大阪桐蔭vsPL学園
大阪桐蔭が史上2校目の夏3連覇!
両校が夏の決勝戦で戦ったのは2004年の10年ぶり。その時の決勝戦は4対4の再試合となり、再試合でPL学園が打撃戦を制し、甲子園出場を決めた。当時のメンバーでは、PL学園は前田 健太、大阪桐蔭は平田 良介、辻内崇伸など後にプロ入りしている。両校にとってはとても因縁深いカードである。
注目となったのは両校の先発。
大阪桐蔭はエースの福島 孝輔(3年)ではなく、左腕の田中 誠也(2年)。
対するPL学園は、こちらもエースの澁谷 勇将(3年)ではなく、左腕の山本 尊日出(2年)だった。左腕投手を起用した理由としては、昨日の履正社戦で、大阪桐蔭は2番手左腕の寺島 成輝(1年)から8イニングで1点しか奪うことができなかったからだ。
左腕ならば、大阪桐蔭を最少失点で凌ぐことができるのではないか。そういう期待もあって、送り込んだが、さすが大阪桐蔭。履正社戦同様、集中打で、山本を打ち崩す。
2回表、大阪桐蔭は先頭の6番青柳 昂樹(2年)が中前安打で出塁。犠打で送り、一死二塁となって8番福田 光輝(2年)が左中間を破る二塁打で1点を先制。二死二塁となって1番5714(3年)が左フェンス直撃の二塁打で、1点を追加し、2対0。
続く2番峯本匠(3年)は敵失で二死一、三塁となって、3番香月 良也(3年)の左前適時打。なおも二死一、二塁で4番正随 優弥(3年)の左前適時打で4点目を挙げる。
とどめは5番森 晋之介(3年)の右前適時打で、あっという間に5点を先制した。
大阪桐蔭の猛攻はなおも続き、6回表には4番正随の2点本塁打、7回には敵失、峯本の適時打で9対0とさらに点差を広げる。
投げては田中 誠也(2年)が素晴らしい投球を見せた。
春までの田中は関大北陽戦(試合レポート)で5回6失点と不安定なところがあったのだが、春と比べると成長した姿を見せてくれた。
左スリークォーターから投げ込む直球は常時130キロ前後(最速134キロ)と決して速くはないのだが、球速表示以上に勢いを感じさせるストレートで、さらに鋭く曲がるスライダー、カーブを織り交ぜ、PL学園打線を封じていた。
田中がここまで好投出来ているのは、リリースポイントが春に比べて安定したことだろう。
田中はしなやかな肘を生かし、鋭く腕を振るフォームだが、春はリリースが安定せず、高めへ抜けることが多かった。この夏はフォームの動きが安定し、コントロールも落ち着いてきた。
田中は8回まで無失点に抑え、完封が見えてきた9回裏。
PL学園としては9点ビハインドだが、何かを起こしたいところだ。
PL学園は難波 龍人(3年)が四球で出塁、6番笹岡滉生(3年)が敵失で、一死一、二塁とすると、7番刀谷 司(3年)が死球で一死満塁。PL学園は8番澁谷 勇将(3年)に代えて、背番号14の宇佐美 秀真(3年)を送る。
宇佐美はナインに指示を行い、またサインを出した監督代行である。
宇佐美は直球を捉え、二ゴロ。大阪桐蔭の二塁・峯本は一塁へ投げるだけ。三塁走者が生還し、1点を返したPL学園。
さらに畳み掛けたいところだったが、9番改田晴矢(3年)が振り抜いた打球は中堅・正随のグラブに収まった。
9対1。
大阪桐蔭が桑田真澄、清原和博のKKコンビが在籍していた1983~85年のPL学園以来、史上2校目の3連覇を達成した。
大阪はすべてノーシードからのスタートであり、大阪桐蔭も8試合こなした。過酷さは全国トップクラスで、その環境を踏まえると、夏3連覇がどれだけ偉業であるかが理解できるだろう。
昨秋の府大会で、履正社にコールド負けを喫してから、徹底的に鍛えこんできた今年のチーム。シートノックでは野手の全選手がスピード感のある動きを見せており、「このチームは違う」と感じさせる。
個人を見れば、スタメン全員がそれぞれの魅力を持ったチームである。
投手陣では130キロ台ながら、コーナーワークに長けた右サイドの福島。
キレのある速球とスライダーを武器に小気味良い投球を見せる、左の田中。
捕手は2.00秒台のスローイングを披露し、打撃も下位に座りながらパンチ力ある打撃を見せる横井。
一塁は長打力と俊足を兼ね備えた正随。そして長打力ならトップクラスの大森 聖也(3年)。
二塁はベースランニングの速さに加え、長打力を秘める峯本。風格のある構えから右、左へ鋭い打球を飛ばす香月。
軽快なフットワーク、素早い動きを兼ね備えた守備と、広角に打ち分ける打撃を見せる2年ショートの福田。
外野は確実性の高い打撃と堅実な守備でチームを引っ張る中村。
センターは強肩巧打の森。
ライトはこの夏からブレーク中の強打の2年生外野手・青柳
と粒ぞろいの選手たちである。
一昨年は藤浪晋太郎、昨年は森友哉といったスター選手がいたが、今年はそういう選手はいなくても、総合力は先輩たちに負けていないチームである。
今年の甲子園でも大阪桐蔭らしい攻守ともに躍動した姿をファンに披露することが出来るか注目である。
PL学園の選手たちは他のチームに比べて一定以上の技術を持った選手たちとはいえ、チーム作り、試合の進め方、戦術まで選手が考えながら取り組むのは中々難しい。
それでも与えられた環境で、秋近畿大会出場、春府大会3位、夏は大阪大会準優勝と立派な成績を上げることができたのは、賞賛に値するものだろう。
PL学園にとって、現在の立ち位置からさらに上へ行くには、今年の秋はとても重要な大会になりそうだ。
(文=河嶋宗一)
【野球部訪問:第35回 大阪桐蔭高等学校(大阪)】