千葉黎明vs成田
技術、体力、精神も逞しくなった千葉黎明が2000年以来の関東大会出場!
鈴木凌賀(成田)
準決勝第2試合は成田・鈴木凌賀(3年)、千葉黎明・川口廉の両エースの投げ合いは、とても白熱したものとなり、思わず息をのむような試合となった。とても春の大会とは思えない夏の試合を見ているのかのような緊張感があった。
鈴木凌は、好調。ステップ幅が狭く、コンパクトにテークバックを取っていきながら、一気に腕を振り出すフォームは斎藤佑樹に近いメカニズムで、球速は、135キロ~138キロほどだが、なかなか球威があり、千葉黎明打線を押すことができていた。ストレートの伸びは絶品で、しっかりとストレートで押すことができていた。
1年秋は出ても、130キロだった鈴木が、ここまでの成長。だいぶ上のステージを意識できるレベルまでになってきた。成田は伝統的に右の好投手を育成しているが、彼は強豪大学でプレーできるレベルになってきたかもしれない。
川口も好投。今まで見た中では最も良かったのではないかと思わせる出来だった。球速は、135キロ前後(最速136キロ)。だが、球速表示以上に勢いを感じさせ、外角へズシット決まるストレートは実に勢いがある。このストレートがあることで、120キロ近いスライダーが効果的となった。川口のスライダーは打者の手元で急激に変化する曲りを見せるので、ここまで強打を発揮してきた成田打線もなかなか対応ができなかった。それにしても昨秋からだいぶ良くなった。2つ要因があって、まずは細かった体型にだいぶ逞しさが出てきたこと。そして投球フォームも左腕のグラブが逃げて、そして前膝が突っ張った状態で投げてしまうなど、投球フォームに悪循環が見られ出ても130キロ前半だった。
そこからだいぶフォームの見直しを行ってきたのだろう。左腕の動きを見るとグラブを抱えるようにしたり、上手く半身の状態から壁を作ってから、腕を振り出すようになり、以前よりも、体全体を使って投げる意識が出てきた。まだまだ球離れがが早くなったりすることはあるものの、テイクバックに入ってからリリースに入るまでの流れ、そして体重移動の動きは昨秋よりも良くなった。その結果、135キロ戦後でも生きたボールを投げることができていたのだ。
本当に一冬、変わるつもりで取り組んできたのが伺えた。
完投勝利の川口廉(千葉黎明)
その川口を援護しようと、打線は5回表、先頭の根本昌哉(3年)の左前安打、6番小林洋亮(3年)の左前安打で無死一、二塁のチャンスを作り、8番谷 祐樹(3年)の犠打で一死二、三塁のチャンスを作り、9番木内の左犠飛で1点を先制する。
川口は5回までパーフェクトに抑えていたが、6回裏に初安打を許す。しかしここから川口は緻密な配球とキレ味鋭いスライダーで成田打線を打たせない。8番ながら長打力のある狩俣拓海(2年)をスライダーを外角に決めてズバリと三振。9番鈴木もスライダーで見逃し三振。そして盗塁失敗でピンチを切り抜けると、7回裏は二死一、二塁のピンチを招くが、見事に切り抜ける。
そして8回表には二死二塁から4番島村篤史(3年)が右翼線へ二塁打を放ち、貴重な1点を追加し、2対0とする。
結果的にこの1点は大きかった。9回裏、一死一、二塁から5番岡本佳大(3年)に中前適時打を浴び、2対1とされて、さらに一死満塁のピンチを招き打席に入ったのは7番大川直也(3年)をニゴロ併殺に打ち取り、見事に勝利を決めた。
千葉黎明の関東大会出場は2000年以来。ずいぶん、久しぶりな出場になるが、現監督の荒井信久氏が2011年6月に千葉黎明の監督に就任してから、秋春通じて二度目の関東大会出場になるのだから、荒井体制に入ってから着実に実績を伸ばしているといってもいい。前回の関東大会出場したチームと比べると総合力は間違いなく上がっており、攻守にしぶとさが出てきた。何よりエース川口が一死満塁のピンチを切り抜けたところに精神的な成長が見られるのではないだろうか。エース川口だけではなく、多くの選手が、肉体的にも、精神的にも成長が見え、全く別のチームに変貌した。次の決勝戦、関東大会で多くのモノを得てほしい。
敗れた成田も、秋に比べれば試合運びができるようになり、最後の粘りも見事だった。昨秋、尾島監督は今年の選手は能力は高いけれど、基礎的なところができていないと評していた。それが秋季県大会初戦敗退の要因だと。今年の戦いぶりを見る限り、選手たちは自覚をして取り組んできたのが伺えた。
敗戦直後の成田ナインはかなり悔しい表情だった。敗れたとはいえ、この試合から今年の成田ナインを大きくするきっかけになるはずだ。
(文=河嶋宗一)
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