試合レポート

佼成学園vs都立永山

2014.10.12

エース小玉、苦しんだ末の完封。佼成学園が2回戦へ駒を進める

佼成学園vs都立永山 | 高校野球ドットコム

完封勝利を収めた佼成学園・エース小玉和樹

 2012年夏、甲子園を目の前にして破れてしまった佼成学園。都立ながら勝ちを積み上げ、本戦まで進出してきた都立永山
実力校同士の対戦の主役は佼成学園エース小玉和樹であった。

 身長170センチほどの小柄な体型ながら、一年秋から佼成学園でエースを守り抜いてきた小玉。新チームでは主将となり、チームの大黒柱となっている。そんな小玉にとって今試合の投球は、苦しい展開が続く、まさに試練となった。

 初回、都立永山の攻撃。1番高野が中前安打で出塁すると、続く2番高木の犠打により、一死二塁と都立永山が得点圏までランナーを進め、チャンスを作る。その後、4番丸本が四球で出塁し、チャンスを二死一二塁に広げる。一安打で先制かと思われた場面で、佼成学園エース小玉は落ち着いていた。続く5番南から意地の三振を奪い、初回を見事0点に抑える。

 初回の苦しい場面を乗り切った小玉をどうにか援護したい佼成学園打線は1回裏、猛攻を仕掛ける。1番吉田、2番田窪がそれぞれ死球、敵失で出塁。続く3番伊藤が中適時三塁打を放ち、2点を先制する。さらに、相手バッテリーのミスの間に三塁走者伊藤が生還し、3対0と3点のリードを得た。

 打線の援護に勢いをつけたい小玉であったが、制球が定まらず都立永山に2回3回と、得点圏までランナーを進めることを許してしまう。しかし、1年秋からマウンドを守ってきた意地でホームを踏ませることだけは許さなかった。

 守備のリズムが打線にも影響したのか、2回3回の佼成学園の攻撃は都立永山先発・高木に完璧に抑えられ三者凡退。


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好守を見せる捕手・高野(都立永山)

 3回まで、佼成学園がリードしているとはいえ、試合のペースは完全に都立永山のものとなっていた。

 そして、迎えた4回表の都立永山の攻撃。3回には、三塁までランナーを進めることに成功していたため、この回さらなる猛攻に出るかと思われた。しかし、この回の小玉の投球は圧巻であった。

 先頭打者を三振に取ると、続く打者を内野フライ、三振に封じ込め、この試合初の三者凡退に成功。
試合後に「立ち上がりが毎試合悪いのが自分の課題です」と自ら語っていた小玉。それでも、試合が進むにつれて自らのペースを作り上げていった。

 いいテンポで守りを終えた佼成学園はその裏に、さらなる攻撃に出る。4回裏の攻撃は4番代打橋本からの好打順。橋本はショートフライに倒れるも、続く5番中島が三遊間を破る安打で出塁。6番小玉がしっかりと犠打を決めると、7番剣持が左越適時二塁打を放ち、1点を追加することに成功。さらに9番森口の左前適時打により1点を追加し、5対0とリードを5点に広げた。

 その後は、エース小玉がリードをしっかりと守りきり、5対0の完封勝利で佼成学園が2回戦へと駒を進めた。
結果を見てみれば、佼成学園エース小玉和樹はほぼ毎回の10奪三振、完封と見事なものであった。


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整列に並ぶ佼成学園ナイン

 しかし、内容を振り返れば手放しに喜べるのもではなかったことがわかってくる。

 試合後、佼成学園藤田監督はこう振り返る。
「打線がつながらなかったことが一つの課題です。個々が頑張ろうという気持ちはいいが、一人一人が点のままで終わっている。打撃を線にしなければ、さらに上は見えてこないだろう。また、チームで打撃のルールを作っているが、それが本番で守れない部分もあった」

 確かに、佼成学園の安打数はわずか6。7回には、一死満塁のチャンスを作るも、得点できなかった。打撃を打線へと変えることが上で勝ち上がるための必須条件となりそうだ。

 さらに、エース小玉に関して、藤田監督はこう語った。
「ここ最近で一番悪い投球。主将であり、エースであり、4番であったが、それが重荷となっては困るため、今日は打順を下げてみた。チーム全体としても、打順がまだまだ定まっていないため、今後の練習をしっかり見て次の戦いのオーダーを考えていきたい」

 状況に応じて、チームが形を変える柔軟性が佼成学園にはあった。

 さらに、小玉和樹本人はこう語った。
「主将であり、エースであることの重圧はほとんどない。それは、チームメイトが頼もしいから。周りに支えられているからこそ頑張ることができる」

 エース小玉を中心にチームが成り立っているように見えるが、そう見えるのは周りの支えがあってこそ。次の戦いも、選手、監督が一致団結して戦う佼成学園の姿に期待が集まりそうだ。

(文=編集部

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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