秀岳館vs木更津総合

　全国の球児がお手本にしてほしいプレーがあったので紹介したい。
　場面は4回表、秀岳館の守り。二死二塁とピンチを招き、木更津総合の4番・鳥海嵐万(3年)にレフト前へと運ばれた。二塁走者の峯村貴希(2年)が本塁を目指す。レフトの天本昂佑(3年)が打球を処理すると、峯村を刺そうと本塁へ返球した。だが二死ということでスタートが早かったこともあり、タイミング的には間に合いそうにない。ここで判断したのが返球を待っていたキャッチャーの九鬼隆平(3年)。先取点となる1点を捨て、ホームベースから離れて返球されてくるボールの方へ向って走りだした。捕球するとすかさず二塁へ送球。打者走者の鳥海はレフトの返球の角度を見てすぐに二塁へ向かっていたが、九鬼の好判断からの送球でタッチアウトになった。

　この場面を振り返った九鬼はこう話す。
　｢レフトの天本が投げた瞬間に、ランナーは三塁を回っていたので、これはちょっと厳しいかなと思いました。1点勝負になると思っていたので、切り替えて、2点目を防ごうと二塁に投げました｣。

　秀岳館の鍛治舎巧監督も、｢よくあるケース。相手は積極的に次の塁を狙ってくるので、あそこはわかっていました。九鬼は(高校生の)レベルは超えている｣と普段から状況判断を大事に練習していることを話した。

　この九鬼のナイス判断。比較的浅い4回というイニングと、アウトカウント、それに相手チームとの力関係を熟知することがポイントだ。外野手が返球をする時に、本塁に向かってくる走者と打者走者を天秤にかけ、勝負に勝つためにはどちらをアウトにするのが大事なのかを一瞬で判断する。攻撃はまだ6イニング残っていただけに、目先の1点にこだわらず、2点目にされかねない走者を刺すことを優先させた結果、二死だったこともあり、1点を先制されながらもこのプレーでチェンジにすることができた。木更津総合にとっては、流れを完全に支配することができず、エースの早川隆久(3年)に少しずつ負担が大きくなっていったとうに思える。

　高校生では、本塁クロスプレーに懸けたいキャッチャー心理が勝ってしまうことが多いが、目先の1点とその先に繋がるかもしれない1点。どちらが大事なのか。こういった状況判断を普段の練習や試合で意識しながらやってほしい。

　このゲームでの九鬼の判断。仮にこの1点で木更津総合に敗れていたとしても、このゲームの勝負のポイントになる絶賛すべきプレーだったと断言する。

　最後に9回裏、二死三塁フルカウントから木更津総合の早川がウイニングショットとして決めにいったクロスファイアーの1球についても触れたい。バックネット裏から見ていても、映像で見ていてもストライクと思った方が多いだろう。試合後のインターネットなどを見ているとその1球が誤審だという意見が多かった。

　しかし、ストライクやボールの判定の全権は球審にある。実際に早川もこの1球がボールと判定されたことには｢仕方がない｣と話しているし、五島卓道監督も気にしていなかった。

　ハッキリ言えば、これが人間がやるスポーツである。誤審だというのは簡単だが、審判も選手と一緒に1回から懸命に戦っていることを理解してほしい。それを踏まえてもう一度言いたい。ストライクとボールの判定の全権は球審にある。外野の人間がとやかく言ってはいけない。
　

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