試合レポート

三重vs広陵

2014.08.14

三重が執念の同点劇!押し出しで5年ぶりの初戦突破!!

 総合力の広島広陵か、打撃の三重か。

 4年ぶりの甲子園出場を決めた広島広陵。今年の広島広陵は投打ともにバランス良く鍛えられ、小技を絡めて得点をもぎ取る巧さもあり、この春、中国大会の王者となった。

 三重は全国クラスの打撃のチーム。昨夏の甲子園で1回戦敗退したものの、安楽智大済美)から7得点を奪った。その時の中心選手であった長野 勇斗(3年)、内田 蓮(3年)、宇都宮 東真(3年)、今井 重太朗(3年)、世古 錬(3年)が中心となり、ともに東海大会を制し、今年の東海地区最強チームという自負を持って今大会に臨んでいる。

 お互い目指すは夏1勝。
広島広陵は2010年に選抜4強を経験しているが、夏の1勝は2008年から遠ざかっている。
また三重昨夏今春と甲子園を経験して未勝利。夏の勝利は2009年が最後となっている。何としてでも勝ちたい思いで、この試合に臨んでいた。

 試合は2回表、広島広陵が無死から喜多 真吾(2年)が死球で出塁。広兼 吾郷(3年)が適時二塁打を放ち、1点を先制。さらに7838(3年)の犠飛でさらに1点を追加し、2対0と先行する。

 4回裏、三重も二死一、二塁から世古 錬(3年)の中前適時打、中林 健吾(3年)の中前適時打で、2対2の同点に追いつく。

 三重の先発・今井。選抜に比べるとスピードアップしており、コンスタントに130キロ中盤を計測し、力のあるストレートを内角に決め、広島広陵打線を封じこんでいた。
選抜では120キロ台後半の速球、スライダー、チェンジアップで交わす技巧派左腕だが、この3か月で大きな成長を見せている。

 一方で、広島広陵の吉川も繊細な投球を見せる。
167cmと投手としては決して大きくない。だが下半身主導の投球フォーム。始動からフィニッシュまで連動した完成度の高いフォームで、130キロ台後半の速球が低めにしっかり集める好投手。さらにスライダーに加え、緩く大きく落ちるパームもはまり、三重打線を抑えることが出来ていた。


 7回表、広島広陵の先発・吉川が勝ち越し本塁打を放つと、さらに喜多の押し出し死球で4対2とし、大きな追加点を挙げた。
だが三重の今井も気迫ある投球を続け、終盤に最速136キロを計測。9回4失点の力投を見せた。

 そして9回裏、三重は一死から世古、中林の連続安打で、一死一、二塁のチャンスを作る。
山本 庸真(3年)の右飛で、二塁走者がスタートを切り、二死一、三塁。ここまで4打数3安打の長野に打順が回ったが、四球で二死満塁。続く2番佐田泰輝(3年)が中前適時打!二者生還し、土壇場で追いつき試合は延長戦へ。

 三重は2番手の右サイドの森 竜之助(3年)が素晴らしかった。
130キロ前半の直球、スライダーをコンビネーションにするが、投球フォーム、投球テンポを変えたりして、変化を付けている。そして10回、11回を抑え、その裏。

 三重は7番世古がフェンス直撃の二塁打。姜 輝洙(3年)の犠打に吉川は送球したが、これが逸れて、無死一、三塁とサヨナラのチャンス。9番森は投ゴロで一死一、三塁。1番長野は満塁策で、四球。一死満塁。先ほど同点打を放っている佐田は二ゴロ。これは本塁封殺でアウト。そして3番宇都宮が打席に立った。結果は押し出し四球。

 サヨナラ押し出しで、三重が5年ぶりの初戦突破を決めた。

 何としてでも勝ちたい三重の執念が感じられたゲームであった。
追い込まれた場面からの同点劇、サヨナラにした経験は大きな自信になったはずだ。そして広島広陵も最後は先発・吉川が押し出しになってしまったとはいえ、それまでは終盤になっても速球を低めに集める制球力が冴え渡っていた。追いついた三重の底力が見事としかいいようがない。

 次は藤代戦で8点差を逆転勝利した大垣日大と対戦。お互い接戦を制し、勝利しているだけに、死闘が予想されそうだ。

(文:河嶋 宗一)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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