創成館vs天理
創成館が好守備と左腕2人の巧みな投球術で天理を破る
8月9日、長崎県にとっては歴史的な1日だが、ここ甲子園の舞台で、新たな歴史を刻んだ創成館。
初出場とは思えないぐらい緊張感のある好守備で天理を破った。試合を振り返ると、両チームの先発が好投。創成館は先発・藤崎 紹光(3年)は技巧派の左サイド。左打者の内角、右打者の外角へ鋭く投げ込むため、左投手としては珍しい三塁側に立って投げ込む投手である。120キロ~125キロ前後の速球は右打者の外角、左打者の内角にしっかりと投げ分けができており、右打者の内角にも投げることができており、想像以上に打ち難い。またスライダー、シュートも低めに集まっており、天理は強打ができない。フルスイングをさせないところで、創成館の藤崎は自分の持ち味を発揮したといっても過言ではないだろう。
4回表、一死一、二塁から6番川崎 浩大(3年)がインコースのストレート煮詰りながらも左前適時打を放ち、1点を先制すると、さらに一死満塁となって、8番神野 太樹(1年)の内野ゴロの間に2点目を取る。創成館とすれば、それほどダメージが少ない失点だろう。彼らの表情を見るとあまり気に留める様子はなかった。そして9番堤田 礼雄(3年)を三ゴロに打ち取り、まだいけるという流れになる。
創成館は天理の先発・冨木 崚雅(3年)に苦しんでいた。冨木は独特のテークバックで、さらになかなか力感がないように見えるので、あまりボールは速くないのかなと思いきや、常時135キロ~142キロと中々の速度があり、さらにスライダー、130キロ台を記録するツーシームを内角に投げ分け、想像以上に打ち難く、なかなかの実戦派右腕であった。
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奈良大会で見た時は球速を測れる位置で座ることができず、力のあるボールを投げていると感じていたが、力感がないフォームから140キロ台をたたき出すポテンシャル。打者としても5番を打つほどの長打力を秘めているが、投手・富木としてプッシュしたくなるものがあった。
攻略が難しい投手だと思っていたが、4回裏、6番宇土 憲伸郎(2年)に右前安打を放ち、7番中島 崇(3年)が左中間を破る二塁打を放ち、無死二、三塁のチャンスを作ると、8番中島 巧喜(3年)のニゴロで1点を返すと、二死三塁から鳥飼 立樹(3年)が適時二塁打で同点に追いつく。
ここから両チームの投手、守備陣の好守備で、3点目を挙げることができず、試合は9回裏に。9回裏、1番鳥飼が三塁への内野安打で出塁すると、犠打と3番峯 周汰(3年)の中飛で鳥飼は三塁へ進むと、打席に立ったのは4番鷲崎淳(3年)。ここまで無安打だが、打席に立った時の雰囲気がある強打者である。長崎大会で2本塁打を打った鷲崎。自慢の強打を見せるのははここしかない。
そして鷲崎は冨木の直球を強振。打球は右前安打となり、サヨナラ安打で初出場初勝利を決めた。実に鋭いスイングであった。創成館は天理を十分に破るだけの実力はあった。先発の野崎、2番手の水永 悠斗と独特のフォーム、コーナーを突く投球で、天理打線を抑え、また内外野の堅い守備も光った。実に高いレベルを示してくれた。
創成館は走攻守のレベルは九州県内では評判だった。あとは全国の実績だけ。ベンチ入りの選手だけではなく、学校全体を後押しして掴んだ1勝は創成館がさらにステップアップするためには大きな1勝だったことは間違いない。
(文=河嶋 宗一)
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