大島北vs鹿児島中央
9人チーム、執念でつかんだ勝利・大島北
榮浩平(大島北)
大島北17、鹿児島中央19、両チーム合わせて36安打の打ち合いを大島北が制した。
序盤は大島北が主導権を握っていたが、中盤以降は鹿児島中央が追い上げる。6回に下位打線の連打で1点差に詰め寄り、7回に6番・内村飛雄馬(3年)のセンター前タイムリーで同点に追いつく。
大島北は、同点に追いつかれた8回表、二死一塁から3番・榮浩平(3年)のセンター前タイムリー、4番・且零士(3年)のセンターオーバー三塁打、5番・萩原慎平(2年)のセンター前タイムリーで4点を勝ち越した。
その裏、鹿児島中央は4番・井上蓮太郎(2年)、5番・吉森翔平(3年)の連続タイムリーで再び同点に追いついた。9回表、2番・河野和広主将(3年)、3番・榮のタイムリーなどで再び3点を勝ち越した。その裏、1点差まで詰め寄られるも、エース榮を中心に粘り強く守り、逃げ切った。
「9人の子供たちの執念を感じました」。
大島北・山下将貴監督は思わず目頭を熱くさせていた。2度もリードを追いつかれる苦しい試合だったが、9人一丸の執念が勝利を手繰り寄せた。
打ち勝つ。それがこのチームの持ち味だ。選手9人のギリギリだが、1年夏から公式戦を経験しており、1年秋には樟南から3点を奪った実績もある(試合レポート)。
「先手を取って流れに乗る」(山下監督)の狙い通り、序盤で5点を奪い、主導権を握った。
だが鹿児島中央がジリジリと盛り返す。5回以降はエース榮がつかまり、打ち込まれた。攻撃でもバントミスや走塁ミスがあり、打線がかみ合わない。いつ気持ちが切れて、ワンサイドの展開になってもおかしくない流れだった。
それでも彼らの中にはいつも以上に負けられない執念があった。
「監督と1試合でも長く野球がしたい」(榮)。
山下監督は転勤で県外に出るため、ベンチで指揮できるのは今大会が最後。
河野主将は「いつも以上にみんなが熱い気持ちで試合に臨んでいた」と言う。ミスが出れば気持ちが沈んで、下を向いてしまっていたナインが、互いのミスを厳しく指摘し合い、最後まで集中力を切らなかった。
中盤以降、どこに投げても打ち込まれ、さすがに気持ちが萎えかけた榮は「味方が打ってくれたことが奮い立たせてくれた」。
2回はランニング本塁打、9回は勝ち越しタイムリー、5安打4打点で打線をけん引した河野主将は「自分が決めると責任を持って打席に立った。マウンドの榮は替わりがいなくて、何倍も大変。絶対に打線でサポートしたかった」。
9人全員がミスはあっても互いにカバーし合い、一丸となって戦う姿勢を2時間23分、貫き通した。
彼らを指導し始めた頃、山下監督は「9人しかいない」とマイナスのことばかりを考えていた。だが今「こんなにも熱い気持ちのある選手が9人もいる」と頼もしく思えるようになったと、誇らしげに語っていた。
(文=政 純一郎)