岐阜総合学園vs県立岐阜商
初戦は大垣日大、決勝は県岐阜商を下して岐阜総合学園が初優勝
速球派として注目の高橋純平君(県岐商)
前評判通りの力を示して決勝進出を果たした県岐阜商は、2年ぶり23回目の優勝を目指すが、それに初優勝を狙う岐阜総合学園が挑んだ。岐阜総合学園は前日に土岐商を2対1で下して、岐阜西工時代以来の38年ぶり2回目の東海大会進出を果たして勢いに乗っている。
岐阜総合学園はスラリとした細身の西脇達也君が、この大会では初戦で大垣日大に勝ったことで自信を得て成長。以降も好投して、ロースコアゲームを何とか勝ち上がりながら快進撃を続けてきた。
また、県岐阜商は全国的にも注目されている速球派の高橋純平君が先発のマウンドだ。好投手対決で、投手戦が予想されたが、期待にたがわぬ好試合になった。
投手戦ではやはり、先制点が大きくモノを言うのだが、先制したのは3回の岐阜総合学園だった。
岐阜総合学園は初回には得点にはならなかったものの、先頭打者の廣瀬君が初球を中前打し、バントで二塁へ進み、内野ゴロで三塁まで進められた。このことで選手たちは、「自分たちでも、高橋純君に対して、何とかなるのではないか」という意識は作れたようだ。それが3回に表れた。
この回、i一死から小柄な9番伊藤陸君が、高橋君のスーッと入ってきたストレートを捉えて右翼線に二塁打する。さらに、廣瀬君も右前打でつないで一三塁。ここで、「チームで最もバントが上手い」という小島君だが、カウント1ボール1ストライクで一度ファウルにしながらも、スリーバントスクイズを決めて先制した。
野村淳監督は、「バントに対する信頼感は高かったので、2ストライクになったことで、速球派の高橋君はストレートで押してくるだろうと思いましたから、迷わずスクイズ(のサイン)を出しました」という采配がズバリ当たった形になった。
なおも、二死二塁となったところで、西脇君の三塁ゴロは、県岐阜商の三塁手が捕ってタッチに行こうとしたところをかわされた。さらにカバーに入った選手にトスしたボールがそれてしまい、廣瀬君がそのまま本塁に還ってきた。結果的にはこれが決勝点ということになった。
このあたりは、この大会での岐阜総合学園の神がかり的な流れのよさというものもあるのではないかと思わせるシーンでもあった。1点リードだけだったら、西脇君にとってもプレッシャーは大きかったかもしれないが、思わぬ形での2点リードということで、気持ちもかなり楽になったのではないだろうか。
優勝旗を受ける鈴木啓也主将(岐阜総合学園)
5回に、失策も絡んで無死一三塁となって、7番加藤君の左犠飛で1点差とされたものの、その後は併殺で切り抜けると以降は、7、9回には無死で安打を許したものの、その後をしっかりと投げ切った。終わってみれば、県岐阜商打線を6安打1失点に抑えていた。
県岐阜商の高橋君も、8回は3者連続三振で意地を示し、9回の味方の反撃につなげる気迫を示した。しかし岐阜総合学園は、それに負けない意識でこらえていって、初優勝を導いた。
岐阜総合学園としては、
「初戦で大垣日大さんとやって、何とか勝たせていただいて、決勝では県岐商さんで、県岐阜商の高校野球を引っ張る両校に最初と最後で戦えて勝てて、こんないいことはないです。
この大会では、何かにとり憑かれたくらいでした。西脇はよく投げてくれたし、試合中でも私がタイムを取ろうとする前に、西脇と三津本で話していました。試合では、生徒たちはアドレナリンが存分に出ていたのではないでしょうか。だから、私としては、任せていっていいかなという気持ちでした」と言うように、選手と指揮官との信頼感も大きく育っていっていた。
野村監督は長良から異動して3年目。監督就任は昨秋からだが、岐阜総合学園には、歴史的な大きな成果をもたらすことになった。
(文=手束 仁)