試合レポート

立教新座vs川口

2015.04.16

スタンドとベンチ一体の勝利!耐え抜いた立教新座、県大会へ!

同点のホームを踏んだ浅尾を迎える(立教新座)

 4月16日、[stadium]さいたま市営浦和球場[/stadium]で南部地区予選代表決定戦、立教新座対埼玉川口の試合が行われた。
埼玉川口は言わずと知れた県大会の常連。この予選もシードで出場、この試合が初戦となる。立教新座は選手権大会出場など実績は十分だが、近年は2013秋以来丸1年県大会からは遠ざかっている。

からりと晴れた空のもと、試合は白熱した展開となった。
まず先手を取ったのは埼玉川口。一死から2番・加藤がヒットで出塁。3番・中島には死球、4番・横溝には四球と制球に苦しむ立教新座先発・浅尾の投球を冷静に見極め、5番・鈴木が押し出しを選び1点を先制し、なおも一死満塁。続く6番・高村も、怪しい球はしっかりカットして機を待つなど虎視眈々と追加点を狙っていたが、ここは浅尾が踏ん張り押し出しの1点のみに抑えられる。

埼玉川口の先発は中島史也。1年生から登板を重ねる等、「チームの軸」と鈴木監督も信頼を寄せる経験豊富な3年生左腕だ。中島は、初回、立教新座2番・佐藤に二塁打を打たれるものの、その他は低めに球を集める危なげのないピッチングで無失点に抑えていく。

3回表、その中島がバットで魅せる。一死からライトポール際のスタンドへ弾丸ライナーを突き刺し自ら追加点を奪う。
目の覚めるような当たりにやや動揺したか、立教新座先発・浅尾は続く4番・横溝を四球で歩かせる。5番・鈴木に対してもボール先行。このままずるずると行ってしまうかに思われたが、キャッチャー井木が盗塁を試みた横溝を二塁で刺し、力強く「2アウト!」と声を上げる。これに勇気付けられたか浅尾は、鈴木は歩かせたものの続く打者をショートゴロに打ち取り、この回も1点で切り抜ける。

するとその裏、今度は立教新座が攻勢に出る。
3回裏、この回先頭の8番・佐々木が左中間を破る二塁打を放ち、いきなりチャンスを作り出す。この場面で打席には浅尾。自らのバットでチャンスを広げたいところだ。思い切りよく振り抜いたバットから放たれた強烈なゴロがセカンドのエラーを誘い、打球はライト前へ。この間に佐々木が一気に本塁へと還り、立教新座がまず1点を返す。
さらに2番・佐藤がレフト前へと運び一死一、二塁。3番・田嶋の当たりはセカンド前で大きくバウンドしライト前へ。これで二塁から浅尾が還り同点。続く4番・中﨑のふわりと上がった当たりはセンターの前へと落ち、佐藤が生還、逆転に成功する。
この回、立教新座が見せたのは、何かを吹っ切ったような力強いスイング。振り切ることで打球に力を生み、ことごとく「何か」を起こした。

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川口先発・中島

 埼玉川口は逆転された直後の4回以降、毎回のように得点圏に走者を進めるも、要所で粘りを見せる浅尾と隙を見せない守備陣に阻まれあと一歩得点に手が届かない。
迎えた最終回、埼玉川口は1番・伊藤慶からの好打順。伊藤慶は変わった松原から四球を選ぶと2番・加藤の送りバントで二塁へ。さらにワイルドピッチで三塁へと進み、一死三塁。犠牲フライでも同点の場面を作り出す。打席にはこの試合ホームランも放った3番・中島。ここは松原の球威が勝り、高々と上がった打球は前へ飛ぶこと無くキャッチャーへのファウルフライとなる。だが二死ながらランナーは三塁に。なおも埼玉川口のチャンスに4番・横溝は鋭い打球を外野へと飛ばす。レフト前へ落ちるかという当たりに球場全体の目が注がれる中、これを立教新座レフト・小島がダイビングキャッチ。ビッグプレーで試合終了となり、埼玉川口ナインは天を仰いだ。

 敗れた埼玉川口は、これで夏はノーシードが決定となった。
鈴木監督は「みんな一生懸命やっているチームばかりだけど、うちのチームの選手達もそう。このメンバーで1日も長く試合が出来るようにまた頑張っていきたい。」と夏に向けて決意を新たにしていた。

 一方、耐え抜いて勝利を収めた立教新座。浅尾の7回までの登板は「正直、迷った」と冨部監督が振り返る。
「今日は制球が悪かったんですが、ボール自体は良かったので投げさせました」
確かに、ランナーは出すものの打たれたヒットは7回を投げ抜き3本と少ない。要所でギアが入れ替わるかのように三振を取っていく様は見事だった。
そのエースが苦しみながらも抑えてきたという難しい試合。立教新座は8回以降投手をさらに2人投入しリレーさせた。
「8回は下位に向かう打順だったので、制球の安定している平林を。9回は上位なので威力のある松原を送りました。勝ったから良い采配になりましたけどね」と冨部監督は笑ってはいたが、選手を信頼していたからこそ出来たのだろう。また、その3人をどっしりと支え、リードし抜いたキャッチャー・井木の功績も大きい。主将としてもチームの精神的支柱であることがそのキャプテンシーから伺えた。

 この試合、立教新座は守りの時間が長く苦しい展開だったが、選手たちは声を掛け合い臆することなく戦っていた。その後押しをしたのはスタンドの声だった。
励ましの声を、時にはアドバイスを明るい言葉で送り続けていた。ベンチに入れず悔しいはずの3年生たちが自主的に応援練習をし、積極的に声を出していたという。間違いなく彼らはナインと共に戦っていた。最後、勝利の女神を微笑ませたのはこんな部分だったのかもしれない。
「県大会では最低でもベスト16を目指します」と笑顔で言い切った立教新座・冨部監督。チームのその明るさと献身で、再び勝利の女神を微笑ませることは出来るか、注目したい。

(文=青木有実子)

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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