身)をはじめ夏の愛媛大会準優勝を果たしたレギュラーの半数が残った新チームにとってあまりに厳しい船出。ただ、新田にとってはチームの持ち味である「向かっていく」を思い出すには格好の機会となった。
続く花咲徳栄ら関東の強豪とあいまみえた夏の遠征では「工藤(耀介・2年・右翼手・左投左打・171センチ71キロ・松山ボーイズ出身)、古和田 (仁・2年・捕手・右投右打・松山中央ボーイズ出身)、黒川 (貴章・2年・三塁手・178センチ78キロ・右投右打・愛媛ボーイズ出身)の3人は145キロのストレートでも弾き返せる」(岡田監督)手ごたえを得ながら「引いたら負ける」意識を徹底。
「3か月で体重が10キロ増えた」パワー強化が実り、現在は右方向含めた高校通算14本塁打。この試合でも1回裏一死三塁から遊撃手のグラブを弾き飛ばす強烈な先制打と3回裏二死から懐の深さから繰り出すスイングでの左翼線二塁打につなげ、今季の四国高校野球界をけん引する右打者であることを改めて示した黒川の打撃は、その好例であろう。
松山北先発・サイドハンドの玉井 稜二(2年)
かつ新田は新戦力の育成にも余念がない。その代表格は7回裏二死満塁から二塁横をしぶとく破る2点決勝打を叩き出した5番の森 将大(1年・一塁手・右投右打・177センチ93キロ・愛媛松山ボーイズ出身)である。
「受け身になっている」と見た指揮官は、フルカウントまでバットを振らず二ゴロに終わった2打席目の後、森を呼んで積極性を求めた。結果、「勢いをもって振ろうとした」打球はバットの先でも貴重な決勝打に。「結果が出てよかった」。これには岡田監督も森自身も安堵の表情だった。
ただ、新田の進む道は県大会出場ではもちろんない。「昨年は四国大会2回戦で明徳義塾に負けているので、今年は県で勝ち、四国でも勝ってセンバツに行く」(黒川)。強みの打撃に関東遠征を通じ、差を感じたディフェンス力を高め、彼らは12年ぶりのセンバツを狙う。
最後に松山北についても触れたい。投げてはサイドハンドから内外角低めを突き、8回表・追撃の適時打含む2安打と打撃にも力がある3番・玉井 稜二(2年・投手兼二塁手・173センチ65キロ・松山ボーイズ出身)や、4回には二塁打も放ったパワフルな打撃と強肩が光る4番・児玉 駿太(2年・右翼手・176センチ72キロ・松山市立内宮中出身)など、個々の力は新田にも決して劣っていないことが、この試合でも十二分にうかがえた。
あとはこの冬、進学校ゆえの練習時間が限られる中でいかに自分と向き合えるか。その過程がすべて成功した暁には1931年(北予中時代)・1987年の2度のセンバツ出場以来となる初の夏甲子園出場が実現しても、決して不思議ではない。
(文=寺下友徳)
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