試合レポート

東海大望洋vs柏日体

2015.09.20

延長14回サヨナラの東海大望洋に課された課題

先発・島孝明(東海大望洋)

 東海大望洋vs柏日体と強豪同士の対決が1回戦で実現したが、試合は1点を争う好勝負となった。

 まずこの試合で目立ったのは東海大望洋のエース・島孝明(2年)だった。前チームの時から140キロ台の速球を投げ込む逸材として注目を集めていた島。

 ワインドアップからゆったりと振りかぶり体を沈み込ませていき、右スリークォーター気味の腕の振りから投じるストレートは常時130キロ後半~142キロを計測。この時期で、コンスタントに130キロ後半をたたき出すポテンシャルが備わっており、さらに投手としてもまとまりがある好投手だ。

 コントロールの精度は高く、外角ギリギリに決まるストレートに柏日体打線が手を出すことができない。さらに130キロ前後のカットボール、横滑りするスライダーチェンジアップのコンビネーションが嵌り、6回まで10奪三振の快投。好投手を数多く輩出する東海大望洋だが、2年秋でこれほどスピードボール、変化球の精度、コントロール、コンビネーションが揃った投手はいない。175センチとは思えないぐらい腕の長さがある。まだ体力面のレベルアップで、さらにボールが速くなる可能性を持っている。

 だが打線は中々得点ができず、7回裏、二死満塁から3番峯尾京吾(2年)の押し出し四球と8回裏、代打・山崎大輔(2年)の適時打で1点を追加し、2対0のまま9回表を迎えた。島の完封を期待されたが、柏日体が粘る。9番松本海斗(2年)が敵失で出塁すると、代打・杉山巧真(2年)が右前安打を放ち無死一、二塁。2番近藤将一(2年)が犠打を試みるが、二塁フォースアウトで一死一、三塁となって、3番田中大地(2年)の場面で、バッテリーミスで三塁走者が生還し、2対1と1点へ。そして4番本橋真広(3年)の遊撃内野安打で同点に追いつくのだ。好投の島にとってはかなり悔しい同点。


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2015年秋季大会

サヨナラ本塁打に喜ぶ東海大望洋ナイン

 お互い決定打が出ないまま試合は延長戦へ入る。島は先頭打者を空振り三振に打ち取るが、次の打者に死球を出してしまい降板。9回三分の一を投げて16奪三振。まさ熱投といえる投球内容であった。島に次いで投げたのがセカンドを守る金久保優斗(1年)であった。すらっととしていて、さらになで肩の投手体型。こんな選手が二塁を守っているのか、驚きを隠せなかった。セカンドのノックを見ていても、身のこなしが良く、実にセンスの良い動きを見せている。

 実際に投手としての金久保は島にひけをとらない素質を持った本格派右腕である。右スリークォーター気味のフォームから繰り出す直球は常時135キロ~138キロを計測。さらに手元で曲がるスライダーも鋭く、コントロールも安定しており、なぜこの選手がセカンドなのかと思ってしまうほど素質に溢れた好投手であった。

 柏日体も、必死の継投で決定打を打たせない。どの投手も個性があり、特に4番手の多田裕作(2年)は恵まれた体格から130キロ前半のストレート、スライダー、カーブを投げ分ける右の好投手で、東海大望洋打線を打たせない。試合は14回まで進み、再試合になるのかと思わせたが、延長14回裏、一死から4番倉石匠己(2年)がサヨナラ本塁打で決着をつけ、2回戦進出を決めたのだ。


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2015年秋季大会

3安打の活躍を見せた藤本誠啓(東海大望洋)

 東海大望洋はとても苦しい試合展開となった。17安打を打って3点。毎回走者を出しながらも決定打が出ないことには彼らからすれば、フラストレーションが溜まっていたであろう。

 一人ひとりの打者のスイング、打球の速さであったり、シートノックからうかがえる選手たちの身のこなしの良さ、肩の強さは秋のレベルではない。だが強い打球を打つことと、それを得点に結びつけるには別のアプローチ法が必要になる。秋はまず強い打球を打てることから始まるが、東海大望洋ができている。では得点に結びつけるにはどんな攻撃をすればよいのか、どんな戦法を取ればよいのか、それを考える1年間になるだろう。千葉県トップクラスのパワーに、対応力、幅広い攻撃のバリエーションが習得した時、再び甲子園を目指せるチームになるのではないだろうか。

 東海大望洋の野手の中で、今日、攻守ともに安定していた内容を見せていたのは4安打を放った2番ショート藤本誠啓(1年)であった。右、左に素早く打球に追いつき、無駄なステップをすることなく、強いスローイングができる肩の強さ、身体能力の高さ、技術の高さは高校1年生にしては高いレベルにある。さらに打者としてもしっかりとトップを取っていき、インパクトまで無駄なく、ボールを捉えることができており、ライナー性の打球を連発している。さらにスイングスピード、打球に角度を付けるコツをつかんでいけば、本塁打も狙える強打型のショートになる可能性を秘めている。

 伝統的に強打者が多い東海大望洋だが、複雑な動きをこなす身のこなしの良さ、攻守の総合力の高さ、スピード感溢れる動きはこれまでの東海大望洋の選手にはない武器である。

 藤本は金久保と同じ名門・佐倉シニア出身で、今後の試合でも注目したい選手であった。
 藤本だけではなく他の選手も、非凡なスイングの速さ、打球の速さを持った選手が多い。また柏日体のような強豪と対戦して、光る活躍を見せたときに改めて紹介していきたいと思う。

(文=河嶋 宗一


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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