れいめいvs樟南
エース好投、芽生えた「終盤の粘り」・れいめい
好投で優勝に導いた、れいめいのエース杉安浩
れいめいが粘り強さを発揮し、20年ぶりに春の鹿児島の頂点に立った。
熱戦を勝ち抜く原動力の一つは、エース杉安浩(3年)の好投だ。
準決勝で背番号10の河北光生(3年)が好投し(試合レポート)、レフトで守りながら「投げたくてうずうずしていた」と杉安。その想いを買った湯田太監督は、準決勝の直後に「あしたはお前で行くぞ!」と告げた。
「やってやる!」気持ちで樟南の強力打線に立ち向かった。
圧巻は6回表のピンチの場面だ。ヒットと四球に、悪送球が重なって無死一三塁。今大会の樟南は、相手のミスには必ずつけ込んで一気に流れを引き込んでいる。
絶体絶命のピンチに「頭の中が真っ白になった」が「自分のボールは絶対に打たれないと信じて、腕を振ることだけを心掛けた」
6番・今田塊都(2年)はこの春覚えたチェンジアップで空振り三振、7番・畠中優大(2年)はショートフライ、8番・前川大成(2年)はチェンジアップで追い込んで力強い内角直球で空振り三振。好打者の2年生左打者トリオをねじ伏せて、流れを渡さなかった。7回以降は、チェンジアップを効果的に使った緩急自在の投球で相手に得点の気配を作らせなかった。
初回に3連打で先制したが、2回以降は樟南・畠中の直球と変化球の絶妙のコンビネーションで狙い球を絞らせない好投に苦しんだ。
何度かあった好機を好守に阻まれ「さすが樟南!」と湯田監督もほれぼれするほどのうまさを感じたが「相手が良い野球をした分、自分たちも引き締まった野球ができた」
「終盤粘って守れる、粘って点を取れるチームになる」湯田監督が就任から掲げていたテーマだった。
このところ8強どまりで、中々その上に行けなかったが、今大会でようやくその壁を破れたのはこの「終盤の粘り」が芽生えたからに他ならない。
その要因に、湯田監督は「日常生活の中で目配り、気配り、思いやりができるようになった」ことを挙げる。
内野ゴロでも全力疾走を忘れず、アウトになった打者にも「ナイスラン!」と仲間が声を掛ける。「笑顔のないやつには『笑顔!』と声がかけられる」(火ノ浦明正主将・3年)チームになった。
終盤、何度も好機を作りながら勝ち越し点が奪えなくても、ベンチの雰囲気は明るく、前向きな姿勢が途切れることはなかった。
延長10回は四死球、ヒットで満塁とし、9番・若田礼大(3年)の犠飛でサヨナラ勝ち。強打のれいめいらしい長打でも、ヒットでもない、泥臭い点の取り方だったが「これまで悔しい思いしかしてこなくて、どこのチームよりもこの大会にかける想いがあった」(火ノ浦主将)執念を象徴したような決勝点だった。
(文=政 純一郎)