聖光学院vs神戸国際大附
聖光学院 打線本領発揮ならずも、2投手の継投リレーで辛勝!
聖光学院対神戸国際大附。
この試合の見所は、チーム打率.461を誇る聖光学院の打線と、最速145キロの速球とキレのある縦横のスライダーを武器に、48回を投げて67奪三振を奪った神戸国際大附のエース・黒田 達也(3年)の投球である。
聖光学院は、福島大会決勝戦でプロ注目の大和田 啓亮(日大東北)を打ち崩して甲子園に乗り込んできた。個人の打率を見ると、1番八百板 卓丸(3年)は打率.542、3番柳沼 健太郎(3年)は打率.667、4番安田 光希(3年)は打率.545、5番伊三木 駿(3年)は打率.500と5割打者が、4人もいる。一気につながれば、黒田から大量点を取ってもおかしくない。
対する神戸国際大附はエース・黒田が注目されるが、打線も力があり、チーム打率.332。聖光学院に比べると低いかもしれないが、激戦の兵庫大会で残した打率である。最多打点が8番西 俊洋(3年)の8打点。下位に勝負強い打者が存在するのだ。双方の実力が発揮されれば、激しいスコアになると予想された。
しかし、試合内容は1点を争う接戦となった。
黒田の立ち上がりはやや不安定で、球速は140キロ前後を計測しているものの、ベルトゾーンに集まり安打をあびる。得意のスライダーも決まらず、1回裏、二死満塁のピンチを招く。
だが黒田はピンチからスライダーのキレが冴える。
6番飯島 翼(3年)には2ボール2ストライクから外角ギリギリにスライダーで空振り三振に打ち取り、ピンチを切り抜ける。
一方、聖光学院は再三チャンスを作るものの、3回裏に飯島のスクイズで1点を先制したのみで、残塁は8。歯がゆい攻撃が続いていた。
走者を出しても、チャンスがつかめないチームは先発投手が根負けして、打ち込まれるというパターンがある。だが聖光学院の先発・今泉 慶太(2年)は粘り強い投球を見せていた。
右スリークォーターから投げ込む直球は常時135キロ前後と決して速くないが、腕が遅れて出てくる変則派の投手で、神戸国際大附打線はタイミングを取ることに苦労していた。
4回表に、飯迫 恵士(3年)に適時三塁打を打たれ同点に追いつかれたが、後続を締めてこのピンチを最少失点で切り抜ける。
一方で黒田も3回以降は立ち直り、4回は初めての三者凡退に抑えるなど、140キロ台の速球とスライダーがコントロール良く決まり、テンポの良さも出てきた。
兵庫大会ではウイニングショットのスライダーで、相手打線を封じてきたが、聖光学院は見極めと、しっかりとミートが出来る打線である。そのためランナーを出しながらも、要所を抑える粘り強さが必要だ。そういう意味で黒田はしっかりと粘りの投球ができていた。
両投手の好投で、こう着状態となった試合展開。
流れを変えようと聖光学院は7回表、好投の今泉に代えて、2番手に船迫 大雅(ふなばさま・3年)をマウンドへあげる。今泉は6回ぐらいからストレートのコントロールの精度が落ちてきたため、タイミングの良い継投といえるだろう。
船迫は常時120キロ後半だが、曲がりの大きいスライダー、シンカーを織り交ぜる右サイドハンドで、神戸国際大附打線を打たせて取り、0点に抑える。
そして試合が動いたのは7回裏。二死一、二塁から途中出場の石垣 光浩(3年)が打席に立った。石垣は今春の東北大会に、ショートで出場していた選手だ。
試合も終盤。両投手のこの日のできからいっても、次の1点が勝敗を大きく左右する1点になる。勝利の女神はどちらに微笑むのか。
石垣が振り抜いた打球は、右横線へ落ちる二塁打となり、聖光学院が待望の追加点をあげた。結果としてこの1点が決勝点となった。
その後、8回9回と船迫が1点を守りきり、聖光学院が苦しみながらも初戦を突破した。
やはりどのチームでも初戦の戦い方は難しく、高い能力を持つチームでも思うような力を発揮できずに敗れ去るケースは多い。苦しみながらも勝ち抜いた今日の一戦は、今後の戦いにつながるだろう。
この勝利で5年連続の初戦突破を決めた聖光学院。今年のチームは園部 聡(現オリックス)のような長距離打者はいないが、各選手の能力は高い。福島大会で魅せた、上位下位切れ目のない打線が本領発揮するのはこれからだ。
(文:河嶋 宗一)