中越vs新潟明訓
ここぞの見事な集中力! 中越連覇達成!!
86チームが目指してきた優勝の栄冠。
その挑戦権を得たのは、第1シードとして安定した強さで勝ち上がってきた新潟明訓。
そして、第6シードながら、強豪校を次々と打ち敗り、勝ち上がってきた昨年の代表校・中越のわずか2校。
前日に行われた準決勝の余韻が残る[stadium]HARD OFF ECOスタジアム新潟[/stadium]は、13時の試合開始を前に、開門の10時から多くの人が詰めかけ、試合開始時には、内野席は1階、2階ともほぼ満員。この夏イチと言った前日を超える強い日差しが降り注ぎ、体感温度を上げる中、注目の1戦はプレイボールを迎えた。
新潟明訓の先発は、準決勝で好リリーフをみせたエース・廣田祥一朗(3年)。
その立ち上がり、中越の1番、2番を連続三振にきってとる上々の立ち上がり。だが、3番・坂井琢真(2年)に四球を与えると、4番・西山侑汰(3年)にライト前に運ばれ、二死一、三塁のピンチを迎える。だが、廣田は落ち着いて5番・串田大地(3年)を打ち取り、先制点を許さない。
一方、中越先発のエース・今村豪(3年)も落ち着いた投球で初回を三者凡退に抑える上々の立ち上がり。試合が動いたのは、三回表、中越はヒットで出塁した齋藤隆弥(3年)を二塁に置いて、3番・坂井がレフトオーバーのツーベース。
齋藤隆が生還し、先制する。だがその裏、新潟明訓もすかさず反撃。先頭の8番・高橋昇真(3年)がライトオーバーのスリーベースで出塁すると、続く9番・廣田がきっちり犠牲フライ。1対1とすぐに同点に追いつく。
その後も両チームランナーは出るものの、両エースの奮投の前に、なかなか得点を上げられない。膠着状態のまま迎えた六回裏、この回先頭の4番・秋葉悠(3年)がヒットで出塁すると、5番・大崎海渡(3年)も初球ををたたき、ライト線をやぶる長打を放つ。三塁コーチャーの制止を振りきって、本塁を狙った秋葉が生還し、待望の勝ち越し点が新潟明訓に。
中越は好投していた今村に代え、澤中京太郎(2年)をマウンドへ送り、後続を打ち取る。
すると直後の七回表、眠っていた中越打線が疲れの見える新潟明訓・廣田に襲いかかる。この回先頭の9番・岡田拓磨(3年)がセカンド後方、センターとライトの間に落ちるポテンヒットで出塁すると、送りバントを決めて一死二塁。さらぶ四球と内野安打で一死満塁とチャンスを広げる。
ここで4番・西山が三遊間を破るレフト前ヒットでまず同点。
続くピッチャー・澤中がスクイズを敢行すると、新潟明訓・廣田は処理を焦り、オールセーフで3対2と勝ち越し。さらに続く6番・坂上顕士(3年)も一塁とセカンドの間へプッシュバントを決め、自身も生きる内野安打となり4対2。中越打線の勢いは止まらない。なおも満塁のチャンスで、途中からレフトの守備についた今村が右中間を破る走者一掃のタイムリーツーベースを放ち、3点を追加。
さらにこの後、代わった新潟明訓2番手・高津大嗣(3年)も攻め、9番・岡田のスクイズで1点追加。この回一挙7点をあげ、8対2と逆転に成功する。
さらに八回にも、新潟明訓3番手の大藪祐司(3年)を攻め、二死二、三塁から6番・坂上がショートの頭を越える2点タイムリーを放ち、10対2。
投げては、中越2番手の澤中が好リリーフ。
最終回、新潟明訓はヒット2本で二死一、二塁のチャンスを迎えるが、最後は代打・後藤平生(3年)が空振り三振に倒れ、ゲームセット。中越が2年連続10回目の優勝を果たした。
(文=町井 敬史)
エキサイティングチーム 新潟明訓
雌雄はまもなく決しようとしていた。
八回を終わって2対10。何が起こるか分からないと言われている高校野球でも、逆転は難しいスコア。観客の誰もがそう思っていた。
だが、新潟明訓ナインは当然のように、誰一人諦めていなかった。
前のイニング失点してしまった3番手・大藪が九回は気迫のピッチングで三者凡退に抑えリズムを作ると、最終回の攻撃を前に、選手はベンチ前で円陣を組んだ。主将の栗山謙(3年)を中心に、九回の攻撃に向けて気合を入れる。
だが、その輪に入らない選手がいた。 ブルペンで投球練習をしていたのは背番号18、梶山駿介(3年)。昨年のチームでは2年生ながら背番号1を背負い、エースとして活躍。県内有数の左腕として騒がれたののだが、その後のケガで今春はベンチ外。今夏はベンチ入りし、3回戦の三条商戦で登板したものの、思うような結果が残せなかった。
この日もブルペンでは思うような球がいかなかったのか、時折首をかしげながらも黙々と延長戦に備えて肩を作っていた。
九回裏、新潟明訓の攻撃が始まると、その梶山のいるブルペンと金網を挟んでグラウンド側でキャッチボールを始める選手がいた。背番号10、富田秀紀(3年)だった。セカンドの控えである富田が九回の初めから身体を動かしていたのか、当初分からなかった。
だが、8番・高橋、1番・部田隼平(2年)が執念とも言えるヒットで出塁したことによって、この謎は解決した。2番・伊藤新(2年)に代えて、代打・後藤。つまり、「2番まで回ったら代打を出すぞ」という指示があり、その後延長になってもすぐ試合に入れるようにと、富田は入念なアップを行っていたのだ。
もしかしたら出番はないのかもしれない。そんな思いを払拭し、ナインを信じて準備を続けてきた梶山と富田。
レギュラーではない選手がこうした心持ちで試合に臨めていることが、新潟明訓の最大の強さなのだと思う。
試合には惜しくも敗れてしまったが、最後までせいいっぱい、ベンチいや、応援団も含めて、学校が一丸となって戦った新潟明訓に心から拍手を送りたい。
中越
下馬評は高くなかった。
タレントがそろっていた昨年の優勝地チームと比較すると、どうしても一回り小さく感じてしまう今年のチーム。
だが、蓋を開けてみれば、2桁得点の試合が3試合。その一方で3点差以内の接戦も3試合あるなど、打線の破壊力だけではない勝負強さが際立った。 勝因の1つに挙げられるのは、ここぞの場面での「集中力」だろう。
大きなヤマと見られていた4回戦の第2シード・北越との試合では、コントロールの定まらない相手投手陣をじっくり攻め、四球で出たランナーを好球必打のヒットで返し、1イニング12点。
準々決勝では、好投手、バンゴーゼム ゲレック 高(3年)の立ち上がりを攻め、初回に5得点。そして決勝では、疲れの見えた相手エースを七回にとらえ、一挙7得点。しかも単純に打ってランナーを返すだけではなく、時には重盗を仕掛けたり、わざと塁間にランナーを挟ませ、挟殺プレーの間にホームを狙ったり、プッシュバントで相手内野陣を混乱させたりと、攻撃のバリエーションが実に多彩。
春の大会、北越に完封で負けた後、このままではいけないと約2カ月間、必死に取り組んできたことが実を結んだのだろう。
混戦と言われた今年の新潟大会を制した自信を胸に、新潟県代表として2年連続で聖地・甲子園に乗り込む。
昨年は惜しくも緒戦で敗れてしまっただけに、先輩たちの思いも胸に、まず1勝。新潟大会で見せたこの強さを、甲子園でもぜひ発揮して欲しい。
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