試合レポート

彦根東vs大阪桐蔭

2015.05.24

打倒・王者を目指す大阪180校のお手本

エース・佐々木大樹(彦根東)

 9回裏、二死三塁のピンチを凌ぎ、大阪桐蔭を破った彦根東。地元・[stadium]彦根球場[/stadium]につめかけた多くの高校野球ファンからは拍手喝采。選手はまるで優勝したかのように喜んだ。逆に敗れた大阪桐蔭の西谷浩一監督は、「ウチの力が足りない」と唇を噛みしめる。こう言わせたのも、彦根東が見せた強者に対する野球が見事だったことを示している。

 大阪で高校野球をしている選手や指導者がどれだけ見に来ていたかはわからないが、この試合は夏に打倒・大阪桐蔭を目指す大阪の高校球児にとってお手本になると言えると思う。

 まずイニングスコアをみてもわかるように、彦根東が先手を奪い数字の面でゲームの主導権を握ったことだ。4回に一度追いつかれるが、6回の攻撃で再び勝ち越した。その後、もう一度追いつかれるものの、8回に1番・森杉亮太(3年)が勝ち越し本塁打を放ち、これが決勝点になった。

 もう一つ、彦根東が優位に進める核となったのは、エース・佐々木大樹(3年)と主将でキャッチャーの篠原漣(3年)のバッテリーが見せたピッチングの巧さである。場面は1回裏、大阪桐蔭の1番・中山遥斗(2年)に対する前の7球の投球練習である。この間に佐々木大樹は三度、暴投を投げてしまった。当然これを凝視する大阪桐蔭ベンチからは大きな声が飛ぶ。バックネット裏で見ていたあるプロ野球のスカウトは、「あのヤジはいけないよね」と話したが、味方にも相手にも大きな声を出すのは大阪桐蔭のスタイル。ただこれを知っている彦根東バッテリーは、3回もしてしまった暴投を逆利用した。その証拠が中山遥斗の見逃し三振である。選抜大会出場へと繋がる秋の近畿大会と違い、「春はそこまで(事前の)偵察をしていない」と西谷監督が話すように、彦根東佐々木大樹の分析は試合の中で立てて行くというのが春の大会の大阪桐蔭の特徴である。その基となるべき1番打者の中山遥斗を見逃し三振に仕留めた佐々木大樹。この配球を引きだした篠原漣も見事で、[stadium]彦根球場[/stadium]の観客を味方につけるきっかけとなった。

 佐々木大樹はこの後、四球とヒットなどで二、三塁のピンチを背負うが、5番・吉澤一翔(2年)のショートゴロがグラブに当たり、セカンド・手原健太郎(3年)の手元に落ちる幸運でセカンドゴロに打ち取った。このツキにも[stadium]彦根球場[/stadium]の観客は大きな拍手を送った。

 球場を味方につける。難しいことではあるが、強者に勝つためには欠かせない部分である。

 結局、佐々木大樹は9回162球。得点圏にランナーを進ませなかったのは5回の1イニングだけと毎回ピンチの連続だったが、16個の残塁を築いて大阪桐蔭を2点に抑えた。

 一方で大阪桐蔭の負け方としては昨秋の近畿大会準々決勝の天理戦と良く似ている。福田光輝主将(3年)も天理戦と同じような展開になってしまったことに言及した。

 さらに2010年秋の近畿大会1回戦で加古川北に敗れた時とも雰囲気が酷似しているように感じる。この試合のことは当時の記事を読んでいただきたいが、打倒・大阪桐蔭を目指す約180校の選手や指導者にとっては勝つ為に大きなヒントを得ることだできたのではないだろうか。

 7月11日に開幕する夏の大阪大会。大阪桐蔭が史上初の夏の大阪大会4連覇を達成するのか、それとも他のチームがストップさせるのか。大阪180校の残り1カ月半の取り組みを楽しみにしたい。

(写真=中谷明

2015年度 春季高校野球大会 特設サイト
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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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