普天間vs首里東
二桁奪三振も点数は70点。未だ発展途上の未完成の大型右腕
普天間・與那原
これ以上ない万全の投球だった。
「全体的に初の大きな公式戦(新人中央大会予選を除く)初戦ということで緊張していた」
と普天間知念 正仁監督が振り返ったが、それが一番大きいのが初回のマウンドに上がるエースだろう。
だが與那原 大剛(よなはら・ひろたか)はそれを微塵も感じさせない立ち上がりを見せる。
1回表を僅か7球で打たせて取ると、2回表の5番打者から3回にかけて5者連続から空振りを奪う三振ショーを演じたのだ。その3回は下位打線からということもあり「打たせるぞー!」と與那原がナインに声を掛けたのち全球、といっても言いほどストレート主体で攻めたにも関わらず、首里東打線はそのストレートに合わせることが出なかった。
すると3回裏、普天間は9番知花 泰幸(ちばな・やすゆき)がバントヒットを決めると1番に返った高良 雄士(たから・ゆうじ)も同じくバントヒットを決めてチャンスを得る。だが、ここで一気に押しきれないところが普天間打線の課題なのかも知れない。
好打順ではあったがレフトフライとショートフライに終わり、このまま無得点で終わるようなことがあれば首里東に流れが傾いても不思議では無かった。
が、ここでもチームを救ったのが前チームから4番を張る與那原だった。
「前打席で三振に倒れてしまったのでここは何がなんでも返そうと思った」という與那原はインコースのストレートに的を絞って立った(與那原)が、初球はカーブ。見送った姿を見て首里東バッテリーも「ストレートを待っているな」と感じたに違いない。続く2球目もカーブで入ったところ「初球の残像が残っていた」という與那原のバットがそれに反応。バットの先っぽだったというが、まだ1ストライクということもあり、且つ187cm83Kgの恵まれた身体から生まれるフルスイングが生きる。打球はセンターの頭上を超える先制の2点タイムリーとなったのだった。
3安打の普天間・高良
だが4回表、今度は與那原自身の“ピッチング”自体での課題が浮き彫りになる。
先頭打者にヒットを許すと「すぐ決められて焦った」(與那原)犠打で得点圏に走者を背負うと、3番長嶺 幹弥にもヒットを浴び一死一・三塁とされる。ここで「点を許してしまうといけないと」(與那原)腕が振れないまま投げた変化球が、ベース手前で落ちるワイルドピッチで簡単に点を許してしまった。
さらに二死後走者を二塁に背負って再びワイルドピッチを犯すとボールは相手ベンチ前まで転がってしまう。これをみた二塁走者が一気に生還し2対2の同点になったと観客は思ったが、ボールが拾い上げることの出来ない場所へ挟まっていたということで三塁へ戻されてしまい1点のみで終わってしまうなど、普天間にとっては不幸中の幸いとなった。
追い上げられた直後、内野安打と盗塁、犠打で三塁へ進めた普天間は山内 昌磨(やまうち・しょうま)が初級スクイズを決めて1点を加えると、なお二死三塁として高良がセンター前へ弾き返して4対1と突き放した。これで自分のピッチングを取り戻した與那原は5~7回まで三者凡退(4番から始まった7回、この日二度目となる三者三振)で締めると、8回裏には一死二塁から浜畑 維(はまばた・ゆい)にタイムリーが飛び出してダメ押しとなる5点目を刻んだ。
「新チーム発足から守りの基礎を繰り返した」という知念監督はまた、「単純な繰り返しの作業でも誰ひとり腐らずについてきてくれた」と、この日の守りがノーエラーだったナインを褒めたたえた。
また、10奪三振完投にも関わらず「フォームも手探りだし今日は70点の出来」と與那原自身で言った未だ発展途上で未完の大器の、高校野球最終章も期待しつつ見守っていきたいと思う。
(文=當山雅通)