鹿屋vs鹿児島玉龍
2試合連続、劇的なサヨナラ勝ち・鹿屋
ミラクルを起こし、俗な言葉でいえば「何か持っている」チームが大会中1つ2つ出てくるものだが、この夏の鹿屋はそれに該当する。3回戦の鹿児島商戦に続き、シード鹿児島玉龍に劇的な逆転サヨナラ勝ちを収めた。
5回までは、鹿屋・郷原考(3年)、鹿児島玉龍・内田悠亮(2年)の両先発の好投などで両者無得点の緊迫した投手戦だった。
様相が一変したのは、グラウンド整備が終わった6回からだ。
6回表、鹿児島玉龍はヒットと連続四死球で満塁とし、5番・土田悠斗(3年)の犠牲フライで均衡を破ると、続く6番・久保塁(2年)が走者一掃のライトオーバー三塁打を放った。8番・内田にもタイムリーが出て、この回で一挙4点を先取し、主導権を握ったかに思われた。
しかし、ここから鹿屋の「大逆襲」が始まる。6回裏に1点を返し、7回裏は6番・郷原の2ラン、1番・北之園雄大(3年)のタイムリーで同点に追いついた。
勢いづく鹿屋は8回、5番・永田祐樹(3年)のセンターオーバー二塁打と押し出しで2点を勝ち越し、勝負あったかに思われた。
9回、鹿児島玉龍は4番・遠藤伊知郎(2年)がライトスタンドに特大2ランを放ち、土壇場で再び試合を振り出しに戻した。強力打線を引っ提げ、接戦を勝ち上がって14年ぶりに春準優勝を勝ち取った古豪の底力を見た。
その裏の鹿屋は一死満塁とチャンスを作り、6番・郷原が目の覚めるようなセンター返しで2時間47分の死闘にケリをつけた。
5回途中降板してから再びマウンドに上がり、ホームランで同点とされた郷原だったが「僕のところにサヨナラのチャンスが回ってきますよ」と「予言」したという。
終わってみれば、自らマウンドで打たれ、自らのバットで2度もそれを取り返すという、見事な「千両役者」ぶりだった。
(文=政 純一郎)