都立葛飾野vs都立八王子北
都立葛飾野、延長タイブレークの壮絶な一戦を制する
都立八王子北・山口
東京の今年の春季大会において、昨年からの大きな変更点の一つが、延長戦に入ってすぐにタイブレークに突入していたのが、12回終了後の13回からになったことだ。都立の実力校同士の一戦は、12回を終わっても決着が着かず、いきなりタイブレークに突入するという壮絶な試合になった。
八王子北は横手からやや変則的な投げ方をする山口、葛飾野は本格派の神戸 友影という、柔と剛の対決になった。
試合は1回表、左前安打の1番・関戸が犠打などで三塁まで進み、4番・井上の強い打球を遊撃手がはじいてまず1点。4回表八王子北は3番・塚原が相手のミスで出塁すると、捕逸や失策、6番・小林美への死球で一死満塁のチャンスを作る。7番・高村への初球が暴投になり1点。高村は三振に倒れたものの、続く8番・山口への初球が捕逸となって、さらに1点。この回八王子北は無安打で2点を入れた。
失策をはじめとして、ミスでの3点献上に、エースの神戸はガタガタとしてもおかしくないが、神戸は失策をした選手に対しても、「本当は守備がうまいのです」と意に介さない。力のあるストレートに、スライダー、カーブ、チェンジアップなどを織り交ぜ、試合を作る。
対する八王子北の山口は、葛飾野の沖山 敏広監督が、「腰より上の甘いボールがない。いい投手でした」と語るように、丁寧な投球で葛飾野を抑える。
本塁打を放った4番・神戸(都立葛飾野)
しかし5回表につかまる。
葛飾野は右前安打の1番・山中を高木が送り、3番・小泉の右前安打で山中は本塁を突くが、右翼手・小林美の好送球でアウトに。ただこの時、本塁上で交錯し、八王子北の捕手・井上は治療のため一時ベンチに。
次に控えるエースで4番の神戸は、「試合が止まった後の、初球のストライクを逃したらいけないと思っていました」と言うように、再開後の初球を振り抜くと、打球はレフトフェンスを越える2点本塁打に。さらに5番・ブライトも3球目を左中間に運び、連続本塁打となり、同点に追いついた。
ブライトの父親はガーナ人。「オコエ選手を尊敬しています」というブライトは、「軸を意識して、ポイントまで力を抜いて、打つようにしています」と語る。線はまだ細いが、しなやかな打撃が印象に残る打者だ。
試合は6回表、今度は八王子北の7番・高村がレフトに運ぶ本塁打で、再び八王子北が勝ち越す。それでも8回裏葛飾野は、中前安打のブライトが暴投などで三塁に進み、8番・彦坂の三塁手を強襲する左前安打で生還して同点に追いつき、延長戦に入った。
タイブレーク突入がみえてきた延長12回表、八王子北は1番・関戸のセンター柵越えの本塁打で1点を勝ち越す。それでも葛飾野は粘る。
その裏先頭の神戸の右前安打や二つの失策などで一死満塁。ここで彦坂がセンターに犠飛を打ち、またも同点。無死一、二塁から試合が始まる、タイブレークに突入した。
タイブレークとなった延長13回表、八王子北は1番・関戸から攻撃をはじめ、その関戸の二塁打などで一気に3点を挙げ、勝負は決まったかに思えた。
ところが3番・小泉から攻撃を始めた葛飾野は、6番・北井の二塁打で2点を挙げ、さらに7番・伴は遊失で出塁して同点。続く彦坂の三塁線への飛球は左前安打となり、この回4点を入れ、葛飾野が土壇場で逆転勝ちを収めた。
9対8とスコアの上では打撃戦であるが、195球を投げた葛飾野の神戸、225球を投げた八王子北の山口という、両投手の頑張りが光った試合であった。中でも葛飾野の神戸は投打に力強さがある上、粘り強さもあり楽しみな選手である。葛飾野の沖山監督は、「神戸は暇をみつけては、黙々と走っています」と語る。それに「昔ながらの野球小僧。バットを振り込んでいます」(沖山監督)というブライトとともに、今後の成長が楽しみな選手だ。
敗れた八王子北も、エースの山口に加え、1番の関戸など、今後の成長が期待される選手がおり、チーム力も上がっていくに違いない。
(取材・写真=大島 裕史)
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