試合レポート

千葉明徳vs多古

2015.04.29

3点リードを7回に追いつかれた千葉明徳、しぶとくもう一度突き放して逃げ切る

スムーズなフォームから制球よく投げる千葉明徳・清藤君

 6年前の県大会では習志野東海大望洋といったところを下して初優勝を飾っている千葉明徳。以来、ある程度の力を示す存在となっているが、この春も地区ブロック予選は2試合完封で通過し、県大会に入っても苦戦しみながらもここまで上がってきた。
対する多古も、地区予選成東を下し、県大会は1回戦(試合レポート)で東海大望洋、2回戦ではシード校の千葉商大付と実力校に勝って勢いに乗っている。

 そんな両校の対戦は、試合の流れがあっちへ行ったりこっちへ来たりという、慌ただしく動く試合で、現状の中ではお互いが持てるものを出し切ったというような展開になった。

 先制したのは千葉明徳で、初回いきなり多古の先発左腕清水君の立ち上がりを突いた。
千葉明徳は先頭の谷君が中前打で出ると、二塁盗塁で一死二塁として秋廣君の左中間二塁打でまず1点。さらに、高橋君も同じように左中間に運んで二走を帰す。多古の迫屋昇二監督は、早々と清水君を諦めざるを得ず、椿君を送り出した。

 その後、四球と内野ゴロなどで二死一三塁となって、ここで千葉明徳の宮内一成監督はディレードスチールを仕掛ける。結局、一塁走者の星野君は挟まれた挙句に一塁へ戻るのだが、三塁走者の高橋君は本塁へ突入。捕手のオブストラクションもあって3点目が入った。千葉明徳は、アグレッシブに攻めて仕掛けていったことで奪った3点で、試合の主導権を握った。

 千葉明徳先発の清藤君は、スムーズなフォームから制球よくコーナーを突いてくる。四球と安打の走者を許したものの、3回までは3人ずつで抑えていた。しかし、4回に先頭の石毛友君に死球を当ててやや乱れたところを3番内藤君に狙われ、右線二塁打で1点が入った。それでも、後続はチェンジアップなどを巧みに使いながら連続三振で切って取ったのは見事だった。

 ところが、ここからにわかに流れに変化が生じてきた。
千葉明徳は5回、1番からの好打順で内野安打と野選で得た無死一二塁を逃すとその裏、多古は失策で出た走者をバントと安打で進め、二死一三塁となったところで石毛友君が遊撃内野安打して1点差とした。

 千葉明徳は6回に9番新野君が右前タイムリー打をし、7回には失策と野選などヒットなしで得点したものの、動き出した試合の流れは止まらなかった。

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センスの良さが光った多古・石毛友君

 多古は7回、先頭の6番椎名君が左翼線二塁打で出ると、捕逸で三塁へ進み、香取君の遊撃手奥への内野安打で帰す。さらに、バントに石毛友君の右前打で1点差。石毛友君は、随所にセンスの良さが光っている好選手だった。その石毛友君が二塁盗塁すると、2番鈴木匠君が食い下がってしぶとく一二塁間を破り二塁走者を帰して、ついに同点とした。

 振り出しに戻った試合は、タイブレークになることも頭にあったであろうが、8回二死から千葉明徳は9番新野君が四球で出塁。初回からリリーフして、粘りの投球をしてきていた多古の椿君だったが、やや疲れも出てきたところだったかもしれない。すかさず、1番谷君も中前打するが、これがラン&ヒットを仕掛けており、一三塁となる。積極的に仕掛けていっていた千葉明徳の機動力がここで功を奏した。

 続く粟野君は3回に三塁盗塁を決めるなど脚のある選手だ。人工芝の球場だけに、叩きつけた内野安打の可能性もありかと思われたが、谷君が二塁盗塁した後に、文句なしの中前打で、これが2点タイムリーとなった。
9回にも、高橋君の三塁打を足場に、平井君の内野ゴロの間にホームインして貴重な追加点を挙げて、その裏の攻撃を左腕藤村君が1番の石毛友君に三塁打されて1点を失ったものの、その後は動じずにしっかりと投げて何とかリードを守り切った。

「5対5になったところで、普通は負けですよね。そこから、よく返しましたよ」
宮内監督は、長い試合で展開が行き来した試合に疲れた表情ながらも満足げだった。
「ベンチでは、早い段階でというか、2回には、『この3点で決まるわけないぞ』ということは言っていました。8回は簡単に二死で9番でしたから、9回1番からになるなと、タイブレークももう一回1番から行ってやろうかと…、そんなことを考えていました」
と、その時の思いを明かしてくれた。

 ディレードスチールを仕掛けたり、千葉明徳が積極的に動いていくことで、仕掛けていくイメージを相手に与えて、それが最終的に功を奏したとも言えよう。

 それにしても、執拗なまでの多古の粘りも素晴らしかった。迫屋監督は、前任校の東総工時代、さらには市立銚子時代にもそれぞれ好チームを作っていった実績もある。多古でも、粘り強い、諦めない好チームを育てつつあるようだ。

(文=手束仁

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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