秀岳館vs常葉菊川
秀岳館、常葉菊川共に見逃し率15パーセント以下の好球必打!
初戦同士では最も好ゲームが期待された試合はその通りに白熱した。私が「ノーガードの打ち合い」と言うと、隣のスポーツライター氏から「しっかり守っているのでノーガードではありません」と訂正が入った。その通りで、両校のキャッチャー、ショートがとくに素晴らしい守りを見せた。
キャッチャーは常葉菊川が米澤 利紀(3年)、秀岳館が九鬼 隆平(3年)で、二盗阻止が目的の二塁送球タイム(イニング間)は米澤が最速1.95秒、九鬼が1.85秒と超高校級の迫力。とくに九鬼の強肩は破格で、1回にはヒットで出塁した3番の二盗を阻止。このときのタイムが2.08秒と上々だった。この回以降、常葉菊川は走者が出ても走れず、5回と7回には二遊間が絡んだ併殺を記録しているので、九鬼の強肩が常葉菊川の作戦を1つ抹消したと言っていい。
肩だけではなくリードも攻撃的で、守っているのに常葉菊川を攻撃しているような錯覚さえ覚えたほどだ。とくに効果的だったのがチャンスメーカーであり得点源でもある1番栗原 健(3年)への攻め。栗原はバットをしゃくり上げるアッパースイングばかり話題になるが、ボールに向かっていく攻撃的スタイルに特徴がある。
その栗原に対して九鬼は内角に構えることが多かった。第1打席でショートゴロに打ち取っているが、フルスイングを許さない厳しいコースに配球されたもので、打った瞬間栗原は驚いたような、怯んだようなアクションをとった。6回には9番山本 雄大(3年)にレフトスタンドに撃ち込まれているが、攻めの配球なので一発は仕方がないと思う。
攻撃陣では両校とも好球必打が目立った。「全投球に占めるストライクの見逃しの割合」いわゆる見逃し率はともに15パーセント以下。高校野球では20パーセント以上も珍しくないので、両校の積極的なバッティングは評価していい。
当然、バントは少ない。常葉菊川0個、秀岳館1個という結果を「淡泊」と見るか「攻撃的」見るかで野球観はまったく変わってくる。私はもちろん後者である。
1対1の均衡を破ったのはホームランだ。7回裏、先頭打者の6番廣部 就平(3年)の放った打球は[stadium]甲子園[/stadium]特有の浜風にも乗ってレフトスタンドに飛び込むソロホームラン。これを合図にしたように7番以降がヒットと四球で出塁し、2番松尾大河(3年)が左中間を破る二塁打を放って2人の走者を迎え入れ、試合を決定的にした。
(文=小関順二)
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