試合レポート

四條畷vs近大附

2015.05.06

全力疾走・全力発声の四條畷が近大附を破り、目標としていたベスト8進出!

先発の藤井選手(四條畷)

 府立では屈指の進学校といわれる四條畷(しじょうなわて)。最終下校が18時半ときっかりと決まっており、練習時間は1時間半しかできない。進学校らしい事情といえる。しかしその環境でも結果を残すチームは、それを言い訳にしない。四條畷は少ない時間の中で、「どれだけ気持ちを込めて練習に取り組むことができるか」を意識して取り組んできた。

 
 四條畷のモットーは「全力疾走・全力発声」だ。確かに声を張り上げながら、全力疾走する姿を見ると、そのモットーを忠実に取り組んでいる。何より元気が良く、表情が良い。相手に向かってやろうという気迫が感じられるのだ。

 強豪校に打ち勝つために取り組んでいることは、小技を絡めて、いかに次の打者へつなぐことができるか。主将の三宅がこう語る。
「自分たちは私学の選手たちには能力的なものはかなわないので、やはり団結力をテーマに、小技でつないで、つないで、いこうとやってきました」
目指す野球は選手たち自身、分かっているのが強みである。チームとしての最高の目標は、ベスト8だったが、最低限の目標として、初戦突破だった。寝屋川に6対5で勝利し、初戦突破を果たすと、その後は、3回戦では河南を7対0で下し、4回戦では強豪・大体大浪商を12対9で破り、ベスト16入りを果たしたのだ。快進撃ともいっていい四條畷ナインの勢いはこの試合でもとどまることはなかった。

 1回表、四條畷はいきなりチャンスを作る。四球が3つ絡んで一死満塁のチャンスから、5番濱田雅之の2点適時打で2点を先制すると、さらに二死満塁になって8番大塚悠平の2点適時打で2点を追加し、4対0とする。
この4点で、この試合はいける気持ちになった四條畷ナイン。2回以降も、これまでの打撃力を発揮する。

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校歌を歌いあげる四條畷ナイン

 2回裏、近大附は無死満塁から8番吉野友章の適時内野安打、9番梁川匠の犠飛で2点を返されるが、3回表、四條畷は6番藤井健太がレフトスタンドへ飛び込むソロ本塁打。率いる辻野監督は、「普段はこんな当たりを打つ子ではないのですが、先制した勢いが出ていると思います」と驚きの一発で追加点を入れると、さらに4回表にも、無死から3番佐野 僚が二塁打を放つと、4番河野翔太の適時二塁打で1点を追加すると、さらに一死二、三塁から藤井の適時打で1点を追加する。これで7対2と大きくリード。ここからは四條畷が勝つために守り抜くイニングになる。5回裏に、一死二、三塁のピンチを招き、9番池田慎吾の内野ゴロとバッテリーミスの間に2点を失い、7対4と3点差に迫られるが、投げては藤井が威力ある直球とスライダーを駆使して、近大附打線をしのぎ、試合は9回裏まで来た。

 しかしなかなか簡単に終わらず、二死一、二塁から代打の松岡真道に適時打を浴びたが、1番木戸一輝を空振り三振に打ち取り、選手たちは全速力でホームベースに走って、勝利を分かち合った。

 試合後、辻野監督は「日頃から周りへの感謝の気持ちを忘れずに、全力疾走、全力発声を怠らずに取り組むことができれば、いつかこういう事が起こるから、手を抜かずにプレーをしなさいということを口酸っぱくいってきました。それが今、現実となって起きたと思います」
まさにそれが起こったということだろう。4回戦で大体大浪商、そして今回は、近大附と私立を2校続けて破るのだから、まさに快挙である。主将の三宅は、
「オフでの選手間ミーティングで、ベスト8に入ることをやってきましたが、私学2つ破ってのベスト8ということに自分自身驚いています」とコメント。
 大阪府は、どちらかというと私立全盛だ。なかなか公立が入り込むのは難しい。だが四條畷のような進学校が、次々と強豪私立を破った事実は他の公立校にとって大きな励みになるだろう。また四條畷は私立に負けない能力値を持った選手がいるわけではない。体格も、普通の高校生だ。そういう選手たちが一致団結をして、ベスト8まで駆け上がったストーリー。

 ぜひこのストーリーの続きを夏までにつなげていってほしい。

(文=河嶋宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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