日大三vs立教池袋
日大三の先発・田村
この秋、日大三の背番号1を背負うエース・田村孝之介が投手に転向したのは、今年の8月。中学時代も含め、これまでずっと野手としてプレーしてきた。
投手に転向して僅か1か月ながら、キャプテンでもある田村はこの日、先発投手、そして3番打者としての役割をきっちりと果たす活躍をみせた。
その田村と投げ合ったのが、立教池袋のエース・藤原 優だ。最速135キロのストレートに5種類の変化球を武器にする。藤原の前評判は、もちろん日大三の耳にも届いていた。それでも、“評判以上の投手”というのが、日大三サイドの印象だった。
試合は、緊迫した投手戦となる。
6回終わって、両者ともに無得点。ここまで日大三の先発・田村は、立教池袋打線に被安打ゼロ。出したランナーは初回の四球のみと、好投を続ける。
また、立教池袋の藤原も、6回まで被安打1。2回と6回には、四死球などから、得点圏にランナーを置くも、粘り強いピッチングで、日大三に得点を許さない。
両投手の踏ん張りで、ゲームは0対0のまま、終盤に突入する。
試合が動いたのは、7回だった。
ここまで好投を続けてきた田村が自らのバットでチャンスメイク。
田村は、この場面をこう振り返る。
「先頭で打席に立ったので、流れの悪さを取っ払ってやろうという気持ちでした。とにかく来た球を思いっきり振ることだけを考えて一球に集中していました。これまでの練習試合は、投手と野手のモードが切り替えられず、バッティングも良くなかったんですが、この打席では、完全に野手に戻れました」
と、田村は初球から狙い打ち。藤原の甘く入った一球をライトへと運ぶ。これが二塁打となって、先制の好機を作った日大三。
続く4番板倉は、四球で出塁。ランナー2人を置いたところで、5番佐々木がきっちり犠打を決めて、一死二、三塁とすると、打席には、1打席目で二塁打を放っている6番小藤。小藤はここで四球を選んで、一死満塁と大きなチャンスを迎えた。
藤原は、7番川﨑に落ち着いたピッチングで、2ストライクも追い込むも、4球目がパスボールとなり、三走の田村が生還。ついに日大三が1点を先制。
川﨑の打球は、セカンドのフィルダースチョイスとなり、再び、一死満塁の好機を作ると、8番小倉がレフトへの犠飛を放って2対0とリードを広げる。
さらには、6回裏から途中出場している9番五十嵐が、強く叩きつけたボールがショートの頭上を大きく越えて、センター前へとボールが転がり、これが3点目を挙げる適時打に。
立教池袋の先発・藤原
3点を追う展開となった立教池袋だったが、8回に8番漆原の中前打、9回には、3番高橋孝が相手エラーで出塁するも、日大三・田村の前にホームが遠く、無得点に終わる。
試合は、僅かなチャンスをものにした日大三が3対0で立教池袋を下し、代表決定戦へと駒を進めた。
惜しくも、秋季大会ブロック予選初戦で敗れた立教池袋。
試合後、古賀監督は、
「相手がどこであっても、この結果がうちの今の力です。藤原は、良く投げてくれました。2回と6回のピンチをしっかり凌いでくれたのが大きかったですが、7回だけが悔やまれました。これから春に向けて、またチームを作っていきます」と語った。
立教池袋のエース藤原優は、この日は被安打3、自責点0と日大三打線相手に好投。
「自分が我慢して投げていれば点を取ってくれると思っていましたが、7回はカーブが高めに入ったところを先頭に打たれてしまった。スタミナが切れてしまいました。そこだけが失投です」そう悔しさをにじませた。
一方で、日大三のエースでキャプテン・3番を任される田村は、
「今日はとにかく一球を大事にしようと思って投げてきました。まだピッチャーになったばかりなので、(エースの)プレッシャーはなく、楽しんで投げています。この後の試合でも自分の仕事をしっかりとこなしていきたいです」と話した。
秋季大会初戦の硬さもみえて、最後まで苦しんだ日大三だったが、次戦では“日大三らしさ”を取り戻せるか。21日に行われる代表決定戦では、都立昭和と対戦する。
(文=安田未由)